7/03/2018

石上純也さんの自由な建築


Junya Ishigami, Freeing Architecture

一昨年ニューヨークMoMAの "A Japanese Constellation"、去年はポンピドー・メッスのJapan-nessジャパン-ネス展とパリ、パビヨン・ド・ラルセナルのパリの日本建築展など、日本の建築は世界中の注目を浴びてひっぱりだこ。今春はカルティエ財団で開催中の石上純也さんのFreeing Architecture(自由な建築)展が話題です。
恐らく大多数のパリジャンと同じく、素人の私には石上純也の名を聞いたのはこれが初めて。見終わった感想の第一は、メガロマニアックなものと、日本人らしい微に入り細を穿つマイクロスコピックなものとが混じりあったショッキングなアンバランス。それが岩や木、空気、雨などの自然と呼応し、石上さんの "子供の絵本" 風のファンタジーが加わって、フランス人が考えもしないような "作品" が展開されます。建築やデザイン関係の人かなという若者達に、一般のオジサン、オバサンからお年寄りまで、みんなウームと唸りながら食い入るように鑑賞していました。
これは一番最初に目に入り、心底びっくりさせられる、中国の谷間に建設予定のチャペル。詳しいデータは忘れましたが、入り口は人が2人すれ違える幅、高さ45m、周りを囲む壁は下から上に約2mから20cmくらいの厚さという、刀の鞘のようなフォルム!
深い谷間に天を切るように建てられるチャペル。右の3つの写真は、薄暗い入り口、ずっと進んで行くと前方に光が見え、奧のチャペルは眩しいほどの光に満ちています。なんという演出! 無信心者もおのずと敬虔な気持ちになりそうですが、閉所恐怖症でなくてもちょっと怖いかも。
このチャペルを水平と垂直に切った図
上はシドニーに予定されるCloud Arch雲のアーチ。彼の夢のような想像の世界で生み出されたものが、賛否両論で色々騒がれた末実体化します。下はその模型。
光はもとより、雨も入ってくる自然と一体になった建物。天井の穴から入る雨を、屋根のある場所で仕事をしながら眺める・・誌的で美しくユートピア的ですが、降った雨はどのように排水し、乾いた空間を残すのか? 雨は垂直に降るばかりでなく、風によって四方から降りこむ場合は? 風は? 暖房は?
彼の手にかかると、動物や恐竜まで "建築" になってしまいます。
これは中国に予定される幼稚園の模型。完成すれば世界で最もファンタジー溢れる幼稚園になることでしょう。しかしビジターの目が釘付けになるのはこの模型自体。色鉛筆の手描きで花や木を描き、グリーンやグレイの床の部分も、色々なトーンにわざわざ手で色を書き込んだ紙を手で千切り、一つ一つコラージュしています。顕微鏡的な細かい仕事! 模型は本当に美しく、写真を撮ればそのまま子供の絵本に使えます。しかし建築の模型は芸術作品ではないし(それとも最近はアートとみなされるの?)ここまでする必要があるのか? そのあたりのボーダーレスが魅力、でもちょっと気になる。この外にも随所にマニアックな配慮があり、アシスタントさん達はさぞかし大変だったのではと思ってしまいました。
石上さんのイメージする "建物" は、建築というよりも巨大な立体アートかインスタレーション、時にはジャイアントサイズのおもちゃ、と呼んでもいいくらい。彼の2007年の "四角い風船" というインスタレーションの写真をネットで見ました。総重量1トンもあるアルミの箱をヘリウムガスで宙に浮かせたもので、まさに巨大でファンタジックなおもちゃ。
上は石上さん直筆の作品のコンセプト。子供の詩のような文体で、字も不ぞろいの小学生のよう。見るからに拘りの人ですね。実際に出来上がった建物はまだ少ないようで、いつか本物を見るのがとても楽しみです。
石上さんの椅子。面白くて子供が喜びそうなフォルム。

Junya Ishigami, Freeing Architecture  9月9日まで
Fondiation Cartir pour l'art contempolain     261 Bd.Raspail 14e  


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6/23/2018

ゴードン・マッタ=クラークのアナーキテクチャー


"Anarchitecte" Gordon Matta-Clark 

偶然か、それともアート界の目がそちらの方向に向いているためか、パリ(ジュ・ド・ポーム9月23日まで)と東京(国立近代美術館9月17日まで)同時にゴードン・マッタ=クラークの展覧会が開催中です。1942年生まれ、70年代にニューヨークで活躍し、35歳で亡くなってしまったのですが、今のストリートアートやアヴァンギャルド・アート、はてはソーホーで初めての芸術家グループ経営のレストランFoodを立ち上げて有名になるなど、後に続くアーティスト達の先駆者的存在だったのです。
ジュ・ド・ポームは写真美術館なので、彼の残した写真とヴィデオだけの展示。
雑多な壁紙やタイル、漆喰がボロボロになって残っている解体中の建物の壁、落書き、パリの地下などの写真が並び、彼の視線がかなり異色だったことがわかります。父親が有名な建築家でシュールレアリスト画家、父と交際のあったマックス・エルンスト、マルセル・デュシャン、イサム・ノグチなどの影響かもしれません。
                                 

彼の名を一番有名にしたのは、不要になり解体を待つ倉庫やビルを切断して作る巨大な彫刻、インスタレーションともいえる作品です。上はブロンクスの古い倉庫の壁をカットした作品 Day's End。放置されガランとした建物の薄暗い内部に、カットされた空間から入る光と影の美。


Conical Intersect円錐の交差と題された、建物の壁、床、天井を円錐形にカットしたシーリーズの作品。パリのポンピドーセンターが建設中で、その周りの取り壊し予定の建物を使って巨大な3Dの円錐形がカットされました。今ではそのプロセス、色々な角度から見た円錐のカットや、そこから覗き見える外の景色と、荒れた建物の壁や床とのコントラストを映した写真やヴィデオが残っているだけで、建物はすぐに壊されてしまいました。元々壊される運命の作品・・今ではもう実体がないのに、残された写真とヴィデオが自体が作品として展示される不思議な作品・・
 

彼はこのような手法を、自分でアナーキテクチャーと呼んでいました。アナーキーなアーキテクチャー。この造語を初めに使ったのは、ロビン・エヴァンスという建築評論家の書いたTowards Anarchitectureという本のタイトルだったそうです。このタイトル自体もル・コルビュジエの本 " 建築へ "  Vers une architectureをもじっているとか。
マッタ=クラークと仲間達の興味は、水害や事故で壊された建物を写真に撮るなど、社会問題や建築と環境、リサイクル、自然食品にも及んでいます。早世しなければどんな作品を展開し続けたのでしょうか?

Gordon Matta-Clark "Anarchitecte"  Jeu de Paume, 1 Pl. de la Concorde 8e    9月23日まで

6/10/2018

クプカ&アブストラクション&デザイン


Kupka/ Abstraction/ Design

"アブストラクションのパイオニア" というタイトルで、フランティセック・クプカの大回顧展がグラン・パレで開催中。なぜパイオニアかというと、美術史上、彼は最も早く抽象的な絵を描き始めた画家の一人だったのだそうです。順を追って作品を見てゆくと、画風がどんどん進化してゆき、画家の頭の中で、抽象絵画がどんなプロセスで生まれるかを、ちょっぴり覗いて見られるような展示でした。

抽象画家は、若い頃クラッシックな正統派の具象から出発していてびっくりさせられることがありますが、クプカの場合は違います。初期の画風はあくまで古典的でも、北欧風に感じられる(ボヘミヤ生まれなので東欧的と言うべきか?)幻想的、神秘的、象徴的作品が大多数。初めから目に見えた物でなく、心の中で想像した物を描いていたのですね。
上の若い女性の背景は、後のジオメトリーを彷彿とさせます。
上はクリムト風です。これがもっと発展すると、下のような抽象に?
下の4作品は、どのように抽象画が生まれるか、分かりやすい例として展示されていました。
             
            
1930年代からは徹底したアブストラクション。

どんどん単純化され、余計な線が削除され、最後は下写真のような、絵画というよりはデザイン、グラフィズムと言った方がいいような作品を残しました。これ、いいですね~色々なデザインに盗みたくなる絵!

クプカってグラフィック・デザインの元祖ではないかと思いながら展覧会を見ていた私は、帰りがけに売店の前でハタと立ち止まりました。美術館も同じことを考えたのでしょうね、クプカをテキスタイルのデザインに使ったポーチやトートバッグを売っていました!!
フックとトートのコーディネーションがとてもステキ・・

注: ここに取り上げた作品は私の好きなものばかりです。クプカがパリに来てから描いた幻想的かつ皮肉で残酷なまでの挿絵やポスター、また後期の派手な色使いの、無限の宇宙や色彩の洪水のようなアブストラクションのシリーズなどは、好みでなかったので省略しました。
Kupka, Pionnier de l'abstraction    3, avenue du Général Eisenhower 8e 7月30日まで

6/03/2018

シャルドンのパン


Boulangerie Chardon aux Grands Voisins 

元病院の敷地に、次の建物が立つまでの間パリ市が若者たちに解放して出来上がったコミュニティー・マルチスペース、レグランヴォアザンに、去年夏から仲間入りしたブーランジュリー・シャルドン。シャルドンとは " あざみ " の事。厳選した本物の素材を使い、手で捏ねたこだわりのパンは、野原や田舎のあぜ道にしっかりと根を張ったあざみのように素朴な味。
今日は上の写真の黒いパン、そば粉100%のものを初めて買ってきました。ねっとりというか少々モチモチ感があり、それだけ食べても美味。チーズと一緒は最高!

奧の黒くて丸いパンはライ麦100%。モチモチ感はなく、ドライな素晴らしい風味。

装飾も何もなく、アトリエと素材の粉置き場も兼ねた店内は、本来の " パン屋  " のあるべき姿かもしれませんね。若いシェフと、あまりプロっぽくない親切な売り子さんにも好感が持てます。

Boulangerie Chardon, Les Grands Voisins 74 Av. Denfert-Rochereau 14e