8/07/2016

ヴィンテージチェアーの修理について


L'art de la réfection de siège/ un fauteuil bridge

1年半ほど前から、念願の椅子の修理を習いはじめました。なぜ修理なのか? 蚤の市でよく底が抜けて詰め物がはみ出した、しかし直せば素晴らしくなりそうなアンティークの椅子をよく見かけます。そんな椅子を、ヨーロッパ特有の美しいインテリアファブリックで、蘇らせてみたいと思ったのです。
上の写真は私の第1作。ひじ掛け椅子の中では一番シンプルなブリッジというスタイルで、元は60年代に流行った合成皮革(フランス語でskaïスカイ、日本語ではレザーレットだそうです)にプラスティックのパイピングが付いていました。座る部分の一部が陥没していて、ヴァンプの蚤の市で10€。60年と年代が近くてまだ沢山残っているため、今まだ安く買えるお手頃ヴィンテージです。
が古い部分を全部取り去ったところ。スプリング用のワイヤーの一部が取れていたので、この後全部取り外しました。またひじ掛けや足はやすりをかけ、クルミのエッセンスできれいなこげ茶色に塗り直したら、見違えるようになりました。ひじ掛けの部分は、ブリッジの場合普通2つの木のパーツを繋いでいますが、この椅子は、多分木を加熱して湾曲させたのでしょう、繋ぎ目無しで丸くカーブしているのが気に入っています。

以下は作業工程。本当はもっと複雑なのですが、ザクッと簡単な説明です。
   
まず椅子の裏から、底にリネンテープを張ります。そのうえにバネをしっかり縫い付け、バネを押した状態で麻糸で固定。麻布(ジュート)をかぶせ、上にココ椰子ファイバーを固定。
   
椰子ファイバーの上にまた別の麻布を被せ、座る部分、椅子の淵を麻糸で縫う。これで椅子のフォルムが形作られます。背の部分は、バネが無いだけで、他はほとんど座の部分と同じ工程。
          
形が整ったら、今度は動物の毛(馬?)を乗せ、生成りのコットン布で覆います。そして最後に表布で覆って出来上がり。写真では簡単そうでも、実際やってみるとかなりの腕力と、熟練職人のテクニックが重要な事を思い知りました。伝統的な椅子の構造がだいたい分かった今は、お城のインテリア、オペラや劇場の椅子など、どこに行っても椅子ばかり目に付き、フランスはこんなに沢山の昔の椅子を1つ1つ手仕事で修復し続けているのだ、と思うとため息が出てしまいます。
アトリエのミシンと椰子ファイバー。下は生徒達の修理中の椅子置き場
修理のコツの1つは、破れたり壊れた元の布や詰物を取り去る際に、1つ1つ点検し、必要があれば写真を撮りながらやること。難しい箇所や迷った時の参考になります。特に年代物の椅子を修理する時は、過去に何回も修理されて、まるでそれら昔々の職人達と会話をしているような気持ちがふとします。時として、ちょとした手抜きを発見したり、失敗した箇所があったり・・・
これは蚤の市で買った昔の木製のデキチェアーを磨き、イケアの布に裏打ちで補強して張り替えたもの。簡単にできた割にはインパクトがあって面白く、外用の椅子だけれど、屋内で使っています。

0 件のコメント:

コメントを投稿