8/25/2018

ドラクロワの庭/ パリのシークレットガーデンNo.3


Atelier Musée Delacroix/ un jardin secret à Paris No.3

これまでの2つの庭に比べてもう少し知名度が高いのが、ドラクロワの庭でしょうか。興味深い特別展を企画するなど、小さいというハンディがあるのに美術館側が頑張っているお陰かもしれません。ですからあまりシークレットと言えないけれど、やはり静かで落ち着く、私のとっておきの庭です。
上の写真の大ガラス窓の建物がアトリエ、右側のビル(の多分一部)が住居、外階段が2つの建物と庭を繋いでいます。サン・シュルピス教会の壁画製作(1854-61年)で疲れていたドラクロワが、サン・シュルピスのすぐ近くのこのアトリエに引っ越したのが1857年。それから亡くなる1863年まで、ここを隠遁所エルミタージュと呼んで愛したそうです。

沢山椅子やベンチがあるので、サンジェルマンデプレ散歩の合間にゆっくり休憩するのにぴったり。そんな人が何人か集まると、どこからともなく係の人が来て、お庭の説明を簡単にしてくれます。2012年に、残っていた領収書などの記録を元にして、ドラクロワ当時の庭に修復したそうです。春は花が咲いてもっと美しい。


芸術家の遺族が家やアトリエを国や都市に寄付して小美術館ができる例が多いのですが、ドラクロワの場合は、彼の死後70年してこのアトリエが壊される危機に瀕した時、モーリス・ドニを中心とするドラクロワを憧憬する画家、画商、愛好家が協力しあって保存し、1932年に美術館としてオープンしました。

ところで、サンシュルピス教会にドラクロワの大作が3点ある事は、案外知らない人もいるようです。その中の1つ、 "神殿から追い出されるヘリオドール" は、3人の天使と追われるヘリオドールの動きが、渦のように動きのある円を描く私の好きな作品。行列もなく簡単に入れるしもちろん入場無料、教会を入ってすぐ右手のチャペルにあり、ベンチに座ってゆっくり鑑賞できます。

Musée Delacroix  6 Rue de Furstenberg 6e  http://www.musee-delacroix.fr/en/
毎月第一日曜日が無料以外、残念ながらここは入場料が必要。ルーブル美術館とのツインチケットを買っておけば無料になります。

8/17/2018

バルザックの庭/ パリのシークレットガーデンNo.2


Maison de Balzac/ un jardin secret à Paris No.2

パリのシークレットガーデン2つめは、作家バルザックの家。
バルザックという人は生涯小説を書きまくり、借金しまくり、借金取りから逃れるために引っ越し魔で、1年ごとくらいに転々としたようです。このパッシーの家は彼の住んだ現存する唯一の家で、1840-47年の7年間いたのですから、彼としては最長記録だとか。

家と庭はエッフェル塔が見える丘の傾斜した土地にあり、Raynouard通りの入り口を入って1階分階段を下ります。ブログトップの写真はこのレヌアール通りから、上の写真は階段から撮りました。

バルザックの書斎、この机で人間喜劇を執筆しました。
1室には人間喜劇の挿絵の版木(銅板?)の展示。中学か高校の頃、初めてこの挿絵を見たのはウジェニー・グランデだったか従妹ベットか・・いかにも1800年代ぽく古風で、しかも登場人物達の、冷酷、狡猾、卑劣、傲慢、軟弱といった、人間の醜悪な性格を見事に描き、あまりにバルザックのお話の内容とぴったりしすぎてやりきれない気持ちにさせられました。今でもやっぱり好きになれない・・でもすごい描写力です。

本当はもっと花が咲き芝生も緑なのに、この暑さで庭全体カラカラ。あまりきれいな写真が撮れなかったのが残念。こんなに暑くなければ、椅子があちこちの木陰に置かれ、もっとゆっくしたいところ・・・ここも特別の展示がなければ入場無料です。

当時このあたりは田舎で、その頃の名残か、エッフェル塔の見えるテラスの壁に沿って、ずっとブドウが植えてあります。このテラスの下には、細い路地Berton通りがあり、バルザックの頃と変わらない田舎風の散歩道になっています。上のレヌアール通りからは1階建てに見えるこの家は、実は丘の傾斜に沿って下に2階分あり、隠し階段を使うと階下からこの小路に出られたそうで、借金取りから逃げるのに好都合だったとか・・


Maison de Balzac   47 Rue Raynouard 16e  http://www.maisondebalzac.paris.fr/en

8/08/2018

ザッキンの庭/ パリのシークレットガーデンNo.1


Atelier Zadkine/ un jardin secret à Paris No.1

パリジャンがヴァカンスに出かけ、お店も閉まって静かなパリの夏・・・8月中は小さな庭のある小さな美術館だけをいくつか集め、パリのシークレットガーデンめぐりをしてみましょう。
まずは彫刻家、オシップ・ザッキンの自宅兼アトリエ。1928年から亡くなる1967年まで約40年間、同じく彫刻家の奧さんと一緒に住み制作に励んだ、モンパルナスのエコールドパリゆかりの場所です。


夫婦2人で仕事をするためでしょうね、アトリエが2つあります。上写真の母屋の1階と、下の写真の、庭の中の別棟。

けして大きくない庭で、周りを高いアパートに囲まれていてもプライバシーのある、大都会にいることをしばし忘れる緑いっぱいの静けさ! 特別展がある時以外は入場無料なので、ちょっとした休憩に気軽に立ち寄りましょう。古い梁を切ったスツールが6、7個あるだけなので、長居はできませんが・・



Musée Zadkine   100 bis  Rue d'Assas 6e http://www.zadkine.paris.fr/en

8/02/2018

ザオ・ウ-キzao wau ki

暑中お見舞い申し上げます

Zao Wou-Ki, L'espace est silence

パリとは思えない真夏日がずっと続き、34-35℃という日も‼ 湿気がないので日本の 猛暑 ほどではないけれど、普段は絶対日当たりの良いカフェを選ぶパリジャン達も、さすがに日陰カフェ派になってきました。
そんな暑さをひと時忘れ、涼しさを感じられるのがザオ・ウ-キのタブロー。 色彩が渦巻き、流れ、空間を駆け巡り、どこからともなく微かな音色が響き、シンフォニーとなって舞い上がり、そして静寂がおとずれ、無限が広がる…


1920年北京生まれ、裕福でインテリの家庭に生まれ、早くから伝統的中国絵画を勉強し、満足できずに油絵の西洋絵画に、それでも飽き足らず近代絵画へ移行。1948年フランスに渡り、モンマルトルをベースにアンリ・ミショー、ピエール・スーラージュ、ヴィエラ・ダ・シルバなどと交流。スイスでホワン・ミロの作品に接してショックを受け、以後アブストラクションに専心します。早くも49年にはパリの絵画コンクールの一位を獲得し、初めての展覧会を開催。以後インターナショナルに活躍、1964年にはフランスに帰化、2013年死去。

最もヨーロピアンなアジア出身の画家の一人であって、しかしどの作品も、西欧の画家の表現と違った無限、静寂・・樹木、湖沼、空、雲等の自然を感じる詩情・・墨絵? それとも彼の出身地の先入観があるためかしら? 意識して墨絵風のブラックの墨だけを使った大作のシリーズも、会場の一室で鑑賞することができます。
パリで15年ぶりの展覧会だそうで、必見です。

Zao Wou-Ki, L'espace est silence  http://www.mam.paris.fr/fr/expositions/exposition-zao-wou-ki
Musée d'Art moderne de la Ville de Paris. 2019年1月6日まで
今工事中なので仮の入り口、セーヌ岸の12-14  av. de New York から入ります。