4/21/2020

ヘンデルのオラトリオ "サウル" /バリー・コスキーの演出


Oratorio de Haendel "Saül" avec mise en scène de Barrie Kosky

コロナウィルスが猛威をふるって劇場が全部クローズしてしまう前、ラストに見たオペラはシャトレ劇場1月の "サウル" でした。
オラトリオは普通コンサート形式なのですが、ドラマティックなストーリーがあるので、オペラ風な演出付きの公演もあります。今回のサウルもその一つ。しかも今ヨーロッパで一番引っ張りだこと言われるバリー・コスキーの演出で、イギリスのグラインドボーン音楽祭で2015年初演され、パリはこれが初演。

     by Théâtre du Châtelet
話には聞いていたけれど、正にその通り、コスキーの演出は幕が上がり一目見ただけで、ワーッと期待が湧く舞台です。上写真がファーストシーン。旧約聖書のサミュエル記、イスラエルの最初の王サウルの宮廷を、フランスのロココの宮廷に置き換え、色とりどりのサテンに身を包み、カツラを付け濃いお化粧の宮廷人達が、ゴリアテを倒したダビデを英雄として迎える場面から始まります。
舞台の真ん中にゴリアテの首がゴロンと置かれ、これに象徴されるような、奇妙な、または突飛で少々グロな演出。コスキーは "カメレオン" と呼ばれたり、"いったい素晴らしいと言うべきか、大嫌いだと言うべきか?" などと評されるのも、なるほどと思われます。

    by Théâtre du Châtelet
ダビデの勝利を素直に喜べないサウル。嫉妬心は際限なく膨らみ、王位を奪われるのではないかという恐れは、サウルを狂気に追い込みます。サウルの暗い心の動きに反して、ダビデを讃える蝶のようにヒラヒラと群がる宮廷人達の振る舞いは、お化粧の効果もあってエキセントリックで、どこか神経に触ります。平常に見える人はサウルの息子ヨナタン、娘のメラブとミカルのみ。英雄ダビデも、カウンタテナーの声と曖昧でホモセクシャルな行動が、やはり少々危ない感じ。それ以上やったらイヤミになる、悪趣味と紙一重というギリギリの辺りで漂う舞台。
後半はサウルの狂気の場面が長く、舞台は一転して白黒のモノトーン。サウル役クリストファー・パーヴェスはホントにすごい人で、迫真の演技。声も歌も大好きな歌手です。
                                     by Théâtre du Châtelet
最初の宮廷のシーンは、花やドレスで一見華やかそうに見えても、バックは黒一色、テーブルの上の花も白鳥も(昔白鳥は宴席のご馳走だった)ウソの飾り物っぽい。一方サウルの狂気の後半は、黒白だけのシンプルな舞台に変わります。体を掻きむしり、痴ほう症のようになるサウルは。少々やりすぎという気もしましたが、これもエキセントリック。
英語のせいか、シェークスピア劇、オセロの嫉妬、リヤ王の狂気、マクベスの葛藤等のイメージが浮かびました。
余りにも有名なレンブラントのサウルとダビデ。ダビデの琴に感動して涙をカーテンで拭うサウル。しかし彼のもう一方の目は泣かずに、どこか宙を見据えている。手にしているのは槍だそうで、彼の殺意の象徴でしょうか。弟子の作品ではという疑いが持たれて、何年もの研究の末、めでたく本物と判定が出たという曰く付きの、デンハーグ、マウリチウス美術館の宝物です。
シャトレ劇場は長い修復工事が終わり、昨年秋に再オープンしたばかりです。

Théâtre du Châtelet    2 Rue Edouard Colonne 2e 

ファルスタッフ/ エクスアンプロヴァンス音楽祭

4/08/2020

女王の館、パヴィヨン・ド・ラ・レーヌでカフェ


Le Pavillon de la Reine

マレ地区の中心にあるヴォージュ広場は、17世紀初めに作られた、パリに残る最も古い広場です。アーケードのある当時の建物に四方を囲まれた正方形の広場。17世紀からほとんどそっくりそのままの状態で残っています。
南北の辺の中央に、それぞれ王の館、女王の館と名付けられた一際高い建物があり、この女王の館 のすぐ後ろにあるのが、五つ星のホテル Pavillon de la Raine パヴィヨン・ド・ラ・レーヌ(女王の館)。今日はそのホテルのカフェのお話しです。


コロナウィルスがパリにも広がり、外出自粛を奨励していた週に、どうしても必要な用事があって、友人とヴォージュ広場近くで待ち合わせました。できるだけ混んでいないカフェ、と選んだのがこの女王の館です。自粛といってもまだまだ普通のカフェは人が多かった頃、リッチな観光客がみなキャンセルしてしまったのでしょう、思った通りここはガラ空きで、私達は下写真の広いカフェスペースを独占することができました。下左の写真の扉の奧が、フロントを隔ててレストランです。

お天気がよければ、普段は人で一杯になる中庭のテーブル。
中庭を通ってアーチをくぐると・・・
ヴォージュ広場のアーケードに出ます。

インテリアは型にはまりすぎで無個性、ちょっとばかりつまらないけれど、コロナのせいでとても静か、大きなソファーにゆったり座れて最高でした。エスプレッソだけなら5€です。
因みにその翌日には、許可のある食品店を除いて全てのショップがクローズし、外出禁止令が出されてしまいました・・・

Le Pvillon de la Reine   28 Pl. des Vosges 3e