6/10/2018

クプカ&アブストラクション&デザイン


Kupka/ Abstraction/ Design

"アブストラクションのパイオニア" というタイトルで、フランティセック・クプカの大回顧展がグラン・パレで開催中。なぜパイオニアかというと、美術史上、彼は最も早く抽象的な絵を描き始めた画家の一人だったのだそうです。順を追って作品を見てゆくと、画風がどんどん進化してゆき、画家の頭の中で、抽象絵画がどんなプロセスで生まれるかを、ちょっぴり覗いて見られるような展示でした。

抽象画家は、若い頃クラッシックな正統派の具象から出発していてびっくりさせられることがありますが、クプカの場合は違います。初期の画風はあくまで古典的でも、北欧風に感じられる(ボヘミヤ生まれなので東欧的と言うべきか?)幻想的、神秘的、象徴的作品が大多数。初めから目に見えた物でなく、心の中で想像した物を描いていたのですね。
上の若い女性の背景は、後のジオメトリーを彷彿とさせます。
上はクリムト風です。これがもっと発展すると、下のような抽象に?
下の4作品は、どのように抽象画が生まれるか、分かりやすい例として展示されていました。
             
            
1930年代からは徹底したアブストラクション。

どんどん単純化され、余計な線が削除され、最後は下写真のような、絵画というよりはデザイン、グラフィズムと言った方がいいような作品を残しました。これ、いいですね~色々なデザインに盗みたくなる絵!

クプカってグラフィック・デザインの元祖ではないかと思いながら展覧会を見ていた私は、帰りがけに売店の前でハタと立ち止まりました。美術館も同じことを考えたのでしょうね、クプカをテキスタイルのデザインに使ったポーチやトートバッグを売っていました!!
フックとトートのコーディネーションがとてもステキ・・

注: ここに取り上げた作品は私の好きなものばかりです。クプカがパリに来てから描いた幻想的かつ皮肉で残酷なまでの挿絵やポスター、また後期の派手な色使いの、無限の宇宙や色彩の洪水のようなアブストラクションのシリーズなどは、好みでなかったので省略しました。
Kupka, Pionnier de l'abstraction    3, avenue du Général Eisenhower 8e 7月30日まで

6/03/2018

シャルドンのパン


Boulangerie Chardon aux Grands Voisins 

元病院の敷地に、次の建物が立つまでの間パリ市が若者たちに解放して出来上がったコミュニティー・マルチスペース、レグランヴォアザンに、去年夏から仲間入りしたブーランジュリー・シャルドン。シャルドンとは " あざみ " の事。厳選した本物の素材を使い、手で捏ねたこだわりのパンは、野原や田舎のあぜ道にしっかりと根を張ったあざみのように素朴な味。
今日は上の写真の黒いパン、そば粉100%のものを初めて買ってきました。ねっとりというか少々モチモチ感があり、それだけ食べても美味。チーズと一緒は最高!

奧の黒くて丸いパンはライ麦100%。モチモチ感はなく、ドライな素晴らしい風味。

装飾も何もなく、アトリエと素材の粉置き場も兼ねた店内は、本来の " パン屋  " のあるべき姿かもしれませんね。若いシェフと、あまりプロっぽくない親切な売り子さんにも好感が持てます。

Boulangerie Chardon, Les Grands Voisins 74 Av. Denfert-Rochereau 14e                              

5/16/2018

アバトワールのエドゥアルド・チリーダ展/ ツールーズ No.2


Eduard Chillida aux Abattoirs/ Toulouse No.2

ツールーズの近代美術館レ・アバトワールAbattoire(屠殺場)は、文字通り元屠殺場。それまではバラバラだったこの業種を一か所に集めるべく、市が19世紀初頭に建てたレンガの建物を美術館に改装したもの。ツールーズの中心である美しいキャピトル広場から、タルン川を渡った対岸にあります。



たまたまエドゥアルド・チリーダ展をやっていて、楽しい驚き。
チリーダは1924年スペインのサン・セバスチャンで生まれ、マドリッドで建築の勉強を始めましたが、途中で彫刻に転向。1948年から10年ほどフランスで過ごし、ブランクーシやのホアン・ミロ、アントニ・タピエス等と交流しています。
上の写真やデッサンのような、丸い鍵型のダイナミックなシリーズが私は大好き。容赦なく人を縛り付けるチェーンのようにも見えるし、何かと何かを必死で繋ごうとするチェーンのようでもあります。サン・セバスチャンの海岸にある彼の代表作の一つ "風の櫛" は、潮風と荒波を受けながら天に向かって断固と伸ばされた鍵の手。いつか本物を見たい作品です。
                        by San Sebastián Turismo

今回の展示は殆どが小品なのがちょっと残念だった分、デッサンが沢山あリ、グラフィック・デザインとして見ても最高!

 


紙の質から墨のようなブラックの色合い、紐を使った下げ方まで、うっとりしてしまった作品。作品に一貫したメッセージは自由、友愛、平和、協調など、人種も宗教も超越した人間(ヒュ-マニティー)への賛歌。彼は全く政治や政党とのコンタクトはなかったそうですが、国政人権連盟やアムネスティーインターナショナルなどのポスターを多数手がけています。
高い天井から下げられたチリーダの作品 

広い敷地はタルン川岸まで続く公園。私の行った日は熱いぐらいの素晴らしい天気で、タルン河岸のはピクニックや日光浴をする人で一杯でした。

Les Abattoires 76 allée Charles de Fittes, 31300 Toulouse    http://www.lesabattoirs.org

5/07/2018

パステルと煉瓦の街ツールーズ散歩


Toulouse, la ville rose, et son histoire du bleu pastel 

パステルカラーで馴染みのあるパステルは、元はブルーの染料となる植物パステルを意味し、古代ギリシャの頃から薬用と染色用に、中央アジアやヨーロッパ南東部で栽培されていたそうです。どういうニュアンスのブルーかというと、トップの写真の鎧戸の色! 
中世ヨーロッパでは薬用は勿論の事、富裕階級の衣服に欠かせない染料として高い需要があり、その流通の要となったのがフランス南西部のオクシタンと呼ばれた地方、特にツールーズです。そのためかどうか、ツールーズでは沢山の鎧戸、窓枠などが爽やかなこのブルーでした。
カフェの椅子もパステルブルー
 
ツールーズはla ville rose、roseローズの街と呼ばれています。旧市街全体がレンガで作られ、赤みがかったトーンにまとまり、夕日に映えるとローズ色に輝くから。それに中世からルネッサンスを通じてパステルの商売で街が裕福になり、大商人が沢山の豪邸を建てた美しい街なので、薔薇ローズの名がぴったりでもあります。このレンガの建て物に、ブルーの鎧戸はとても美しいコントラスト! 
塔のある旧商人宅があちこちにあるので、上を向いて散歩しましょう。旧市街の道路は昔のままで狭く、しかもみな半円形に湾曲し、向こうの端まで見渡せないのは、中世の防衛手段の名残でしょう。全く近代の都市計画の影響を受けていないのです。
狭くて自動車に不向きなこと、又坂が無いので、自転車の愛用者が多い。
上は煉瓦の窓枠を残して漆喰を新しく塗り替えた建物、下は漆喰が落ちてしまった状態の建物。
 
藤が満開でした

5/02/2018

アルヴァ・アアルトの椅子


Les fauteuils de Alvar Aalto

タピスリー(椅子直し)をやっているからか、私は大の椅子好きです。
今開催中のアルヴァ・アアルト展は、建築は勿論だけれど、アアルト・デザインの椅子のオリジナルがたっぷり見られたのが印象的でした。


                                                                  Tank chair 400
このように本物のヴィンテージを見ていつも思うのは、やっぱり本物は、現代の復刻版とは違うという事です。何が違うのでしょう? 専門家でないので確信はないのですが、ニスや塗料が昔と違って、本物は使い古されて塗料が磨滅していても美しく、また木材の部分(このタンク・チェアーではひじ掛けと足に当たる部分)が、ぽってりとした暖かい感触で、多分やや厚手(又は太め)の感じがします。トップの写真はアルテック社の復刻版のタンクで、美しいのですが、どこか冷たいような、本物と比べると風格に欠けるというか・・と思うのは気のせいかしら・・
復刻坂の cantièvre chair。これとトップの写真は、素敵なファーニチャーばかりだったヘルシンキのホテルで撮ったもの。
黄色ががかったグリーンのペンキが美しい、ひじ掛けの淵の塗装がはげかけているのがまたいいのです!

これが小さいながら大ロングセラーのヒット商品、1930年代から売れ続けているスツール60。展覧会会場に、展示品としてでなく、休憩用の椅子として置いてあったもの。やっぱり長く愛用されるものは、シンプルなのです。
     木材を湾曲させる際のテクニック

Alvar Aalto. Architecte et designer     
Cité de Architecture et du Patrimoine, 1 Pl. du Trocadéro 16e

4/24/2018

ペリエのグラス/ マルタン・ゼケリ


Le verre de Perrier/ Martin Szekely

日常使いの雑貨の中には、時々ハッとするほど優れたデザインのものがあり、集めたくなりますが、ペリエのグラスもその一つ。シンプルで機能的な美しさがあり、ペリエ社にとっては欠かせない宣伝効果も大きいこの優れものは、フランスのデザイナー、Martin Szekelyマルタン・ゼケリのデザインです。
マルタン・ゼケリは沢山のファーニチャーや内装、雑貨をデザインしていますが、一般に馴染みがあるのはこのペリエグラスと、これも知らない人はいないハイネッケンのグラス、MK2映画館の内装など。日本ではレンゾー・ピアノの建てた銀座エルメスの、カフェの内装を担当しました。


そういえばペリエのボトルも素敵ですね。調べたところ、このボトルのデザインはなんと1903年からずっと使っているものだそうです。1863年にミネラルウォーターとしてナポレオン3世に認可され、特にドクター・ペリエが温泉(沐浴とミネラルウォーターを飲む治療で、日本の温泉とはちょっと異なる)として開発していた水源を、1903年に買い取ったイギリス人、ジョン・ハームスワースが、水の "しずく" 型にデザインしたとか。
ペリエグラスはカフェの業務用なのでお店では買えないけれど、ブロカントで一つづつ集めたり、時には半ダース箱入りの工場出しなども見つかります。現在生産中なので、安くてお買い得のグッドデザイン。
このカフェのグラスはextraordinaire(素晴らしい)の文字が入ったデザインで、数が少ないコレクターアイテム。