3/30/2020

ヴァージル・アブローのEfflorescenceと・・コロナ


Virgil Abloh "Efflorescence" et...... Corona

世界中がウィルスに侵されいます。成すすべもない人間達は息をひそめて、このちっぽけな微生物が一日も早く消え去ってくれるのを待っています。たった1か月前までは、自分達の科学の高度さに奢り、宇宙も支配できると思っていた人間達・・・
国境を閉め、外出禁止令が出され、まるでコロナウィルス相手に籠城戦を繰り広げているよう。ただ中世と違うのは、ネットやメディアのおかげで外のニュースが刻々とわかり、火矢が飛んで来る代わりに、目に見えない敵がすでに私達の中に紛れ込んでいるという点だけ。
閉じ込められた私たちは、しかし時間はたっぷりあります。安いからといって大切な食料や医療品を外国の生産に頼る危険、大切な病院、学校等々の整備を怠り、目先の利益ばかり優先するグローバル化の弊害など、考え直すよい機会かもしれません。

という長い前置きの後、急転直下、オフ・ホワイトの創始者でルイ・ヴィトン・オムのアートディレクター、かの有名なヴァージル・アブローの小展覧会のお話です。このブログのテーマからあまり脱線しないように・・・けれど1㎞以上の外出禁止と、パリがゴーストタウン化しているので、もちろんこのギャラリーも閉まっていて、3月初めに撮ってあった写真だけの紹介になります。
iPhoneを模った鏡。ブログトップの、丸い穴が1つだけの方が特におしゃれでした。
ヴァージル・アブローのあまりにも有名なスニーカーを思わせる什器達。一見荒っぽいようで、案外そうでない。下手に使うと超ヤボ、うまく使うと超スバラシそうなデザイン。

コロナの脅威が去り、外出が自由になり、公共施設やショップがオープンするまで、新しい話題をブログにすることは当分できません。幸い写真のストックが色々あるので、出来る限り "籠城中" もブログは続けてゆくつもりです。

Galerie Kreo   Virgil Abloh "efflorescence"   31 Rue Dauphine 6e   Covid-19のため閉店中

3/21/2020

ギャラリーTOM/ 松壽散歩 東京 No.3


Gallery TOM/ Promenade à Shôtô, Shibuya  Tokyo No.3

私は普段でも歩くのが大好きです。コロナ対策で人混みも避けられて一石二鳥なので、ホテルのあった渋谷を起点に、全く知らなかった松壽界隈、首都高を超えて西郷山公園-菅刈公園、目黒川沿いに中目黒まで散歩してみました。
松壽は東京有数の高級住宅街だそうで、文化村からすぐなのに静かで気持ちよく、戸栗美術館-素晴らしい伊万里焼展を鑑賞-、松濤美術館、ギャラリーTOMと、3つの美術館が集まっています。どれも個性的な建築、選りすぐった小規模な展示でゆっくりと鑑賞できました。その後やはりコロナのために全部クローズしてしまいましたが・・

中でも一番素晴らしかったのはギャラリーTOM。20世紀初頭、ベルリンでバウハウスの理想などに直接接触した画家、イラストレーター、建築科、作家でもあったマルチアーティスト、村山知義のTomoyoshiに因んで、Tomと命名された個人経営のギャラリーです。優れた童話作家だった奥さん村山籌子さんの童話の挿絵も彼が描いていて、名作として有名だそうです。彼らの息子の、やはり童話作家の村山亜土夫妻が建てたのがこのギャラリーTom。
上の写真、正面右の階段を上った2階がギャラリーです。




階段の途中にTomをはめ込んだり、一目見てアーティストの作品とわかる取っ手など、細部の美しさまで考慮したデザイン。マルタ・パンのデザインした取っ手を思い出しました。



入り口を入ってすぐのオープンスペースは、外からの光が沢山入る吹き抜けです。雨水の排水設備だそうですが、ギザギザな天井に続く天窓が、まるで教会の窓のよう。

古いコンクリート建築を見ていつも思うのは、木材が要所要所に美しく使われている事です。ギャラリーTomの内部はとてもヒューマンで、コンクリートの冷たさを感じません。建物を作った人々の思い入れや美意識が高く、彼らの人柄や建物に対する愛着も、自然ににじみ出るのでしょうか。バウハウスを思わせるシンプルな什器、階段、手すりの木材は、使い込まれて、ほっとするような美しい色をしていました。


しかしギャラリーTomは、それだけではないのです。村山亜土、治江夫妻の長男が視覚障害者だったことから、"視覚障害者が手で見られるギャラリー" として1984年に建てられたからです。上の写真は門の柱に付けられた言葉 "僕たち盲人もロダンを見る権利がある" にはハッとさせられました。今まで私達が何も考えずに見ていた美術館の彫刻やレリーフなどは、本当は目の不自由な人たちにこそ、触って鑑賞してもらうべき物なのではと・・・
Tomはもちろん普通のギャラリーの展示もありますが、定期的に目の不自由な方達の作品を展示したり、彼らが触ることのできる展示、講演会や海外との交流を企画。手で触る北斎、といった本の出版にも関わっているようです。バジェットが沢山ある国立県立などの大美術館は、いったい何をしているのかと思ってしまいますが、触ることによって作品を傷める可能性がある事など、作品保護の方が優先されてしまうのでしょうか。


尚、Tomのルーツとも言える村山知義籌子夫妻の、リボンとキツネとゴムまりと月、川へおちたたまねぎさん、などと楽しいタイトルの童話は、素晴らしそう。村山籌子作品集というのが出版されています。ぜひ見てみたい!

ギャラリーTom 東京都、渋谷区、松涛 2-11-1
Gallery Tom  2-11-1, Shoto, Shibuya, Tokyo, Japon

3/11/2020

マル秘展/ 2121デザインサイト 東京No.2


2121 Design Sight by Tadao Ando, Tokyo No.2

もう一つ東京で楽しみにしていたのは、"展 " と曰くありげなタイトルの、東京ミッドタウン、2121デザイン・サイトの展覧会です。


なぜマル秘なのか? それは、普段は人の見に触れることのない、デザイナー達のメモや下書きなどを集めた展覧会だから。完成した建物や家具、オブジェができるまでの、彼らの素顔をちょっぴり覗くことができます。


アーティスト、デザイナーなど、何かを創造する職業の人は、アイデアソース、インスピレーション、エチュードと、何かにつけてメモなりデッサンなりを書きますね。昔々のダヴィンチやミケランジェロだって、大作の裏にはそういう沢山の試行錯誤があって、今ではその " 試行錯誤 " が美術品として展示されていますね。
というわけで、展示されていたデザイナーの大半の方が、メモ魔、デッサン魔で、大量の大学ノートやデッサン帳、どこにいても書けるような、手の平に乗る程の小さい手帳が山ほどと、とても興味深いものでした。旅行中のメモはそのまま、旅の手帳としても素敵でした。


      


2121デザインサイトの建物は、発起人である三宅一誠さんのデザインのキーワード " 一枚の布 " からの発想で、一枚の鉄板を折り紙のように折った形だそうです。シンプルな外観に反して、日本の最高技術を駆使しなくてはできなかったという、安藤忠雄さんのデザイン。

建物の殆どが地下にありますが、自然光がふんだんに入り、すっきりシャープなデザインが美しい。

あちこちに置かれた休憩用、資料参照用の椅子は素敵なものばかり。


        
        
        

さて最後に、ここに挙げた写真は全て現場で撮ったもので、2121は写真撮影どうぞどうぞの、鷹揚なヨーロッパ式の美術館なのです (全ての美術館を見たわけではありませんが・・)。マル秘展などというタイトルに反して、皆さんバチバチ撮っているのは、とても気持ちのよい光景でした。さすが三宅一誠さんをはじめとする、世界でトップのデザイン関係の方々が集まってできた美術館ですね。前回のブログ、ソール・ライター展のコメントも参照下さい。

21_21 DESIGN SIGHT 東京都港区赤坂 9-7-6 東京ミッドタウン http://www.2121designsight.jp/program/inspiration/
好評のため5月10日まで延期、現在コロナウィルスのため臨時休館中

3/03/2020

ソール・ライター展/ 文化村美術館、東京No.1


L'exposition "Saul Leiter", Bunkamura Museume/ Tokyo No.1

日本に行っていたので、しばらくブログをお休みしていました。
コロナ騒ぎでなんとなく落ち着かない滞在でしたが、印象に残る展覧会をいくつか見ることができました。その筆頭は文化村美術館のソール・ライター展。期待通りの素晴らしい作品ばかりでとても感動。3月8日までの開催予定が、コロナのために2月28日でカットされてしまったので、滑り込みセーフで見られました。


        by Bunkamura Museume
上の赤い傘の写真はこの展覧会のポスターにもなったもので、多分彼のアートの真髄のような作品。雨や雪、ガラスや鏡、ぼやけてはっきりしないアウトライン、隙間から垣間見る世界、二重三重と複雑に重なり合うイマージュ、そしてヴィヴィッドなアクセントカラー・・彼の大好きな大道具は窓、ショーウインドー、車、信号、傘・・・

ソール・ライターは50-80年代に、アメリカの第一線でファッションカメラマンとして活躍していました(詳しい事はネットの情報多数を参照)。しかし文化村の展覧会は、一部を除いて、彼のファッション以外の作品が中心。これが素晴らしい! 決してノスタルジックでない50-60年代、さすがファッションカメラマン、とてもおしゃれなニューヨークを描き出しています。多分私は彼のファッション写真よりこちらの方が数倍好き。


        
        
                                   by Liberation, Télérama, Le Point
上の写真は展覧会の作品ではなく、ライターの作品のイメージをお伝えするために、こちらの新聞から拝借したものです。文化村美術館は写真禁止だったから。なぜか日本の美術館はケチで(失礼!でもホント)殆ど撮影禁止。売店でカタログや絵葉書を売るため? フランスでは、ごく一部の作品の持ち主(多分個人コレクター)がイヤと言ったもの以外は撮影自由です。表示がない場合、私は必ず係員に確かめますが、普通はどうぞどうぞで好きなだけバチバチ撮れます。携帯でなく本式カメラもOK。プロ並みの装備で本格的に撮らないから、所詮ただのスナップショット、商品価値もないのになぜ?
またついでに言うと、なぜ展覧会タイトルが "永遠の" ソール・ライターなのか?甘ったるい永遠は不要‼

ブログトップの写真は、友達を待っている間に何気なく撮った会場入り口付近で、ほんのちょっぴりだけライター風なのに後で気が付きました。もちろん彼のアートとは程遠いけれど・・ポスター自体が雨の曇ったガラス越し、文化村の壁と床に照明や後ろの窓が反射してますね。もう少し工夫して、映った窓のブルーをもっと大きい角度に、手前に柱かベンチ、加えて前を通る人のシルエットがぼやけて加わっていればよかったなあ・・

The Museum Bunkqmura     2-24-1 Dogenwaka, Shibuya, Tokyo