Mise en scène de Ercole Amante de Cavalli
オペラ "恋するヘラクレス" エルコーレ・アマンテ(以後エルコーレ)は、ルイ14世とスペイン王女マリ-テレ-ズ・ドートリッシュとの結婚祝賀の出し物として、マザランが、カヴァリに注文したオペラです。乗り気でなかったカヴァリをヴェネチアからパリに引き抜き、その祝賀の為に建てられたチュイルリー劇場で1662年に上演されました。劇場の建設が遅れて、結局結婚式の2年後の初演、太陽王自身がダンサーの一人として舞台に立った事でも知られています。
当時のイタリアオペラは、観客をあっと言わせる機械仕掛けの舞台装置が売り物でした。エルコーレもその例にもれず、当時のヨーロッパで最大と評された大掛かりな仕掛けで上演されたのですが、リュリーが下請けしたダンスは好評だったものの、本命の歌は機械のせいで音響が悪く、またイタリア語の歌詞は理解されず不評。傷心のカヴァリはイタリアに帰り、以後フランス宮廷はリュリーの独断場になり、素晴らしいフランス語のバロックオペラが沢山生まれますが、エルコーレは全く見捨てられていました。いつ頃再発見され、最近どのくらい上映されていたか資料が見つからなかったのですが、今回のオペラコミック座の公演が、完成度からも復活記念的な公演といえるかも。若手バロックのホープ、ラファエル・ピションの方針からか、ダンスは全部省かれ大喝采を浴び、遅ればせながらカヴァリの名誉挽回果たせり!と批評に出ていました。
これが幕開き一番最初の舞台。最近まれなファンタジーと遊び心一杯の美しいもので、太陽王のシンボルの大きな金色の太陽から光る光線の先に、コーラスの顔がお面のように現れ、月の女神と一緒に歌うシーン。これは面白そうな演出だとホッと安堵・・何しろ硬い椅子に座って3時間ですからね、最近のパンクの不良達や宇宙飛行士、はてや老人ホームに見立てた演出では辛いもの・・
これがラストのシーン。女神たちは空中を上下左右に、エルコーレの息子イーロは、空中の檻に捕えられ、そこから真っ逆さまに海に落ち、木や花が生え、波が打ち寄せ、海の怪物や船が横切り、水泳をするコーラス達が海にジャンプし、ギリシャの円柱が動き回り、舞台下からは地獄の怪物達が這い出して来る・・・
演出家はValérie LesortとChristian Hecq。このコンビは去年もオペラコミック座で大評判でしたから、今後要注目ですね。インタビューによると、ストーリーにロジックが無いので、歌詞に忠実に演出したそうです。例えば女神ジュノーは孔雀にまたがって来ると歌っているので、孔雀の乗り物を作ったり・・・彼らの底なしのイマジネーションには拍手喝采です。カヴァリは、ヘンデルやヴィヴァルディに行きつく前の、まだ少々型にはまったメロディーなので、時として舞台の動きが面白くて、音楽を聴く方がおろそかになったくらい! しかし歌い手達もみな素晴らかったです。
海に落ちたイーロはポセイドンのサブマリンに助けられ・・・
下はアヒルだったか・・鳥の飛行機を運転しながら歌う女神。彼女やジュノーなど3人の女神の額には、もう一つの顔がさかさまに付いていて、よく見るとやや不気味。
photos by Opéra comique, Concert Classic Com, La Croix com
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