4/30/2019

マダム・キュリーの家とパンテオン裏の学校建築

   
Jardin de Mme Curie/ derrière Panthéon

パリの5区の地図を見ると、パリ大学第3(理工学系)、ヴァルドグラース病院、植物園(自然科学系)がかなり大きなスペースを占め、その周りにはXXエコール、XXインスティテュートといった研究所や学校が沢山集まり、おまけに優秀な事で有名なリセが2つもあるのが目につきます。世界各国から学問をするために僧侶が集まった、中世のカルチェラタンの頃からの名残でしょうか・・特にパンテオンの裏というか北側に当たる静かな地区は、サイエンス系の錚々たる学院が並び、その中心にインスティテュート・キュリー、キュリー夫人の研究室があります。 
個人的な物は夫ピエールの写真だけの、男性的とも言える書斎
この研究所はピエール・キュリーの死の直後、癌治療の研究をもっと促進するために建てられたもので、パスツール研究所もこの学院に参加しています。いくつもの建物が集まってキャンパスを構成している内の、一番古くキュリー夫人が実際に住み研究した小さな建物が、キュリー博物館として一般に公開され、書斎と実験室、彼らゆかりの品を見ることができます。
マリー・キュリーの研究室からパスツール研究室に続く中庭は、バラや緑に囲まれた静かなオアシスです。ブログのトップの写真は、研究室からこの中庭に下りるテラスの手すりにもたれて、窓を背に、こうして庭を眺めていたキュリー夫人の写真。写真とジャスト同じ場所に飾ってあったもので素敵なアイデアですね。彼女が植えた花ではないのでしょうが、それでも殺風景な書斎や研究室の後この緑の小さな庭を見ると、ほっとさせられます。
 

 キュリー研究所の周りは、科学/化学/生物学/鉱業/工業のフランスの最高学府が集まっていて、それらの建物がちょうど工業の発達した19世紀末~20世紀初頭に建てられたために、エッフェル以後のアールデコの建物の宝庫になっています。

    
     
レンガ、モザイク、セメント、メタル使い。学校や研究所の名前は、アールデコのインダストリー風な字体なのが面白い! 
     
    


Musée Curie       1 rue Pierre et Marie Curie 5e 開館時間が限られているので確認してから行きましょう。無料

4/17/2019

タダエスロパック・ギャラリー/ パンタン散歩


Galerie Thaddaeus Ropac/ Promenade à Pantin

パリ市内が飽和状態で地価が高い事、加えて郊外には旧工場や倉庫など、現代のテイストにマッチしたスケールの大きいロフト的なスペースが沢山残っている事などから、郊外にブランシェ地域がサテライトのように広がっています。パリを囲む環状道路のすぐ外側に位置するパンタンもその一つ。セーヌから遡るサンマルタン運河沿いに遊歩道ができ、ビレット公園、科学博物館、フィルハーモニー・ド・パリも近いので、ボボやヒップスターの住人が増えています。
そのパンタンの発展に大いに貢献したのがタダエス・ロパック・ギャラリー。近代アートの一人者であるタダエス・ロパックが、2012年、国道や線路が交差する殺風景なパンタンに、北マレに次ぐ彼の3店舗目の画廊をオープンし大成功させたのですから。
元工場を改装したこのギャラリーは、総面積4,700㎡ 、展示面積2,000㎡と、ただの画廊と言うよりアートセンター。益々巨大化しているコンテンポラリーアートの作品の展示にぴったり。
今展示しているのは "Monumental Minimal" モニュマンタル・ミニマル展。ミニマルアートは60年代にアメリカで始まった運動で、余計な物を一切取り去り、作品は究極の骨組みだけ。四角、三角などのジオメトリックでシンプルなフォルムと、単純なカラー使いが特徴です。そのモニュマンタル巨大版。
展示は大きく単純過ぎてあまり私の好みではなかったのですが、この2色使いの台形シリーズ(特にオレンジXグレーの組み合わせ)はなかなか良かった。よく見ると、上から鉛筆で2つの楕円が画かれています。

工場の外観をそのまま残したギャラリー。広い庭の中の別棟には、カフェ・ブルーが・・
  • Galerie Thaddaeus Ropac     69 Avenue du Général Leclerc  93500 Pantin

4/06/2019

ブルレック兄弟のクリスタルの噴水がシャンゼリゼに!


Les fontaines de frère Bouroullec au Rond Point des Champs Elyssées

先日ブルレック兄弟の個展について書いたばかりですが、もう一つニュースです。ロンポワン・デ・シャンゼリゼに、彼らのデザインした噴水が設置されました。
ロンポワンはシャンゼリゼ通りの中ほどある放射状の広場。19世紀初頭、この広場の真ん中に噴水が作られたそうですが、交通の邪魔になったので早々に取り壊され、広場を囲む6つの噴水が誕生しました。それ以後3、4回噴水のモデルが変わり、30-50年代末にはルネ・ラリックがデザインしたイルミネーション付きガラスの美しい噴水もあったそう(モノクロ写真を見ましたが、ホントにエレガントな美しさ!)。しかし最期のMax Ingrandの噴水が壊れてから、ずっと噴水は止まったままでした。

新しいブルレック兄弟の噴水は、中心の13mのブロンズの帆柱を軸として、クリスタルの3本の腕がごくゆっくり回りながら、水は下から吹き上げるのでなく、上から下に流すもの。このクリスタルは3200個の輪。ブルレック兄弟によると、モニュマンタルでありながら軽くデリケートなデザインにしたかったとのこと。
しかし問題は、噴水としてはかなりユニークなフォルム。またしても "なんて醜い"  "いや斬新でモダンだ"  と賛否両論で新聞を賑わせました。

広いスペースの広場ではあるけれど、細い直線の組み合わせから成るこの噴水は、あまりインパクトがあるとは言えないし、普通の噴き上げるタイプの噴水の派手さもありません。特に昼間は周りの建物や並木、人や自動車の往来の中で、ちょっぴり存在感が薄いかも・・・しかし夜は、この通り、クリスタルの美しさが存分に発揮されます。
 

エッフェル塔も、建設当時は醜悪だ壊してしまえと非難を浴びました。ポンピドーセンター、ルーブルのピラミッド、バスチーユのオペラ座などもみな同じ運命だったけれど、今ではパリに欠かせないランドマーク。ブルレック兄弟の噴水も、10年すればシャンゼリゼに欠かせないイルミネーションになるのではないかしら?