12/20/2019

ジェフ・クーンズのチューリップ


Le bouquet de tulipes de Jeff Koons

今パリは年金制度の改革反対運動の大ストライキの真っただ中。特に交通機関がマヒ状態で、パリジャンは歩け歩けの毎日です。それで先日歩いていた時、かの有名なジェフ・クーンズのチューリップに遭遇しました。

このチューリップはアメリカの "アーティスト" ジェフ・クーンズからパリ市へのプレゼント。2015年の連続テロの犠牲者へのオマージュ、アメリカの自由の女神の聖火を持つ手を模った云々と、NO と言いにくい理由付きです。贈られたのは製作の権利だけで、パリ市は美術愛好家の出資を募ってバカでかいので膨大な製作費を捻出しなければならず、パリの美観を損ねると心ある人々の大反対運動(当然だ!)の甲斐も無く、この秋めでたくシャンゼリゼ脇に設置されたもの。クーンズは芸術家でなくて辣腕ビジネスマンですね。彼にとっては褒められてもけなされても宣伝になるし、パリの要地に半永久的に作品を飾ってもらえるのですから、制作権など安い物です。設置してすぐ落書きされたそうですが、それを消したのも今後の維持費も、市民の税金が使われるのです。因みに初めは近代美術館とパレ・ド・トーキョウ(現代アートの美術館)の間の目立つ正面広場に設置される予定だったのが、結局シャンゼリゼ脇といっても外れの、プチパレ裏の木立の間に落ち着きました。シャンゼリゼ側からはよく見えず、セーヌ側も広い自動車道路で人通りが少ない都合のいい場所。私もストでなかったら絶対歩かない場所でした。

芸術作品とは美しく心地よい物ばかりでなく、醜悪、奇妙、恐ろしい作品もありますね。また美しいという定義も個人的で、人によって様々です。ムズカシーイ問題ですけれど、芸術作品とは何かザクッと簡単に考えると、好き嫌いとは別に、人の心に強く訴えかける力のある物が真の芸術ではないかと・・・例えば今ポンピドーセンターで展覧会中のフランシス・ベーコン。見ず嫌いはよくないとしっかり見てきましたが、やっぱり大の付く嫌いな絵だけれど、ショックを受け、画家の苦悶か葛藤が伝わってこちらまで息苦しくなるような作品でした。
何百万の高値がつけばイコール芸術とは言えないし、見ても何も感じない、遊園地に飾った方がいい作品もあるのです。

12/11/2019

ベルナルダン僧院のインスタレーション



L'installation au Collège des Bernardins/ Il est plus beau d'éclairer que de briller seulement

"光を与える方が、一人で光っているより美しい" うまく訳せないのですが、これがこのインスタレーションのタイトル。場所にマッチしてトマス・アクィナスの言葉だそうです。このコレージュ・デ・ベルナルダンはソルボンヌのすぐ側にあり、いってみれば昔々のソルボンヌの分校の一つ、中世の僧たちが集まり学問をした場所でした。当時の学問とは古い教えを伝達し、教える者と教えられる者が意見を戦わせて習得してゆくものでした(現代だって学問とはそうあるべき)。芸術もそれと同じく、教師と生徒が、伝達しつつ個性のぶつかり合いで相互発展してゆくもの、という発想から実現したインスタレーションで、ボザールの教師とその元生徒2名の作品だそうです。


このように精神的な説明はパンフレットがあったので理解できましたが、作品自体の説明は全く無しです。鑑賞者は自分の目て見た物、自分の感性で作品を受け止めなさいということでしょう。これも一種の伝達かも。余計な説明をして、無理に作品の素晴らしさを押し売りしなくてもいいのです。見た人が作品を嫌うのも批判も自由。こんなマイナーな場所で特殊な展示、ストライキ中でもあるのに、それでもぽつぽつビジターがいて、皆熱心に僧院の建築とインスタレーションを鑑賞していました。


私には作品の意味は最後までナゾ。でもそんなことはどうでもいい、作品の新と僧院の旧が混然とミックスして美しかったのが印象的でした。

Collège des Bernardins   20 rue de Poissy https://www.collegedesbernardins.fr/
以前の関連ブログ: 僧院カフェ、ラ・ターブル・デ・ベルナルダン