4/02/2015

舞台のコスチュームのお話し


Formation de costumier de spectacle

上の写真は、最近見た舞台衣装の中でも一番くらいに好きだったもので、マスネーのオペラ、マノンの有名なサン・シュルピスのシーン。マノンに裏切られて聖職に就こうとしている恋人に、許してちょうだいとありったけの手練手管で訴える場面で、場所は教会の中、男は聖職者の黒服、それなのにマノンはペチコートと極端に高く結った髪のアンバランス。このようなドレスを本当にマノンが着ていたはずはないのに、それは問題でなく、このコスチュームはマノンの遊び好きな本性を表しているのだと思います。パトリシア・プティボン(カルメル派修道女の対話の主役ブランシュをやって大好評だった)は私の大好きな個性的なソプラノで、この衣装のムードにぴったりマッチし、とろけるように魅力的な声で、可愛い女を演じて最高でした。
オペラコミック座の創立300周年記念のプログラムで、ビゼーのカルメン、オッフェンバックのホフマン物語、ドビュッシーのペレアスとメリザンドなど、この劇場で初演され大ヒットした数々のオペラの名場面を、年代順に紹介したもの。演じる歌手も沢山のスターが集まり豪華な企画でしたが、これは中でもピカ一のパフォーマンスで、コスチュームが光っていました。



この写真は、ロアルド・ダール作“ジェームズとジャイアント・ピーチ”(日本題は“お化け桃の冒険”)の劇のコスチューム。このお話しを知らない人でも、
ティム・バートンが映画化した“チャーリーとチョコレート工場”と同じ作家の作と言えば、だいたい想像がつくのでは? 愉快で突飛な、ファンタジーで一杯のお話しのコスチュームですから、チュールのフリルの間に、本物のリンゴなどが縫い込まれた楽しいもの。アトリエ、タバルミュックの作品です。
このアトリエは、劇、オペラ、映画、テレビなどのコスチュームを作りながら、後世にこの技術を伝えるべく、2年間の舞台衣装職人の養成講座も開いています。



1年めは古典衣装の製作を習得し、2年目は習得した技術をベースに、個性的なクリエーションを勉強します。生徒の条件はバカロレアを取得している事と、ある程度のデッサン力、普通の服のカットと縫製を習得している事。



しかしクラッシックなコスチュームさえ縫えればこの仕事ができるかというと、そうでもなく、最終的にはその人の人格がキーポイントだとか。つまり技術だけでは、ファンタジーある作品は作れないのですね。それと情熱。ある日ホテル・リッツのお抱え仕立て職人だったという人が、解雇されたのを機会に、以前から興味のあった舞台衣装を作りたいと言ってきたのだそうです。彼には何も教える事はなかった、何でも自分で覚えて、62歳で素晴らしいコスチューム師として再出発したとのお話し。だから講習のパンフレットには、18~62歳までと書いてあるけれど、学校を出たばかりのヤングにはなかなか難しいとのこと。

衣装には数時間でできるものから、1日約8時間の仕事で、3週間以上かかるような大作まで。演出家の出すテーマに従ってバリエーションを沢山作り、その中から、これはOKこれはダメと、演出家がセレクションするものや、全く最初からこちらの好きに作る白紙委任など、色々なケースがあるようです。講習といっても、実地にやりながら覚えるので、1階と地下の狭いスペースで、生徒さんもベテランも一緒の仕事場。仕事が限りなくある職種ではないため、やたらに失業者を増やすことはできないので、沢山生徒は取らないとのお話しでした。
Tabarmukk   58 rue Didot 14e 

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