7/26/2018

パブリシティーについて


Les publicités à Paris

パリで広告というと、メトロの駅の壁を覆う大きなポスターと、緑の屋根付きの古風な丸い広告塔。どちらも昔からある、絵葉書にも登場するほどのパリの顔。それを別にすれば、パリは広告やネオンの比較的少ない街のはずだったのに、最近はあちこちに広告が見られるようになりました。
特に目立つのは、工事中の建物を覆うスクリーンを利用した巨大なポスター。上の写真は学士院、下はルーブルと、どちらも改修工事のスクリーンを使った広告です。パリのモニュメントはセーヌ岸や市内の主要な広場や大通りに面していたりと、広告には絶好の場所。しかも建物が古いのでいつもどこかで修復工事があって、巨額の広告料はきっと修復に欠かせない資金源なのでしょうが、醜悪! こんなことを許可するパリ市長の美意識の欠如には驚かせられます。

こんな醜い物を被せられたルーブルがかわいそう・・

7/18/2018

サラ・ラヴォワンヌのカフェ・プレヴェール


Café des frères Prévert de Sarha Lavoine

プレヴェールって、あの詩人のジャックプレヴェールです。正式な名前はカフェ・デ・フレール・プレヴェール(″プレヴェール兄弟"カフェ) 。ジャックの弟の映画監督ピエールがアートディレクターを務め、ジャックが出し物を創作していたCabaretキャバレー、¥La Fontaine des quatre-saisonsラ・フォンテーヌ・デ・キャトルセゾンのあった場所にオープンしました。フランス語の(カバレと発音する)キャバレーは、夜+お酒とくればもちろん娼婦もいたでしょうが、いかがわしい場所ではなく、劇、音楽、ダンス、パントマイムなどの芸を披露する小舞台のあるナイトクラブの事で、プレヴェール兄弟の所には、後に有名になったアーティストの卵達が出演していたそうです。例えば無名の頃のモーリス・ベジャールとか・・
現在その建物は彫刻家マイヨールの美術館になっているので、当時芸人達の控室と料理場のあった地下をカフェに改装したもの。

内装は今売れっ子のサラ・ラヴォワンヌが担当しました。昔のままの石の円天井が生かされていますが、レトロさは全くないコンテンポラリー・シックなインテリア。カフェ・プレヴェールとは名前ばかりなのがちょっと残念ですが、いまさら懐古的なカフェを作っても所詮ニセモノですものね。
サラ特有の微妙なトーンのグリーンとペールブルーに、ブラック&ホワイトの千鳥格子がアクセントの、インテリアのお手本のようなカラーコーディネーションが素敵。

美術館の入場料を払わなくても、カフェだけ利用することができます。
Café des frères Prévert, Musée Maillol 61 Rue de Grenelle 7e

7/11/2018

マリカ・ファーブル/ パリ・プラージュのポスター


Malika Favre/ l'affiche Paris Plage 2018

パリ・プラージュが始まりました。
毎年パリ・プラージュに欠かせなくなったポスターの、今年のイラスとレーターはマリカ・ファーブル。


マリカ・ファーブルのイラストは、グラフィカルでシャープな線や円を大胆なアクセントにした、無駄のないシンプルなラインと、ハッとするようなカラフルな色使いがステキです。
by Malika Favre
by Malika Favre

7/03/2018

石上純也さんの自由な建築


Junya Ishigami, Freeing Architecture

一昨年ニューヨークMoMAの "A Japanese Constellation"、去年はポンピドー・メッスのJapan-nessジャパン-ネス展とパリ、パビヨン・ド・ラルセナルのパリの日本建築展など、日本の建築は世界中の注目を浴びてひっぱりだこ。今春はカルティエ財団で開催中の石上純也さんのFreeing Architecture(自由な建築)展が話題です。
恐らく大多数のパリジャンと同じく、素人の私には石上純也の名を聞いたのはこれが初めて。見終わった感想の第一は、メガロマニアックなものと、日本人らしい微に入り細を穿つマイクロスコピックなものとが混じりあったショッキングなアンバランス。それが岩や木、空気、雨などの自然と呼応し、石上さんの "子供の絵本" 風のファンタジーが加わって、フランス人が考えもしないような "作品" が展開されます。建築やデザイン関係の人かなという若者達に、一般のオジサン、オバサンからお年寄りまで、みんなウームと唸りながら食い入るように鑑賞していました。
これは一番最初に目に入り、心底びっくりさせられる、中国の谷間に建設予定のチャペル。詳しいデータは忘れましたが、入り口は人が2人すれ違える幅、高さ45m、周りを囲む壁は下から上に約2mから20cmくらいの厚さという、刀の鞘のようなフォルム!
深い谷間に天を切るように建てられるチャペル。右の3つの写真は、薄暗い入り口、ずっと進んで行くと前方に光が見え、奧のチャペルは眩しいほどの光に満ちています。なんという演出! 無信心者もおのずと敬虔な気持ちになりそうですが、閉所恐怖症でなくてもちょっと怖いかも。
このチャペルを水平と垂直に切った図
上はシドニーに予定されるCloud Arch雲のアーチ。彼の夢のような想像の世界で生み出されたものが、賛否両論で色々騒がれた末実体化します。下はその模型。
光はもとより、雨も入ってくる自然と一体になった建物。天井の穴から入る雨を、屋根のある場所で仕事をしながら眺める・・誌的で美しくユートピア的ですが、降った雨はどのように排水し、乾いた空間を残すのか? 雨は垂直に降るばかりでなく、風によって四方から降りこむ場合は? 風は? 暖房は?
彼の手にかかると、動物や恐竜まで "建築" になってしまいます。
これは中国に予定される幼稚園の模型。完成すれば世界で最もファンタジー溢れる幼稚園になることでしょう。しかしビジターの目が釘付けになるのはこの模型自体。色鉛筆の手描きで花や木を描き、グリーンやグレイの床の部分も、色々なトーンにわざわざ手で色を書き込んだ紙を手で千切り、一つ一つコラージュしています。顕微鏡的な細かい仕事! 模型は本当に美しく、写真を撮ればそのまま子供の絵本に使えます。しかし建築の模型は芸術作品ではないし(それとも最近はアートとみなされるの?)ここまでする必要があるのか? そのあたりのボーダーレスが魅力、でもちょっと気になる。この外にも随所にマニアックな配慮があり、アシスタントさん達はさぞかし大変だったのではと思ってしまいました。
石上さんのイメージする "建物" は、建築というよりも巨大な立体アートかインスタレーション、時にはジャイアントサイズのおもちゃ、と呼んでもいいくらい。彼の2007年の "四角い風船" というインスタレーションの写真をネットで見ました。総重量1トンもあるアルミの箱をヘリウムガスで宙に浮かせたもので、まさに巨大でファンタジックなおもちゃ。
上は石上さん直筆の作品のコンセプト。子供の詩のような文体で、字も不ぞろいの小学生のよう。見るからに拘りの人ですね。実際に出来上がった建物はまだ少ないようで、いつか本物を見るのがとても楽しみです。
石上さんの椅子。面白くて子供が喜びそうなフォルム。

Junya Ishigami, Freeing Architecture  9月9日まで
Fondiation Cartir pour l'art contempolain     261 Bd.Raspail 14e  


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