3/21/2020

ギャラリーTOM/ 松壽散歩 東京 No.3


Gallery TOM/ Promenade à Shôtô, Shibuya  Tokyo No.3

私は普段でも歩くのが大好きです。コロナ対策で人混みも避けられて一石二鳥なので、ホテルのあった渋谷を起点に、全く知らなかった松壽界隈、首都高を超えて西郷山公園-菅刈公園、目黒川沿いに中目黒まで散歩してみました。
松壽は東京有数の高級住宅街だそうで、文化村からすぐなのに静かで気持ちよく、戸栗美術館-素晴らしい伊万里焼展を鑑賞-、松濤美術館、ギャラリーTOMと、3つの美術館が集まっています。どれも個性的な建築、選りすぐった小規模な展示でゆっくりと鑑賞できました。その後やはりコロナのために全部クローズしてしまいましたが・・

中でも一番素晴らしかったのはギャラリーTOM。20世紀初頭、ベルリンでバウハウスの理想などに直接接触した画家、イラストレーター、建築科、作家でもあったマルチアーティスト、村山知義のTomoyoshiに因んで、Tomと命名された個人経営のギャラリーです。優れた童話作家だった奥さん村山籌子さんの童話の挿絵も彼が描いていて、名作として有名だそうです。彼らの息子の、やはり童話作家の村山亜土夫妻が建てたのがこのギャラリーTom。
上の写真、正面右の階段を上った2階がギャラリーです。




階段の途中にTomをはめ込んだり、一目見てアーティストの作品とわかる取っ手など、細部の美しさまで考慮したデザイン。マルタ・パンのデザインした取っ手を思い出しました。



入り口を入ってすぐのオープンスペースは、外からの光が沢山入る吹き抜けです。雨水の排水設備だそうですが、ギザギザな天井に続く天窓が、まるで教会の窓のよう。

古いコンクリート建築を見ていつも思うのは、木材が要所要所に美しく使われている事です。ギャラリーTomの内部はとてもヒューマンで、コンクリートの冷たさを感じません。建物を作った人々の思い入れや美意識が高く、彼らの人柄や建物に対する愛着も、自然ににじみ出るのでしょうか。バウハウスを思わせるシンプルな什器、階段、手すりの木材は、使い込まれて、ほっとするような美しい色をしていました。


しかしギャラリーTomは、それだけではないのです。村山亜土、治江夫妻の長男が視覚障害者だったことから、"視覚障害者が手で見られるギャラリー" として1984年に建てられたからです。上の写真は門の柱に付けられた言葉 "僕たち盲人もロダンを見る権利がある" にはハッとさせられました。今まで私達が何も考えずに見ていた美術館の彫刻やレリーフなどは、本当は目の不自由な人たちにこそ、触って鑑賞してもらうべき物なのではと・・・
Tomはもちろん普通のギャラリーの展示もありますが、定期的に目の不自由な方達の作品を展示したり、彼らが触ることのできる展示、講演会や海外との交流を企画。手で触る北斎、といった本の出版にも関わっているようです。バジェットが沢山ある国立県立などの大美術館は、いったい何をしているのかと思ってしまいますが、触ることによって作品を傷める可能性がある事など、作品保護の方が優先されてしまうのでしょうか。


尚、Tomのルーツとも言える村山知義籌子夫妻の、リボンとキツネとゴムまりと月、川へおちたたまねぎさん、などと楽しいタイトルの童話は、素晴らしそう。村山籌子作品集というのが出版されています。ぜひ見てみたい!

ギャラリーTom 東京都、渋谷区、松涛 2-11-1
Gallery Tom  2-11-1, Shoto, Shibuya, Tokyo, Japon

0 件のコメント:

コメントを投稿