7/19/2019

アレックス・カッツの水連


Alex Katz, Les Nenphéas

アメリカの画家アレックス・カッツというと、アンディー・ウォーホールやホックニーをちょぴり思い浮かべる、ポップアート/イラスト的な人物画で有名ですね。その彼が自然の植物を描いた作品が、オランジュリー美術館に展示されています。モネの水連のオマージュともいえる、植物と水の小品がとてもステキ! 人物画の方は個人的にあまり好みではないので、嬉しい驚きでした。

   


シンプルの極み、単純な色使いとフォルム、思いっきりデザイン化されて、とても小さい作品なのに、詩情あふれる水辺の植物、微かな光、水面に移る影・・・

Alex Katz, Hommage to Monet, Misée de L'Orangerie, Jardin des Tuileries 1e
9月2日まで

7/12/2019

サラ・ラヴォワンヌのパッシー店


Maison Sarha Lavoine

今 "イギリス風肘掛け椅子" とこちらで呼ばれる大型の椅子を修理中です。そろそろ下地ができあがるので、椅子直しで一番楽しい仕事=表に張るファブリック探しを始めました。手間暇かけて椅子を直す大きな理由の一つは、お店では見つからない椅子を作れること。ベージュ、チャコールグレイなど無難なファブリックでは、完成品を買ってしまった方がよほど時間とエネルギーの節約になります。どんなファブリックにするか? メゾン・サラ・ラヴォワンヌなら、何か素晴らしいアイデアがありそう・・


独特のブルー/グリーン、深みのある濃いネイビー/、グレイ・ブルーと、目を奪われるようなマスタード、優しいペイル・ピンク、アクセントのブラック・・お店にあるファニチャーは、サンプルから選んだ好みの布で張ってもらうことが可能、また嬉しいことにファブリックだけ独立して買うこともできるそうです。
    
パッシー店は、元工場かアトリエだったらしい中庭のロフト。キャッシャー横のスペースがカフェになっています。お天気がよければ中庭に椅子が出され、カフェのテラスに。

Maison Sarha Lavoine,   25 rue de l’Annonciation 16e

7/02/2019

世にも不思議な美術遺産COARC


Extraordinaire histoire des statues de Paris

上写真は、セーヌ河岸に立つコンドルセの像。コンドルセは革命中に捕えられ、獄中で自殺した数学者であり政治家、啓蒙思想家ですが、ここでお話ししたいのは銅像自体。1894年にコンチ河岸19番地に設置され、しかし1941年ナチ占領下のヴィシー政権で、ナチに嫌われたのか、武器用の金属として溶かされてしまいました。それが50年後の1991年に、全く同じ像が元の場所に甦ったのです。なぜ同じ像が再生できたのかというと、この銅像の石膏の鋳型が、COARC/ パリの街角や公園にある像の保存と修復に従事するチームによって、パリ市の倉庫に保管されていたため。


19世紀後半頃に大彫像ブームが起こり、パリの街角や公園に沢山の像が設置されたそうです。しかしそれらの像を作る過程の石膏の習作や鋳型は、大理石像や銅像が完成すると始末され、長い間その価値が認められていませんでした。しかし一部(それでも何千という数)壊されずにゴミ箱行を免れた石膏たちが保存されていて、写真はこの非公開の倉庫があるイヴェントで特別オープンされた時の記事。偶然図書館で見たものでうっかり雑誌名はメモし忘れましたが。
正に宝の山ですね。ざっと見た感じ当時の好みを反映してか、ちょっとセンチメンタルというか迫力に欠ける感じがしますが・・今では作品の行程としての習作や鋳型の価値が見直されています。コンドルセの像のように、完成品が失われてしまった物も沢山あるのですから。
倉庫の場所は保安上の理由で秘密だとか・・宗教/非宗教、現実/神話、有名/無名のあらゆる人物、動物、巨大な石膏の像が、古びて黒ずみ、顔や手足が欠けたもの、木枠や梱包されたまま並んでいる様も、なにやら神秘的ですね。
現在、時々特別に公開されるのみ。修復が進んで、いつか文化財の日に一般公開してほしいもの・・・