1/14/2020

モンマルトルのレテ・アン・パント・ドゥース


L'été en pente douce à Montmartre

レテ・アン・パント・ドゥースは、サクレクール寺院から、階段を1つ下った所にあるカフェ・レストランです。"緩い坂道の夏" と訳したらよいのでしょうか、この面白い名前は、ジェラール・クラヴジック監督の映画L'été en pente douceと同じですが、多分モンマルトルの丘の中腹にあるからかもしれません。以前書いたトリスタン・ツァラの家とは、サクレクールを挟んでちょうど反対側。


ずっと昔からレストランだったのか、奥の壁いっぱいにレトロなモチーフのペイントのある鏡が嵌められ、壁の腰板にはずらっとタイルのオーナメント、古めかしい天井画などと、古く良きモンマルトル風。でも全体がブルーのペンキとタイルのグリーンでとても明るい雰囲気。

食事の方は、すごくおいしいという人と、まずいという人、サービスが遅いという人、色々で何とも言えませんが、私のオーダーしたランチメニューは、カフェランチとしては十分及第でした。野菜たっぷりのポタージュ、その日の仕入れだという小ヒメジのフライ+根セロリ+ビーツの付け合わせは、ヘルシーでユニークなメニューで良かったです。
              

しかしこのレストランで最高なのはテラスで、夏、このミニ広場の木陰でカフェかアペリティフは大人気です。

上の写真の正面に、サクレクールから下る小さな階段があり(寺院正面の人で一杯の大階段でなく、目立たない東側の小さない階段の方)、写真左手に、さらに下に下りる階段が・・・
以下の写真は夏に行った時のもの。

L'été en pente douce     8 rue Paul Albert 18e

1/06/2020

シャルロット・ペリアンとアール・ブリュット、日本 etc


Carlotte Perriand/ L'art brut, Japon etc.

12月初めに始まった国鉄とメトロのストライキが、まだ続いています。1号線は幸い運転手無しのオートマティックなので、機械はストをしないから殆ど正常運航(全線オートマティックにするべきだ!)。それに乗ってルイ・ヴィトン財団美術館のシャルロット・ペリアン展に行ってきました。並ばずにすんなり入館でき、ビジターが少なく快適だったのは皮肉にもストのおかげ・・

シャルロット・ペリアンはル・コルビュジエ建築の殆どの内装を手掛けた事で有名なインテリアデザイナーでした。今回の展覧会は、20、30年代に新しい世界、新しい住居を追求し、生涯未来を見つめ続けたペリアン(1903-99年)を多様な面から紹介しています。例によってフランク・ゲーリーの広い建物のスペースをふんだんに使った大展覧会なので、ここではその中から印象的だった、ペリアン+アール・ブリュット/フェルナン・レジェ/ル・コルビュジエ、ペリアン+日本について取り上げました。
 

これらの美しい写真は、まるでレンズのような丸い氷の塊をテーマに、氷の透明な部分と曇った部分、中に閉じ込められた落ち葉や枝、太陽、空、そして支える手にインパクトがあり、子供のように遊び心一杯なポエジー。30年代の写真で、フェルナン・レジェ、ル・コルビュジエの従兄ピエール・ジャヌレ達と、自然の中に面白い "形" を見つけては写真に撮り、彼らのインスピレーションソースとしていたそうです。
下写真は、ペリアンのオフィスに飾られていた流木。



海岸で奇妙な形の石や流木、流れ着いた様々なオブジェを拾い、それをペリアンが写真に撮り、フェルナン・レジェがデッサンした作品が沢山展示されていました。レジェは私の好きな画家ではないのですが、この展示を見て、彼の絵のナゾがある程度理解できるようになりました。
彼らはこのような自然のオブジェだけでなく、当時目覚ましい発展を遂げていた飛行機、自動車などの工業生産にも大きな興味を持っていたそうで、レジェが機械や工具などのモチーフを沢山描いている理由も納得。ペリアンはボールベアリングの金属ボールを繋いでネックレスにしています。

写真はシャルロット・ペリアンのメモ帳の代わりで、風景、自然、オブジェ、デッサンなど、全て写真に撮っていたそうです。それも敢えて遠近法や構図を無視した、真正面からスバリの写真で、それを彼女は art brut アール・ブリュットと呼んでいました。既成に芸術的とされている概念に捕らわれない生のアートです。
下は左側が彼女の写真、右がレジェのデッサン。


シャルロット・ペリアンのデザインと日本も、切り離して考えることはできません。1940-42年、日本政府からの要請で工業デザインの顧問として日本に招待され、1941年高島屋で "選択、伝統、創造" 展が開催されます。また1953-55年にも日本に滞在し、"芸術の総合への提案" 展を企画。
1937年のUAM展のパビヨン用にデザインされたものを、日本の技術と竹を素材として作り直して高島屋に展示されたメアンドル・ベンチ。

日本に向けてペリアンがマルセーユから乗った船の甲板に、船乗りがチョークで書いた落書きがあったのだそうです。これをペリアンが写真に撮り、後に作ったのが上の黒白の斬新なカーペット。撮った写真も一緒に展示されていました。
竹製シェーズロング
 
日本のお膳と折り紙からインスピレーションを受けたサイドテーブル。一枚のアルミ板を折った単純なデザイン、積み重ねて収納可。彼女は日本の、ベッドも机も椅子も無いシンプルな畳の生活に大いに感激したようです。しかし現代はベッド、机、椅子の無い家は珍しいし、畳も少なくなるばかり。これはいったい進歩なのか後退なのか?
展覧会の為にペリアンが発注したすだれのサンプル。フランスで売っている簡単で安価な日除けのすだれは、ペリアン女史が日本から持ち帰ったデザインがルーツなのかも・・・

フェルナン・レジェ、ル・コルビュジエ、ピカソなど、ペリアンと関係の深かったアーティスト達の絵画、タピストリーが豊富に展示され、絵画展としても見ごたえ十分でした。

展覧会のポスターに使われたノーブラのペリアンの、自信に満ちた爽快な後姿。お婆さんになってからも、ショートヘアーの可愛い人でした。

Le monde nouveau de Charlotte Perriand  2月24日まで
https://www.fondationlouisvuitton.fr/en/exhibitions/exhibition/charlotte-perriand.html
Fondation Louis Vuitton, 8, Avenue du Mahatma Gandhi, Bois de Boulogne

12/20/2019

ジェフ・クーンズのチューリップ


Le bouquet de tulipes de Jeff Koons

今パリは年金制度の改革反対運動の大ストライキの真っただ中。特に交通機関がマヒ状態で、パリジャンは歩け歩けの毎日です。それで先日歩いていた時、かの有名なジェフ・クーンズのチューリップに遭遇しました。

このチューリップはアメリカの "アーティスト" ジェフ・クーンズからパリ市へのプレゼント。2015年の連続テロの犠牲者へのオマージュ、アメリカの自由の女神の聖火を持つ手を模った云々と、NO と言いにくい理由付きです。贈られたのは製作の権利だけで、パリ市は美術愛好家の出資を募ってバカでかいので膨大な製作費を捻出しなければならず、パリの美観を損ねると心ある人々の大反対運動(当然だ!)の甲斐も無く、この秋めでたくシャンゼリゼ脇に設置されたもの。クーンズは芸術家でなくて辣腕ビジネスマンですね。彼にとっては褒められてもけなされても宣伝になるし、パリの要地に半永久的に作品を飾ってもらえるのですから、制作権など安い物です。設置してすぐ落書きされたそうですが、それを消したのも今後の維持費も、市民の税金が使われるのです。因みに初めは近代美術館とパレ・ド・トーキョウ(現代アートの美術館)の間の目立つ正面広場に設置される予定だったのが、結局シャンゼリゼ脇といっても外れの、プチパレ裏の木立の間に落ち着きました。シャンゼリゼ側からはよく見えず、セーヌ側も広い自動車道路で人通りが少ない都合のいい場所。私もストでなかったら絶対歩かない場所でした。

芸術作品とは美しく心地よい物ばかりでなく、醜悪、奇妙、恐ろしい作品もありますね。また美しいという定義も個人的で、人によって様々です。ムズカシーイ問題ですけれど、芸術作品とは何かザクッと簡単に考えると、好き嫌いとは別に、人の心に強く訴えかける力のある物が真の芸術ではないかと・・・例えば今ポンピドーセンターで展覧会中のフランシス・ベーコン。見ず嫌いはよくないとしっかり見てきましたが、やっぱり大の付く嫌いな絵だけれど、ショックを受け、画家の苦悶か葛藤が伝わってこちらまで息苦しくなるような作品でした。
何百万の高値がつけばイコール芸術とは言えないし、見ても何も感じない、遊園地に飾った方がいい作品もあるのです。

12/11/2019

ベルナルダン僧院のインスタレーション



L'installation au Collège des Bernardins/ Il est plus beau d'éclairer que de briller seulement

"光を与える方が、一人で光っているより美しい" うまく訳せないのですが、これがこのインスタレーションのタイトル。場所にマッチしてトマス・アクィナスの言葉だそうです。このコレージュ・デ・ベルナルダンはソルボンヌのすぐ側にあり、いってみれば昔々のソルボンヌの分校の一つ、中世の僧たちが集まり学問をした場所でした。当時の学問とは古い教えを伝達し、教える者と教えられる者が意見を戦わせて習得してゆくものでした(現代だって学問とはそうあるべき)。芸術もそれと同じく、教師と生徒が、伝達しつつ個性のぶつかり合いで相互発展してゆくもの、という発想から実現したインスタレーションで、ボザールの教師とその元生徒2名の作品だそうです。


このように精神的な説明はパンフレットがあったので理解できましたが、作品自体の説明は全く無しです。鑑賞者は自分の目て見た物、自分の感性で作品を受け止めなさいということでしょう。これも一種の伝達かも。余計な説明をして、無理に作品の素晴らしさを押し売りしなくてもいいのです。見た人が作品を嫌うのも批判も自由。こんなマイナーな場所で特殊な展示、ストライキ中でもあるのに、それでもぽつぽつビジターがいて、皆熱心に僧院の建築とインスタレーションを鑑賞していました。


私には作品の意味は最後までナゾ。でもそんなことはどうでもいい、作品の新と僧院の旧が混然とミックスして美しかったのが印象的でした。

Collège des Bernardins   20 rue de Poissy https://www.collegedesbernardins.fr/
以前の関連ブログ: 僧院カフェ、ラ・ターブル・デ・ベルナルダン 

11/29/2019

マチアス・キスのインスタレーション/ リール・ボザールのアトリウム


L'atrium de Lille Beaux-Arts/ L'installation de Mathias Kiss

リールのボ・ザール美術館で、マチアス・キスのインスタレーションが展示中です。
ブログトップの写真を見てください。アトリウムの高い天井に設置された空、この空はキスによると18世紀絵画の空だそうで、つまりドラマティック。それが真下に設置された鏡に映し出されます。横に立つと周りの円柱や回廊が映り、立体の鏡が壊れ、まるで流れ出ているような部分にゆがむ像も面白い効果。



しかしそれよりももっと印象的なのは、インスタレーションの設置された器の方の建物なのです。1800年代に美術館用に建てられたクラッシックな建築の、右と左の翼の中央にあたる部分のアトリウムがそれで、吹き抜けの高い天井、円柱、バルコニーのある真っ白な広い空間入場チケット無しで入れるフリーゾーンで、両側の回廊にカフェとブックショップ、休憩コーナー、コンピューターやデスクのあるネットコーナーが、たっぷりなスペースを使ってとても贅沢。ビジターが多くないのでとても落ち着けます。


さて展示されている作品中でブログに取り上げたいと思ったのは、Louis-Léopood Boilly ルイレオポルド・ボワリーの小さなポートレートシリーズです。ルーブルにある作品 L'atelier d'Isabey" のエチュードだそうで、サロンに集まった当時の画家、彫刻家、歌手、俳優、建築家を描いたもの。A4サイズほどの小品ばかりで、大芸術品ではないけれど、ちょっと2、3点盗んで家に飾りたいな、と思うような作品・・・後でネットでルーブルの完成した作品の方を見てみたら、形式的でつまらない絵でした(でも1798年のサロン展で大評判だったとか)。エチュードの方が、リラックスして描かれているようでずっといいです。


          

            

Palais des Beaux-Arts, place de la République, 59000 Lille
マチアス・キスのインスタレーションは1月6日まで