Espace Richaud/ L'hôpital royal classé du XVIIIe siècle réhabilité à Versailles
ヴェルサイユの元王立病院が、カルチャーセンターやショップが集まった新しい空間として再オープンしました。
この病院のルーツは、ルイ14世が作り尼僧たちが運営していた貧民救済の家で、1781~1859年の長い月日をかけて建築、増築されたもの。1980年代に病院が移転するまでは、リショー病院と呼ばれ親しまれましたが、以後裁判所に改築するという計画もあったのに、建築上の問題(恐らく経済的な理由も)で立ち消えに。建物は荒れ放題になり、また3度の火災では大きなダメージを受けて放置されていました。
ヴェルサイユに3つある駅の1つと、名物の常設の大食料品市場の間に位置し、骨董品街も近いという素晴らしい立地条件なのに、28,000㎡の土地が30年近くほっておかれたとは、日本では考えられないのでは?歴史的建造物に指定されていたためと、市としてはもとより破壊は問題外で、改装保存を望みながらも、出資者がいないという状況だったようです。大改装は市長の要請で、建築家ジャンミッシェル・ウィルモットが乗り出し(彼が出資者も見つけた)、2009年から5年の年月をかけて完成しました。
上の模型で全容がよくわかりますが、ドームの下のチャペルを中心に、前庭、中庭を囲んだ建物と、右上の奥の2ブロックの建物で構成されています。66の高級アパート、賃貸料を低く設定した91の低所得者及び学生向けアパート、5つの店舗、オフィス、保育園、カルチャーセンター、そして10,000㎡の庭は公園です。中庭は3方に、前庭は正面に出入り口があり、誰でも自由に入ることができます。
前庭から見たチャペルの正面
中庭から見たチャペル
中庭から見た後方出口
中庭は建物に囲まれているので、街の雑踏が聞こえずとても静か。ルイ14世のお膝元ですから、もちろんジオメトリーのフランス庭園。きっちり正確に並んだ植物は、植えられたばかりでまだ殺風景な印象でも、果樹(リンゴかナシ?)が殆どなので、何年か後には、花の季節はペールピンクの幾何学模様になることでしょう。
圧巻はチャペルで、宗教的な飾りは全くなく、巨大なドームには、円柱と、美しい白黒大理石の床(トップ写真参照)、2階を囲むギャラリーなど、カルチャーセンターの要の部分。ここでの展覧会もいいし、室内楽のコンサートや劇などやっても素敵そうです。
カルチャーセンターは病院の名前をとってエスパス・リショー。町の人達が、綺麗になったね、などど言いながら沢山来ていました。今ヴェルサイユの最近の修復や建設に関する資料を展示中。エスパス・リショーの修復の様子をヴィデオで見ることができ、修復が、破壊して新建築を建てるのに比べて、どれだけ大変な作業であるかがわかります。
外側は上階に住居、1階が店舗。まだ空なのでちょっと寂しい雰囲気です。
ヴェルサイユは世界中からツーリストの集まる大観光地。デラックスホテルやショッピングセンターに改装するのであれば、とっくの昔にプロモーターが投資したはずです。一握りのリッチな観光客の為に、市民の財産である文化財を閉鎖的な物にしたり、世界中のどこにでもあるようなレストランやファッション・ブティックで一杯にしてしまわなかったのは、素晴らしい選択だと思います。そういえば郊外線RERの駅近くに少しある以外、ヴェルサイユには、観光客目当ての土産物屋やファーストフードをあまり見かけないし(私がそれらしき所は避けて歩いているせい・・?)、団体用の近代ホテルが立ち並んでもいず、おっとりした昔の小都市の風情を保っています。市は、目先の儲けに走らずに歴史の遺産を大切にすることが、ヴェルサイユをますます繁栄させることを知っているのでしょう。政策が変わらないことを願うばかりです。
ジャンミッシェル・ウィルモットは、インターナショナルに活躍するフランスの建築家で、日本では渋谷の文化村のデザインを担当しました。パリではラスパイユ通りの伝統あるホテル、リュテチアの改装工事が現在進行中です。
Espace Richaud 78 Bd.de la Reine, Versailles
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