Chapelle de Franciscaines de l'Immaculée Conception dite Chapelle Auguste Perret à Arcueil
先日の“文化遺産の日”に、アルキュイルにオーギュスト・ペレが建てた小さな教会を見るチャンスに恵まれ、宝石のように美しい教会でとても感激しました。
ファサードはマリア像がある以外は全く教会らしくなく、こんな建物が後ろに隠れているとは想像もつかないくらい小さい印象です。ちょっと雑然とした狭い玄関に入ると(ホールとは言えない手狭さ)集会室の扉が正面に、右手に粗末なコンクリートの階段があり、それを上った2階が教会堂・・しかし上がった途端に正に息をのむ光の洪水。こんな場所にこんな宝物が隠れていたとは・・・!
この教会は、女子孤児院を開いていたフランチェスコ派の修道女達の為に立てられたもので、オーギュスト・ペレが設計、弟のギュスターヴ・ペレが施工し、1927年から始め29年に完成しました。修道会は当時最先端の技術である鉄筋コンクリートでモダンな教会を作りたいと思ったのではなく、資金がとても少なかったため、安いコンクリートで作ってくれるペレ兄弟に頼んだのだそうです。
素材はコンクリートと中が空洞のレンガのブロックのみ。教会としてはとても小さいのに、小ささを感じないヴォリューム感、ほとんど飾りもない柱のシャープな美しさ、レンガを組み合わせたジオメトリー、中央に天井から下げられたシンプルなガラスの十字架(ステンドグラスの光に混じって写真ではよく見えない)など、美しいものを作るのに資金の大小はあまり関係ない事、そして建築家の技術をしっかり踏まえた天才の閃きの結果!
この教会の命であるステンドグラスは、コンクリート製の十字、円、斜めの四角の単純なタイル式モチーフを組み合わせたもので、色も黄とブルーの2色のみ。本当は色ガラスをタイルのモチーフの中にはめ込まなくてはならないのですが、安く上げる為に外側から張り付けてあります。そのため外から見るとステンドグラスは全く見えません。下の写真はとてもシンプルなファサードとバック、色ガラスが外から張り付けられているのが見えます。
下の写真はポーランドのアブストラクト画家ヤニコフスキーという人の描いた、イエスの受難と十字架への道。カトリック教会には必ずあるテーマで、普通はリアルで荘厳な大型の画が並んでるのですが、これはシンプルで小さく、下の小石に受難の場面のナンバーが順に付いています。寄贈されたものだそうですが、だれが選んだのか素晴らしいセンスでこの教会にぴったり。教会全体がカトリックとは思えない斬新さなのも驚きです。
安藤忠雄さんのインタビューで“ヴォリュームと光が最も建築に重要だということも大きな発見でした。特に光は、建物に生命を与えます” と語っていますが、本当にその通り。この教会を見れば、彼の提唱するヒューマニストの建築、魂のある建物とは何であるか、とてもよくわかります。
オーギュスト・ペレの宗教建築では、特にパリの郊外ル・ランシーのノートルダム教会が有名です。このノートルダム教会は、写真で見る限りコンクリートのあまりに冷たい外観と、天にまっすぐ矢のように鋭く突き出た尖塔に、実は今まで本物を見に行こうという気になりませんでした。食べず嫌いはいけませんね、いつか見て来なくては・・
オーギュスト・ペレ・のパレ・ディエナ
https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2019/10/fiac.html
オーギュスト・ペレのヴィラ・スーラ
https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2013/09/blog-post_20.html
オーギュスト・ペレとフランクリン通り25番地のアパート
https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2014/02/25.html
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