3/23/2021

観客なしのアイーダ

   photo by L'Opéra de Paris

Aida à l'Opéra de Paris sans spectateurs

コロナウィルスで閉まったままのオペラ座が、ヴェルディのアイーダを、ビデオを通じて実況で公開しました。
今シーズンのアイーダは、主役のソンドラ・ラドヴァノフスキーを筆頭に、ヨナス・カウフマン、エリナ・ガランチャ、リュドヴィク・テジエと、超の付くスター歌手が4人揃う待望のプログラム。しかしコロナのせいでとっくの昔に諦めていたもの。ガランチャが欠けて残念だった以外は全員集合で、オペラ座に行ったつもりで楽しむことができました。
演出は、ロッテ・ド・ベールというオランダの若い女性演出家の、パリ・デビューです。

まず私の好きだったのは、手描きの背景と幕。ジンバブエ出身の若い画家Virginia Chihotaヴァージニア・チホタの作品で、特にブログトップの写真が、広い舞台のバックにほの暗く印象的でした。

彼女の絵をもっと見たくてネットで探したところ、ロンドンのTiwani Contemporalyという、アフリカアート専門のギャラリーのサイトに、沢山の写真が出ていました。彼女のルーツのアフリカと、Whose am I? I Am not my own Whose child are you? A thorn in my flesh On madness, sanitation, antipsychiatry and resistance 等の作品のテーマからうかがわれるように、内面に色々な疑問や葛藤を持つアーティスト・・具体的にも比喩的にもダークな作品。ちょっとバスキアを思わせます。

 

 photo by L'Opéra de Paris

次に注目はマリオネット。ほぼ等身大で、黒灰色の溶岩のようなマチエールで作られ、関節を繋ぐ金属があらわに見えるのが、痛々しくもありアグレッシブでもあり。

この荒っぽい文楽風の人形は、奴隷=アイーダと父のエチオピア王アモナスロだけで、彼らの分身というより、人形の方が主役で、歌手はその後ろに、黒子のように見え隠れして歌います。そのためか彼らの衣装は人形遣いと同じ。

私のオペラ通の友人は、醜い人形が目障りだと、見るのを止めてしまったと後で聞きました。オペラで肝心の歌手が人形の陰になってしまうのは本末転倒ですけど、私はどちらかというと気に入りました。人形遣いたちが素晴らしく、特に父がアイーダをなじり、もう私の娘ではないと激怒する場面は、感情がうまく表現され圧巻。因みに父王の人形は片手と下半身がありません。戦いで敗れ、全てを失った王の象徴のようで、説得力がありました。

photo by L'Opéra de Paris
しかしラダメスが愛のアリアを歌うのは人形のアイーダが相手で、これはとても滑稽で笑ってしまった。ラストに彼と一緒に死ぬのも人形で、これも不自然だけれど、クライマックスで音楽も歌も素晴らしく、周囲に死体に見立てた人形のボディーが散らばっているので、まあまあ許容範囲。

ロッテ・ド・ベールはアイーダの演出のメインテーマに、西洋の植民地主義批判を織り込みました。そのためアイーダ=奴隷の敵のエジプト軍は、帝政期のフランス軍にスイッチされてしまいました。植民地から略奪した珍しい品を見ようと、美術館に集まる着飾った欧州のブルジョア達・・ショーケースに陳列されたアイーダの人形・・そして普通ならばエジプト軍の勝利の行進がある長いオーケストラの部分に、いくつものフランス絵画の活人画が展開されます。よくできていてとても面白い活人画だけれど、色々盛り込みすぎの感じも・・ 素晴らしい音楽と、歌手の力量をたっぷり楽しめるよう、全体にもう少しシンプルにしてくれたらよかったと思います。若いド・ベール嬢の今後の活躍を楽しみにしましょう !!
All photos by L'Opéra de Paris

3/04/2021

続・隈健吾氏のギャラリー/ アンジェのカテドラルの修復

by Anger City

La protéction du portail de la cathédrale Saint-Maurice imaginée par Kengo Kuma II


アンジェのカテドラルの正面を保護するギャラリーの建設に、日本の建築家隈健吾氏が選ばれた事について、昨年10月にブログで取り上げました。デザインの写真が見つからなかったのは、私の探し方が悪かったようです。ちょっと遅いですけれど写真を追加しました。
文化省の評によると、≪ファサードとポリクロームを十分保護しながら、聖堂とハーモニーを持って融合し、町の景観にもマッチしており、私達の望んだ要求を完全に満たしている≫とのことです。
by Anger City
保護する本体が聖堂ですから、歴史や人々の信仰の年月の重みがありすぎて、現代人が自分勝手に簡単に手を加えられるような建築物ではないと思います。本当は、中世に作られたのと同じ、又はそれが不可能ならば類似の、職人が彫った石造りのギャラリーが一番いいのですが・・・それでも選ばれたのは、一応クラッシックを踏まえた良識的な選択ですね。突飛でアグレッシブな、変テコなデザインにならなくてよかった!
因みに、最終審査に残ったのは5社で、外の4社のデザインは以下でした。

atelier d'architecture Philippe Prost  by ministry of curture
Bernard Desmoulins   by ministry of curture
Pierre-Louis Faloci  by ministry of curture
agence Rudy Ricciotti  by ministry of curture
(真っ白でよく見えませんが・・)

隈健吾氏のギャラリー/ アンジェのカテドラルの修復