9/21/2021

ルディ・リッチオッティのミュセムMucem地中海文明博物館/ マルセイユ

 


Musem de Rudey Ricciotti à Marseille

音楽祭を楽しんだエックスアンプロヴァンスの後は、久しぶりのマルセイユに足を延ばしました。
マルセイユと言ったら港。その港の入り口を守るサン・ジャン要塞に続く元J4埠頭に、2013年に建てられたルディ・リッチオッティのMucem欧州地中海文明博物館に行ってきました。丘の上のノートルダム・ド・ラ・ガルド教会、ヴィクトル・ユーゴのモンテクリストが捕らえられていた(事になっている)イフ城等と並んで、今ではマルセイユのランドマークになっている、名物博物館です。

要塞の端から出ているブリッジを渡りました。
サン・ジャン要塞から見たMucem。左のブリッジを渡ると、屋上のテラスに出ます。

遠くからは重そうな、黒っぽい直方体の建物ですが、近ずくとこの通り。波間に漂う海藻か、南の国の珍しい植物か、このように絡まり合ったレースのようなパターンに驚かせられます。全部コンクリート製だそうです。
夏休み中でしかも日曜日だったので、博物館の入り口は長蛇の列。中に入るのは断念し、外側からじっくり建物を見て歩きました。館内ははちきれるほどの人なのに、外側は人もまばらで、このコンクリート・レースの美しさを思う存分鑑賞できました。

      これが屋上テラス。
一杯に入る光が素敵な影を作ります。思わず息をのむ美しさ!
コンクリートのレースを通して見える地中海の太陽と、輝く海、青い空が、デザインにちゃんと計算されて、組み込まれているのですね。

Mucem, Musée des civilisations de l’Europe et de la Méditerranée
7 promenade Robert Laffont (esplanade du J4)  Marseille

9/08/2021

ルディ・リッチオッティのパヴィヨン・ノワール/ エックスアンプロヴァンス


Le Pavillon Noir de Rudy Ricciotti/ Aix-en-Provence

エックスアンプロヴァンスの近代建築の2つめは、ルディ・リッチオッティのパヴィヨン・ノワール。国立演出センターと訳したらよいのでしょうか、劇場も組み込まれたコンテンポラリーダンス専門のセンターで、現在プレルジョカージPreljocajバレー団のホームグランド。
  

太いコンクリートの柱が網目のように連なった外枠と、ガラスの組み合わせ。お世辞にも優雅とは言えない無骨なコンクリートと、透明なガラスのスーパーポジション。


真正面から写真を撮るとあまりサマにならないけれど、こうして斜めに撮るとなかなか。よくよく見ているうちに、なんとなくいいなあと思うようになってきました。ガラスに青空や緑の木の葉が写り、それにコンクリートの直線が、鋭角な影を落とします。


そしてこの "いいなあ" という気持ちは、帰ってから見たサイトの写真(下)で確実に・・外から見ると重そうなコンクリートも、こうして内側から見ると、素晴らしい舞台装置のよう。ここで踊るダンサー達には、太陽の光や雲など、一日中変わり続ける、無限に広がる空が背景なのです。コンクリートの直線と影が、現われては消え、移動する、100%天然の演出効果。 
         Photo by Maison co  
逆に夜明りがつくと、中がよく見えるようになります。階段など内側の構造がシャープな影となり、練習するダンサーたちの動きが、光の加減で幻想的に見えて美しいそうです。
壁はあっても内と外が遮断されず、呼応しているのですね。


右が隈氏のコンセルヴァトワール、見えないけれどその延長線にパヴィヨン・ノワール、左がヴィットリオ・グレゴッティのグラン・テアトルと、近代建築が3つ並んだ地区の全様です。真夏のカンカン照りの日だったので、日影が全くないのっぺりしたアスファルトの大広場には閉口しました。旧市街は並木が美しく、街角には沢山の噴水がある事で有名なのに・・・美しくもない鉢植えの木でごまかさないで、ぜひプラタナスの並木を植えてもらいたいものです。

                   
                

エックスアンプロヴァンスは、大小様々の130もの噴水があるそうです。
写真下は、スイスの収集家ジャン・プランクがグラネ美術館に寄贈した、印象派、ポスト印象派の画家たちの作品を集めた、グラネ20世紀美術館とその前の小広場。17世紀建造の元チャペルを改造したもので、エックスの旧市街に溶け込んだ美しい美術館です。

                

このように、エックスアンプロヴァンスはフランスでも有数の美しい町の一つですが、大学があるので若者が多く、またこの地方の商業や文化活動の中心地としても、過去にのみ生きる古都ではありません。新市街が広がり、大型ビルが建つのも現代では仕方のない事、というより、都市が生きて活動するには、必要不可欠かもしれません。問題は新旧の融和をどうコントロールするか・・・コントロールできるか ?

Le Pavillon Noir,  530 Av. Wolfgang Amadeus Mozart, 13627 Aix-en-Provence

9/01/2021

隈健吾氏のコンセルヴァトワールとその周辺/ エックスアンプロヴァンス


le Conservatoire Darius Milhaud à Aix-en-Provence

ちょっと間が空いてしまいましたが、エックスアンプロヴァンスの続きです。
7月のブログで書いたように、音楽祭のオペラは夜の9時半から始まったので、日中は美しいエックスの町をせっせと歩き回ったのですが、ふと近代建築はないのかなと探してみたところ・・ありました、古風なエックスとは全く違う、近代的な建築の集まった地区があるのです。


手前がルディー・リッチオッティのLe Pavillon Noir(これは次に書きます)、その後ろが日本の建築家隈健吾氏のコンセルヴァトワール、そして写真には見えませんが、右側にヴィットリオ・グレゴッティのコンサートホールGrand Théâtre de Provenceと、エックスの文化施設が集まっている地区がそれ。どれも旧市街の建物のサイズでは足りなくなり、広いスペースを求めて、また旧市街のハーモニーを損なわないようにとの配慮もあったのではないでしょうか、中心からちょっと外れた一角です。


これが隈健吾氏による国立音楽学院コンセルヴァトワール "ダリウス・ミルホー"。
薄いアルミ板に覆われて、建物の4面がそれぞれ異なるデザイン。日本の折り紙からインスピレーションを受けたそうですが、線と影が印象的です。

このアルミ板と折り紙の凹凸の建築的なメリット等々は専門家に任せて、ザインだけに限った感想ですが、プロヴァンスの明るい空の下では、ちょっとばかり硬すぎるのでは?と思いました。これがオランダや北欧の都市だったらドンピシャリ、パリの郊外だって問題ないのに・・エックスはおしゃれなブティックが増えヴァカンス客も一杯だけれど、今でもこじんまりとした町なのです。そして何といってもプロヴァンス地方は、明るい太陽とオリーブ、プラタナスの木陰、色鮮やかな野菜の並ぶ朝市、時にはミストラルが吹き荒れる、悪い意味ではない "田舎" だから・・


ちょっと小高い場所なので、L字型のコンセルヴァトワールの後方は、このような階段があり下に続いています。階段を下りると、昔の市場か工場か、それとも駅でもあったのかというような、写真下の鉄組の建築が荒れたまま放置されていました。

もったいないなぁ、修理して何かに使えば素敵なのにとしばし立ち止まっていたら、後ろの方から賑やかな太鼓の音が聞こえてきました。かなり大きなこの建物の裏に回ってみたら・・・

なんだかとても楽しそうな場所に出ました。そういえば以前に、何かの雑誌か新聞で見たことのあったかもしれない・・巨大な本がブックエンドに立っているような建物です。賑やかなブラスバンドに大人や子供が一緒になって本の間に入ってゆくので、私もついて行ってみると、そこは図書館の入り口なのです。

この図書館の広い中庭を使った、幼児部門のお祭りですね。図書館の方によるとボランティアの方達だそうです。皆が踊り出すような陽気な打楽器中心のバンドの後は、スピーカーからうるさい音楽が流れる事もなく、地面に書いた双六のようなゲームや輪投げなど、父兄の手作りらしい、素朴でのんびりとした遊びを楽しんでいました。


昔の工場跡を改造したもので、先ほどのコンセルヴァトワール下のまだ修理されていない部分を含めると、相当の広さです。多分複数の工場が集まっていたのでしょう。工場の名残の機械が置いてありました。ガランとしているのは夏休み中で利用者が少ない為。フランスは7-8月、海辺や観光地以外はがら空きになるのです。


工場の建物をうまく利用して、素晴らしい図書館ですね。空気が乾燥してカラッとしていることもあり、外は暑くても、内部はクーラーなしで快適です。

最期に、図書館の入り口に立っているあの面白い巨大な本は何かというと、写真に見えるのはサン・テグジュペリの星の王子様、モリエールの病は気から、こちらからは見えませんがその後ろにカミュの異邦人、でした。なーるほど ! のチョイス

Conservatoire Darius Milhaud  
380 Av. Wolfgang Amadeus Mozart, 13100 Aix-en-Provence

Bibliothèque les Méjanes/Cité du Livre
8 Rue des allumettes, 13100 Aix-en Provence