9/30/2017

カミーユ・クローデル


Camille Claudel/ Nogent-sur-Seine


踊っているのか、恍惚と二人だけの世界に漂う男女の像、何もコメントなど必要ない、人の心にストレートに訴えかけるこの作品は、カミーユ・クローデルの傑作。彼女が少女期を過ごしたノージャン・スル・セーヌNogent-sur-Seineの町に、今年の3月にオープンしたばかりのカミーユ・クローデル美術館にあります。

この美術館がオープンした時は、Cクローデルがやっと偉大な芸術家として正当な扱いを受けたとメディアで大きな話題でした。なにしろ70年代までは二束三文の価値しかなかった彼女の作品が、やっと日の目を見たのが80年代、彼女の伝記小説がベストセラーになり、88年イザベル・アジャーニ主演の映画の大ヒットが決定的でした。けれどもこの美術館が今年できるまでは、それからまた30年の年月が経っているのです。


ロダンの弟子、アシスタント、ミューズ、愛人、ライバル、そして色々な意味で彼の ″気狂い女une folle″ と、ロダンに従属する名前でしか呼ばれなかった女性、炎のような個性、才能、嫉妬、そして30年もの間精神病院に隔離され亡くなった狂気・・・

ノージャンには昔彫刻のアトリエがあり、当時有名だったアルフレッド・ブーシェが少女カミーユの才能を認め、その道に進むように勧めたそうです。初期にカミーユが影響を受けたノージャンの先輩、先生達の彫刻がRoom 1に集まっているのですが、全く古典的というか伝統的。次にカミーユの作品の部屋に移ると、その斬新でアヴァンギャルドな躍動する彫刻はちょっとしたショックを感じるくらい。


実は私はCクローデルの小説も映画も見ていません。そのため彼女の事をよく知らずに鑑賞したのですが、痛々しいくらい何かを求め続け、苦悶し、得られなかった人だと痛感しました。でも嫉妬や狂気は全く感じません。美術館が安易なセンセーショナリズムで狂気を売り物にせず、淡々と静かに展示しているお陰かもしれません。上の少女の像3つ、ある城主の娘がモデルなのですが、この訴えかけるひたむきな目は、カミーユ自身のものではないか?
4才年下でとても仲のよかった弟ポール・クローデルの像。外交官としてアジアの滞在が長く、姉をバックアップする時間がなかったのか?? 作家としても成功した彼、苦しむ姉を助けてあげることはできなかったのか?
カミーユ作のロダンの像

こちらはロダン作のカミーユの像。二人とも真の芸術家だから、見たままをただ映すだけでなく、相手の心や自分の心が作品に反映されます。エゴが強そうで力に満ち、敵を叩き潰すことのできる、しかしとても魅力的な壮年の男の像と、うつむき、何かをじっと考え込んでいる、悲しそうな田舎の小娘の像・・・
ロダンの目には、本当にカミーユはこの像のように見えたのか? 彼女は内にある炎を表に見せない人だったのか? それとも彼女の才能と燃えるような性格を知りすぎていたからこそ、逆に、もしかすると我知らず、ロダンはこのような像を作ってしまったのか? 
さっきから私の??の疑問については、映画や本に答えが出ているのかもしれません。でも映画も本も作者の解釈したCクローデル像なので、疑問は??のままで残しておこうかと思っています。しかし、この2つの像を見る限り、二人の勝負の結果はおのずと明らかな気がしました。


これはオルセー美術館に大きな像の展示されている作品の、習作と5-60cmの小型版。去てゆく、または連れ去られる男の後を追い、懇願する女性・・彼女の叫びが聞こえてくるような作品。

暖炉に寄り掛かる女性、ほんの15cmくらいの小型の像。力尽き物思いに沈む彼女自身?
女性だったからか、ロダンの真似だとしか評価されなかったためか、注文が少なかった事と、自分自身で作品や習作を壊してしまった事などから、彼女自身の作品が少ないのが少々物足りなく残念です。
             

ノージャン・スル・セーヌの町は古い交通の要地でしたが、中心にまだハーフティンバーの建物が少々とカテドラルの残る外は、あまり特色のない落ち着いた小都市。セーヌ岸のハイキングコースが美しそうですが、時間がなくて断念しました。
パリから電車が少ないので時刻表をよく確かめる事。均一料金5ゾーン外です。

Musée Camille Claudel    10 rue Gustave Flaubert, 10400 Nogent-sur-Seine 

9/19/2017

ロヴェール・マレ=ステヴァンス、カヴロワ邸2階、リール No.4 


Villa Cavrois/ visite du 1e étage + terrasse + sous-sol

またカヴロワ邸!・・でもこれが最後、今日は2階と地下です。
子供が7人いたので、大きい子2人の寝室が1階にありましたが、本来1階はお客様も来るパブリックスペース、そして2階は主寝室と子供部屋のオール・プライベートスペースです。
2階見取り図
不思議なのはこの見取り図の⑪で、パンフレットの説明では遊戯室。でもここはサロンの吹き抜けになっていて、ここから下のサロンを写真に撮れました。遊戯室は廊下横の細長い北側の部屋で、⑪の場所を間違えて印刷したのでしょうか。⑨a主寝室のバスルーム ⑨b主寝室 ⑨c夫人のブードア 反対側の並び全部⑩子供の寝室とバスルーム。図はないけれど、3階に子供の遊戯室、学習室、テラスがあります。

ホワイトのファブリックとダークブラウンの木材を使った、渋い装飾の主寝室。シャープな直線と角の美しさが最大に引き出されたインテリア。長方形の窓を通して入る光の影まで、絨毯の上にくっきりと直線を描きます。
下は、広すぎるせいか、大理石とメタルで冷たい感じがする、驚くほどコンテンポラリーな主寝室用バスルーム。ル・コルビュジエのヴィラ・サヴォワと同じで、当時新しい風潮だった衛生管理に重点を置くあまり、バスルームが寝室と同じ大きさで装飾も豪華、裏方でなく家のメインとして堂々たるもの。白いドットの厚い上質のカーペットが、ちょっとかわいくてホッとさせられます。

下右写真の壁に掛っている丸い時計、これはどの部屋にも、キッチンまでお揃いのデザインで、部屋の色に合わせてカラー違い。
化粧台、小デスク、見えないけれど右側の壁に沿ってベッドとしても使えそうなソファーがある、婦人用のインティメイトな空間、ブードア。

子供部屋は多分2人1室。バスルームも2人に1室、つまり2つあるので、このあたりでまたバスルーム!!という気持ちに・・・ですから外よりシンプルなのでここでは写真はパス。枕もとのランプや電機のスイッチなどは当時の最新設備。それにカヴロワ邸は全寝室にラジオ、当時のTSFが組み込まれているそうです。





下は3階の子供の領域で、広い遊戯室と、一段高くなった学習室。


学習室の机と椅子
  
テラス

最期に修復について。カヴロワ夫人の死後家具が競売され、土地と家は不動産屋に売られ、今残る庭以外の土地が分譲されました。その後フランスの歴史的建造物の指定を受けていたものの、放置され内部は荒らされ、2008年に国が買い取った時には、テラスや床を割って灌木や草が生え放題、壁は崩れ落ちた廃屋だったそうです。
地下には、当時の最新式の洗濯設備、巨大なボイラーなど、錆びた本物が置かれている外に、オリジナルのマテリアルを展示しています。また修復過程のヴィデオが見られ、これらの本物のマテリアル、古い写真、マレ=ステヴァンスの記録などを研究し、何もかも元と同じマテリアルを作り復元した様子はまるでマニアックのよう。そのおかげで、カヴロワ邸はウソ物臭くないのですね。例えば食堂のは、勿論元通りの緑のスエーデン大理石を使用し、元のように石の脈が連続した模様になるよう、石切りにも最新の注意が払われ、蝶番、電気のスイッチ等の小さな部品に至るまで、同じものを作り直したのです。家具は競売の記録から辿って買い戻された本物か、マレ=ステヴァンスのデッサンからの再現。どちらもファブリックは元通りのものを織りなおしたそうで、そのサンプルとなった切れ端の布も地下に展示されているのを見ながら、その徹底した復元作業ぶりには敬服しました。
以下はオリジナルです。    
     コンセントなど電気関係            蝶番
      床の寄せ木細工                タイル


Villa Cavrois    60 Avenue du Président John Fitzgerald Kennedy, 59170 Croix
http://www.villa-cavrois.fr/en/
リールからトラムR線で約30分、Villa Cavrois下車徒歩約15分

9/16/2017

リールの大蚤の市/ビール&折り畳みベンチの関係、リールNo.3


La Grande braderie de Lille/ La bière/ la table pliante de brasserie 

リールの大蚤の市グランド・ブラドリーは、欧州最大のフリーマーケットと言われているようですね。本当に最大かはわからないけれど、確かに大きく、リールは交通の要で、直通のユーロスターやタリスを使ってイギリス、ベルギー、オランダ、ドイツから、それにイタリア語、スペイン語、東欧らしい言葉もよく聞こえてくる国際的な大蚤の市。毎年9月の第一週末に開催される、年一回の市民の陽気なお祭りです。去年はニースのテロの後だったので、警備しきれないとキャンセルになりましたが、今年は復活。立ち寄ったカフェのギャルソンが ″いつもならウチの前はぎっしりで身動きできなくなるんだよ。今回は警備が厳しすぎて、まるで空っぽじゃないか″ とぼやいていたけれど、それでも全部はとても見切れないサイズでした。


台車に椅子を山積みして運ぶオジサンは、お目当ての物を安く手に入れたのでしょうか、私のカメラに向かって手を振りご満悦! ベルギー以北でよく見かける子供や犬を乗せて自転車で引っ張るあのカートや、リヤカーの小型版、買い物キャディーなどを引っ張り、乳母車まで運搬用に使って皆買う気十分。価格調査をしたわけではないので正確な事はわかりませんが、パリよりだいぶ安いみたい。
下の写真のようなプロのアンティークが集まる地区、家族や友達が集まって要らなくなった服や家庭用品を売る地区(意外な物が見つかったりで面白くて安い)、ブティックの集まる通りは大バーゲンセールと別れているので、目的別に楽しみましょう。

            
            
            
            

さてこれからが本題。ブログのトップの写真、このシンプルなテーブルとベンチが、ブラドリーの期間中、レストランやカフェの店頭テラスや、ちょっとした広場や中庭にずらっと並べられます。メニューはどこも同じで、リール名物のポテトフライ付きのムール貝とビールが、何トンもブラドリー期間中に消費されるのです。このテーブルセットは、よく野外の催しで使われますが、特にベルギーから北欧にかけて圧倒的によく見ます。どこでも大抵ビールを飲んでいる、ビールと切り離せないイメージ。よく見ると、シンプルで機能的でなかなかかわいい。
ぴったり平たく折りたためて、運送にも収納にも適し、ゲルマン系XXLの巨漢が座って長時間ビールを飲んでも壊れないグッドデザイン。イヴェント用のレンタルなども沢山ありそう。