ARCHITECTURES JAPONAISES À PARIS 1867- 2017
この春、セーヌの中州セガン島に板茂の大コンサートホール、ラ・セーヌ・ミュジカルがオープンして話題を呼び、日本人写真家の展覧会が開催中でこのブログでも取り上げたばかり、そしてまた日本! 今度は日本建築家とパリとの関りをテーマとした展覧会が、パビヨン・ド・ラルセナルPvillon de l'Arsenalのお話しです。外国に住んでいると、ナショナリズム(いい意味での)に目覚めがちで、日本がクローズアップされ、高く評価されるのはとても喜ばしいこと。しかも説明全部が、いつもの仏/英でなく仏/日なのも嬉しい!
日仏の文化交流は明治に始まり、パリ万博に日本館が作られ、日本建築が初めて欧州に紹介されたそうです。その交流が一段と発展したのは、1920年代に前川國男、坂倉順三らが来仏しル・コルビュジエに師事してからで、彼らの共感は両方向だったようです。モダニズム建築は、スライドする障子や襖、居間にも寝室にもなるモジュールな伝統日本家屋と共通の感覚がありますよね。上野の国立西洋美術館建設の依頼を受けて、55年にル・コルビュジエ、シャルロット・ペリノーらが日本に滞在。その時坂倉順三とル・コルビュジエが一緒にサインして、アミチエ(友情)と書かれた貝合わせが展示されていましたが、そのころフランスに日本通の芸術家たちが沢山現れます。80-90年代は当時のパリ市長ジャック・シラクが日本贔屓だったこともあり、黒川紀章(パシフィック・タワー)、丹下健三(グラン・テクラン)、安藤忠雄(ユネスコの瞑想の空間)等重要なパリの建築を手がけ、後の伊東豊雄(コニャック・ジェイ病院)、妹島和世と西沢立衛(サマリテーヌ、パリ以外ではルーブル・ランス)、坂茂(ラ・セーヌ・ミュジカル、リュクサンブール美術館の拡張、パリ以外でポンピド・メッス)、隈研吾(マクドナルド倉庫、サンドニ・プレイエル駅)達の大活躍に受け継がれたのです。欧米の建築家達との共同作業や技術提携も、もう珍しい事ではなく、今後何年もの間、今建築中の大プロジェクトが次々に完成してゆくのが楽しみです。
安藤忠雄の瞑想の空間のデッサン
丹下健三のグラン・テクラン、大映画館の入ったショッピングセンター
ポンピドー・メッス建設の調査検討の段階に、板茂の設計チームの事務所用と、ポンピドー・メッスのプロジェクトの一般向けの紹介の為に、板の提案で2003年、ポンピドー・パリのテラスに、半円アーチと紙管の枠に防水幕を被せた、経済的な仮設事務所が作られた時の写真とマケット。
音響設計家の豊田泰久が、ジャン・ヌーベルのフィルハーモニー・ド・パリの音響パフォーマンスを最適化したのだそうです。あの素晴らしい音響は、日本人の功績なのですね。写真は縮尺1/10の模型を作って考案中のシーン。
これは1861-63年の間に作られた木曽の民家のマケット。建てた年代は、棟木の下から発見された小銭が文久(3年のみ)の年号だった為に限定できたそうです。まず1998年に家とその家具一式が解体され、99年フランス着、2006年に人類博物館に展示されました。そして博物館が改装される事になり、日本の建築家と大工の棟梁の協力で再度解体され、今ではブローニュの森の公園ジャルダン・ダクリマタシオンに移り、予約の上見学することができるようです。
以下は今建築中のプロジェクト:
パリの外れの元倉庫を改良した、マクドナルド大通り公共複合施設の、幼稚園、学校、スポーツ施設部分を隈健吾が担当
妹島和世と西沢立衛改造中の旧サマリテーヌデパート。透明で繊細なSANAA独特の建物が、交通の激しいリヴォ理通りに登場する予定。
同じくSANAAの、ブローニュの森近くの公共住宅。住民からの大反対運動が進行中。確かに市内では珍しく、目立つ建築・・
これに限らずパリ市内は、新しい建築には必ずと言っていいくらい、住民の反対運動が起こっているようです。反対されない、老朽化した工場や倉庫、操車場などが集まっていた環状線周辺は急速に新しくなり、フィルハーモニー・ド・パリやラ・セーヌ・ミュジカルのような巨大な新建築は、市内に空いた場所がない事もあって、やはり環状線の周辺です。
オーステルリッツ駅後方の新開発地区に、2つのエコホテル、バーラウンジ、コワーキング・カフェ、スポーツ施設が入る予定の、隈健吾の複合施設ビル。。
郊外都市計画グラン・パリのプロジェクトの一貫、隈健吾のサンドニ・プレイエル駅の完成図とマケット
隈健吾が改装中のアルベール・カーン美術館は、フランス、イギリス、日本式庭園のある広い4ヘクタールの庭で有名。建物と庭の繋がりを重視するべく、縁側風な通路のあるデザインだそうです。日本風のサロンドテができるそうで、それも楽しみ!
安藤忠雄による、旧証券取引所を改装したピノー・コレクションは、ヴェニスの美術館に続く安藤xフランソワ・ピノーのコラボ。高いドームを持つこの歴史的な建築を美術館の展示スペースとするため、安藤はコンクリートの円筒を挿入することを提案。
本のように分厚い、パリの日本建築展のカタログ。これも日仏語のバイリンガル
Architectures Jponaises à Paris, Pavillon de l'Arsenal, 21 Bd Morland 4e 9月24日まで
http://www.pavillon-arsenal.com/
追加: 実は外にもう一つ日本関係の展覧会が! オランジュリー美術館で、東京の改装工事の期間を利用したブリジストン美術館展を4月からやっています。石橋財団所蔵のルノワールやセザンヌにとっては久しぶりのお里帰り、パリの日本人には、東京で見た懐かしい作品に再会するチャンスです。8月21日まで
追加: 実は外にもう一つ日本関係の展覧会が! オランジュリー美術館で、東京の改装工事の期間を利用したブリジストン美術館展を4月からやっています。石橋財団所蔵のルノワールやセザンヌにとっては久しぶりのお里帰り、パリの日本人には、東京で見た懐かしい作品に再会するチャンスです。8月21日まで
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