4/27/2015

蘇った王立病院/ ヴェルサイユ


Espace Richaud/ L'hôpital royal classé du XVIIIe siècle réhabilité à Versailles

ヴェルサイユの元王立病院が、カルチャーセンターやショップが集まった新しい空間として再オープンしました。
この病院のルーツは、ルイ14世が作り尼僧たちが運営していた貧民救済の家で、1781~1859年の長い月日をかけて建築、増築されたもの。1980年代に病院が移転するまでは、リショー病院と呼ばれ親しまれましたが、以後裁判所に改築するという計画もあったのに、建築上の問題(恐らく経済的な理由も)で立ち消えに。建物は荒れ放題になり、また3度の火災では大きなダメージを受けて放置されていました。
ヴェルサイユに3つある駅の1つと、名物の常設の大食料品市場の間に位置し、骨董品街も近いという素晴らしい立地条件なのに、28,000㎡の土地が30年近くほっておかれたとは、日本では考えられないのでは?歴史的建造物に指定されていたためと、市としてはもとより破壊は問題外で、改装保存を望みながらも、出資者がいないという状況だったようです。大改装は市長の要請で、建築家ジャンミッシェル・ウィルモットが乗り出し(彼が出資者も見つけた)、2009年から5年の年月をかけて完成しました。

上の模型で全容がよくわかりますが、ドームの下のチャペルを中心に、前庭、中庭を囲んだ建物と、右上の奥の2ブロックの建物で構成されています。66の高級アパート、賃貸料を低く設定した91の低所得者及び学生向けアパート、5つの店舗、オフィス、保育園、カルチャーセンター、そして10,000㎡の庭は公園です。中庭は3方に、前庭は正面に出入り口があり、誰でも自由に入ることができます。
前庭から見たチャペルの正面
中庭から見たチャペル
中庭から見た後方出口
中庭は建物に囲まれているので、街の雑踏が聞こえずとても静か。ルイ14世のお膝元ですから、もちろんジオメトリーのフランス庭園。きっちり正確に並んだ植物は、植えられたばかりでまだ殺風景な印象でも、果樹(リンゴかナシ?)が殆どなので、何年か後には、花の季節はペールピンクの幾何学模様になることでしょう。


圧巻はチャペルで、宗教的な飾りは全くなく、巨大なドームには、円柱と、美しい白黒大理石の床(トップ写真参照)、2階を囲むギャラリーなど、カルチャーセンターの要の部分。ここでの展覧会もいいし、室内楽のコンサートや劇などやっても素敵そうです。
カルチャーセンターは病院の名前をとってエスパス・リショー。町の人達が、綺麗になったね、などど言いながら沢山来ていました。今ヴェルサイユの最近の修復や建設に関する資料を展示中。エスパス・リショーの修復の様子をヴィデオで見ることができ、修復が、破壊して新建築を建てるのに比べて、どれだけ大変な作業であるかがわかります。

外側は上階に住居、1階が店舗。まだ空なのでちょっと寂しい雰囲気です。


ヴェルサイユは世界中からツーリストの集まる大観光地。デラックスホテルやショッピングセンターに改装するのであれば、とっくの昔にプロモーターが投資したはずです。一握りのリッチな観光客の為に、市民の財産である文化財を閉鎖的な物にしたり、世界中のどこにでもあるようなレストランやファッション・ブティックで一杯にしてしまわなかったのは、素晴らしい選択だと思います。そういえば郊外線RERの駅近くに少しある以外、ヴェルサイユには、観光客目当ての土産物屋やファーストフードをあまり見かけないし(私がそれらしき所は避けて歩いているせい・・?)、団体用の近代ホテルが立ち並んでもいず、おっとりした昔の小都市の風情を保っています。市は、目先の儲けに走らずに歴史の遺産を大切にすることが、ヴェルサイユをますます繁栄させることを知っているのでしょう。政策が変わらないことを願うばかりです。
ジャンミッシェル・ウィルモットは、インターナショナルに活躍するフランスの建築家で、日本では渋谷の文化村のデザインを担当しました。パリではラスパイユ通りの伝統あるホテル、リュテチアの改装工事が現在進行中です。

Espace Richaud     78 Bd.de la Reine, Versailles

4/22/2015

ガエ・オーレンティのランプ、ピピストレッロ


Lampe Pipistrello a 50 ans

BHVマレのショーウインドーに、今年で50才を迎えたランプ、ピピストレッロが飾ってありました。
イタリアのインテリアデザイナーであり建築家のGaetana Aulentiガエタナ・オーレンティ(ガエ・オーレンティと呼ばれた、女性)が、1965年にタイプライターのオリヴェッティ社のパリ・ショールーム用にデザインしたもの。目まぐるしくトレンドが変わり飽きられる世の中で、半世紀の間売れ続け、しかもここ数年フランスでは、毎年1万点の売り上げがあるというスーパーデザイン。ニューヨークのMoMa、パリのポンピドーセンター、ドイツのヴィトラなど、最高の美術館に展示されているミュジアム・アイテムでもあります。


ピピストレッロという面白い名前は、イタリア語でコウモリ(バットマンのコウモリ!)のこと。ランプシェードの形から名付けられたようで、なるほどコウモリの羽を広げたようでもあり、けれど全体的にはマッシュルーム的な親しみあるフォルム。
卓上用の小型と、床における大型の2種あり、どちらも首の部分が望遠鏡式に伸び縮みするので、高さの調節が可能。大型は首を延ばすと80㎝以上になり、かなりインパクトのあるインテリアデコレーションに。近代家具は勿論のこと、アンティーク家具とのコーディネーションもいけそうです。
因みにガエ・オーレンティは、元鉄道の駅をオルセー美術館にリノヴェーションした建築家としても、パリに馴染みがあります。

4/16/2015

フィン・ユールのペイリカン・チェアー


Le Pelican de Finn Juhl fête 75 ans

アルヌ・ヤコブセン、ハンス・ウエグナーと並んで、40-60年デンマークのインテリアデザインの黄金期を代表するデザイナー、フィン・ユールの“ペリカン”は、1940年に発表されたので、今年で75才。今オ・ボンマルシェで、同じくミッドセンチュリーのデンマークのアーティスト、Asger Jornアスグ・ヨーンのデッサンしたファブリックで、全く新しいムードにお化粧直しして販売中。
ペリカンのような、それともゾウの耳のような、愛嬌たっぷりででエルゴノミックなフォルムのこの肘掛椅子は、体にピタリフィットして座り心地最高。クッションの部分だけブラックの無地に代えたり、カラフルな色とミックスしたりと、色々なバリエーションが注文できるそうです。


4/13/2015

ホワイト板チョコ、トップ5

ヴァローナのラズベリー入りホワイトチョコレート
Le chocolat blanc top 5

今密かにホワイトチョコレートがブームです。
チョコレートの王道はビターのブラックチョコレートのみというフランスでは、ずっとず~っと長い間、ホワイトチョコレートはお菓子の飾り専門の“子供だまし”と軽く見られていました。ところが最近、ラ・パティスリー・デ・レーヴのスーパーシェフ、フィリップ・コンティシーニが、ホワイトチョコレートのミニ板チョコシリーズを発表するなど、皆がホワイトに注目しています。本物のチョコレートではないと断固拒否の純粋主義者ジャンポール・エヴァン、お菓子には少しずつ使い始めた慎重派のピエール・エルメなど、シェフの間でも意見はまちまちのようですが、確実にチョコレートの棚には、ホワイトが目立つようになってきました。
実は私は元から、ミルクチョコレートはダメで、ブラックかホワイトならどちらも、という愛好者。ブラックの重厚さにはない、なんとなく昔風のあのやさしい甘さが好きなので、このホワイトチョコのブームは大歓迎。チョコレートメーカーValrhonaヴァルロナ(日本ではヴァローナと発音されている)は、定番のホワイト板チョコIvoireイヴォワールに加えて、最近もっと甘みを控えたOpalysオパリスや、ラズベリー入り(最高!)などのバリエーションを売り出しています。


以下は、エクスプレス誌による“私の好きなホワイト板チョコ”より
ラ・パティスリー・デ・レーヴのミニ板チョコ10種のセット 69€
ネッスルのGalak 200g 2.40€
ヴァローナのラズベリー入りイヴォワール85g 4.20€、オパリス70g 4€、デュルセー250g 7€
リンツのブラン・エクストラ 100g 1.60€
セバスチャン・ゴダールのイヴォワール・ココ・サブレ80g 6.50€

4/07/2015

マリオン・ルザージュのカプセル・コレクション


Marion Lesage pop-up store by Monoprix

絵に、彫刻にとマルチ・アーティストのマリオン・ルザージュが、モノプリの春のカプセルコレクションを発表。そのお披露目に、店頭販売に先駆けてイースターの週末から、マレのロワ・ド・シシール通りにポップアップストアーをオープンしています。
旅好きのマリオンが、アジアやアフリカからインスピレーションを受けたモチーフは、しかしストレートなエスニックに走らず、ホワイト、ブラック、レッドをベースに、直線や円、植物、飛ぶ鳥など、スカンジナビアのデザインとも共通する、ナチュラルで楽しいもの。彼女の絵や彫刻のミニ・ギャラリーやお茶の試飲コーナー、型押しプリントでオリジナルのナプキンを作る実習などもあります。
 


Pop-up store Marion Lesage    23 rue du Roi de Sicile 4e ポップアップは4月12日まで、以後はモノプリの店頭で

4/05/2015

ポーズカフェ

Pause-café
Happy Easter
Joyeuses Pâques
森で野生の水仙の群生を見つけました! 一面に星が降ったようで、しばし陶酔の時間・・

4/02/2015

舞台のコスチュームのお話し


Formation de costumier de spectacle

上の写真は、最近見た舞台衣装の中でも一番くらいに好きだったもので、マスネーのオペラ、マノンの有名なサン・シュルピスのシーン。マノンに裏切られて聖職に就こうとしている恋人に、許してちょうだいとありったけの手練手管で訴える場面で、場所は教会の中、男は聖職者の黒服、それなのにマノンはペチコートと極端に高く結った髪のアンバランス。このようなドレスを本当にマノンが着ていたはずはないのに、それは問題でなく、このコスチュームはマノンの遊び好きな本性を表しているのだと思います。パトリシア・プティボン(カルメル派修道女の対話の主役ブランシュをやって大好評だった)は私の大好きな個性的なソプラノで、この衣装のムードにぴったりマッチし、とろけるように魅力的な声で、可愛い女を演じて最高でした。
オペラコミック座の創立300周年記念のプログラムで、ビゼーのカルメン、オッフェンバックのホフマン物語、ドビュッシーのペレアスとメリザンドなど、この劇場で初演され大ヒットした数々のオペラの名場面を、年代順に紹介したもの。演じる歌手も沢山のスターが集まり豪華な企画でしたが、これは中でもピカ一のパフォーマンスで、コスチュームが光っていました。



この写真は、ロアルド・ダール作“ジェームズとジャイアント・ピーチ”(日本題は“お化け桃の冒険”)の劇のコスチューム。このお話しを知らない人でも、
ティム・バートンが映画化した“チャーリーとチョコレート工場”と同じ作家の作と言えば、だいたい想像がつくのでは? 愉快で突飛な、ファンタジーで一杯のお話しのコスチュームですから、チュールのフリルの間に、本物のリンゴなどが縫い込まれた楽しいもの。アトリエ、タバルミュックの作品です。
このアトリエは、劇、オペラ、映画、テレビなどのコスチュームを作りながら、後世にこの技術を伝えるべく、2年間の舞台衣装職人の養成講座も開いています。



1年めは古典衣装の製作を習得し、2年目は習得した技術をベースに、個性的なクリエーションを勉強します。生徒の条件はバカロレアを取得している事と、ある程度のデッサン力、普通の服のカットと縫製を習得している事。



しかしクラッシックなコスチュームさえ縫えればこの仕事ができるかというと、そうでもなく、最終的にはその人の人格がキーポイントだとか。つまり技術だけでは、ファンタジーある作品は作れないのですね。それと情熱。ある日ホテル・リッツのお抱え仕立て職人だったという人が、解雇されたのを機会に、以前から興味のあった舞台衣装を作りたいと言ってきたのだそうです。彼には何も教える事はなかった、何でも自分で覚えて、62歳で素晴らしいコスチューム師として再出発したとのお話し。だから講習のパンフレットには、18~62歳までと書いてあるけれど、学校を出たばかりのヤングにはなかなか難しいとのこと。

衣装には数時間でできるものから、1日約8時間の仕事で、3週間以上かかるような大作まで。演出家の出すテーマに従ってバリエーションを沢山作り、その中から、これはOKこれはダメと、演出家がセレクションするものや、全く最初からこちらの好きに作る白紙委任など、色々なケースがあるようです。講習といっても、実地にやりながら覚えるので、1階と地下の狭いスペースで、生徒さんもベテランも一緒の仕事場。仕事が限りなくある職種ではないため、やたらに失業者を増やすことはできないので、沢山生徒は取らないとのお話しでした。
Tabarmukk   58 rue Didot 14e