7/02/2019

世にも不思議な美術遺産COARC


Extraordinaire histoire des statues de Paris

上写真は、セーヌ河岸に立つコンドルセの像。コンドルセは革命中に捕えられ、獄中で自殺した数学者であり政治家、啓蒙思想家ですが、ここでお話ししたいのは銅像自体。1894年にコンチ河岸19番地に設置され、しかし1941年ナチ占領下のヴィシー政権で、ナチに嫌われたのか、武器用の金属として溶かされてしまいました。それが50年後の1991年に、全く同じ像が元の場所に甦ったのです。なぜ同じ像が再生できたのかというと、この銅像の石膏の鋳型が、COARC/ パリの街角や公園にある像の保存と修復に従事するチームによって、パリ市の倉庫に保管されていたため。


19世紀後半頃に大彫像ブームが起こり、パリの街角や公園に沢山の像が設置されたそうです。しかしそれらの像を作る過程の石膏の習作や鋳型は、大理石像や銅像が完成すると始末され、長い間その価値が認められていませんでした。しかし一部(それでも何千という数)壊されずにゴミ箱行を免れた石膏たちが保存されていて、写真はこの非公開の倉庫があるイヴェントで特別オープンされた時の記事。偶然図書館で見たものでうっかり雑誌名はメモし忘れましたが。
正に宝の山ですね。ざっと見た感じ当時の好みを反映してか、ちょっとセンチメンタルというか迫力に欠ける感じがしますが・・今では作品の行程としての習作や鋳型の価値が見直されています。コンドルセの像のように、完成品が失われてしまった物も沢山あるのですから。
倉庫の場所は保安上の理由で秘密だとか・・宗教/非宗教、現実/神話、有名/無名のあらゆる人物、動物、巨大な石膏の像が、古びて黒ずみ、顔や手足が欠けたもの、木枠や梱包されたまま並んでいる様も、なにやら神秘的ですね。
現在、時々特別に公開されるのみ。修復が進んで、いつか文化財の日に一般公開してほしいもの・・・

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