カルティエ財団の現代美術館(FCAC)が30周年を迎え、10日から来年の3月まで約1年間、数々のイベントが企画されています。FCACは宝飾店カルティエが、1984年にパリの郊外ジュイイー・アン・ジョーザに広大な庭園付きの現代美術館を開いたのが始まりで、10年後の1994年に現在のパリ14区に移転し、絵画彫刻はもとより映画等のビジュアル、ファッションまで、若いアーティストの発掘と育成、現役の世界的に有名なアーティストの隠れた一面を紹介するなど、“生きているアート”を紹介してきました。
9月21日までは“Mémoires Vives”(強烈な、又は活き活きした記憶)と題して、財団の重要なコレクションの内、過去の展覧会のハイライト的な作品を、一定期間毎にリニューアルしながら展示するそうです。今までの数々の展覧会では、アーティストの既製の作品をただ展示するだけでなく、展覧会のために特別に作られたオリジナルも展示され、そのためアーティストとFCACが協力し合ったり、アーティスト間の横の交流もあったあことが、展示の写真などから窺えます。
私の見たオープニングの日の展示で印象的だったのは、北野武の“大日本帝国の秘密兵器の設計図を見つけた”と題した作品。バッタのメカニックやサメの航空母艦、迷彩柄のカメレオンのサイドカー、トンボのヘリコプターなど、ユーモアたっぷりの、しかし微妙に恐ろしい模型と、軍事機密とハンコまで押された設計図で、2010年の展覧会Gosse de peintre用に作られたもの。写真撮影禁止だったのが残念。
地下の長い壁一杯に、ポストイットやホテルのメモ用紙、レストランのペーパーナプキンなど色々な紙きれに書かれたDavid Lynchデヴィッド・リンチの沢山の細かい“絵”は、2007年の展覧会The Air on Fireに展示された作品で、落書きのように見えるものから、この人は相当なデッサンのテクニックがあるなと思う物まで、彼の特異な脳の中身を見る思いのする作品でスゴイ。下の数点はほんの一部で、イメージとして載せました。
精密な絵でファンの多いコミックの作者Moebiusモエビウスのメモ・ノートの展示も、ファンタジックで奇異な世界。下のポスターは2010-11年の展覧会のポスター。イマジネーションが広がり、不思議な動物となって駆け巡る・・・
つい最近の展覧会でとても話題になったオランダの若いアーティストRon Mueckロン・ムエックの作品は、広い地下室を一杯にするほど大きな、女性がベッドに寝ている姿。若くも美しくもない普通の女性の、リアルであってもニセモノ臭い巨大な像を見ていると、不可思議な不安を感じます。
FCACと三宅一生のコラボも多く(1998年Making
Things、2000年A-Pocのファッションショー)、今回のために特別彼が作ったランプが会場を飾っていました。このほか2001-2年の村上隆のkai kai kikiなども、ローテーションで今後展示されるのでしょう。
この美術館は建築界の大御所ジャン・ヌーベルが手がけ、メタルとガラスに庭の植物や木が映える美しいもので、84年完成当時は大変話題になりました。美術館としては作品を掛けるために不可欠の壁を敢えて作らなかったので(地下だけは壁あり)、アーティスト達はFCACと協力の上独自の方法で展示をしなければならず、それがここの展覧会の特徴でもあり、ビジターは四季折々の自然をバックにした作品を鑑賞することになるので、特殊な効果があります。
どこからが庭でどこまでが建物かわからないような、植物と透明ガラスが混じり合ったハーモニー。元はシャトーブリアンの住居だったので、下右写真の入口正面の大木は、1820年代にシャトーブリアンが植えたレバノン杉。
左側は入口外、右側は館内で、過去の展覧会のビデオを映写中
Fondation Cartier pour l'art contempolain 261 Bd. Raspail 14e http://fondation.cartier.com/#/en/home/
0 件のコメント:
コメントを投稿