8/08/2018

ザッキンの庭/ パリのシークレットガーデンNo.1


Atelier Zadkine/ un jardin secret à Paris No.1

パリジャンがヴァカンスに出かけ、お店も閉まって静かなパリの夏・・・8月中は小さな庭のある小さな美術館だけをいくつか集め、パリのシークレットガーデンめぐりをしてみましょう。
まずは彫刻家、オシップ・ザッキンの自宅兼アトリエ。1928年から亡くなる1967年まで約40年間、同じく彫刻家の奧さんと一緒に住み制作に励んだ、モンパルナスのエコールドパリゆかりの場所です。


夫婦2人で仕事をするためでしょうね、アトリエが2つあります。上写真の母屋の1階と、下の写真の、庭の中の別棟。

けして大きくない庭で、周りを高いアパートに囲まれていてもプライバシーのある、大都会にいることをしばし忘れる緑いっぱいの静けさ! 特別展がある時以外は入場無料なので、ちょっとした休憩に気軽に立ち寄りましょう。古い梁を切ったスツールが6、7個あるだけなので、長居はできませんが・・



Musée Zadkine   100 bis  Rue d'Assas 6e http://www.zadkine.paris.fr/en

8/02/2018

ザオ・ウ-キzao wau ki

暑中お見舞い申し上げます

Zao Wou-Ki, L'espace est silence

パリとは思えない真夏日がずっと続き、34-35℃という日も‼ 湿気がないので日本の 猛暑 ほどではないけれど、普段は絶対日当たりの良いカフェを選ぶパリジャン達も、さすがに日陰カフェ派になってきました。
そんな暑さをひと時忘れ、涼しさを感じられるのがザオ・ウ-キのタブロー。 色彩が渦巻き、流れ、空間を駆け巡り、どこからともなく微かな音色が響き、シンフォニーとなって舞い上がり、そして静寂がおとずれ、無限が広がる…


1920年北京生まれ、裕福でインテリの家庭に生まれ、早くから伝統的中国絵画を勉強し、満足できずに油絵の西洋絵画に、それでも飽き足らず近代絵画へ移行。1948年フランスに渡り、モンマルトルをベースにアンリ・ミショー、ピエール・スーラージュ、ヴィエラ・ダ・シルバなどと交流。スイスでホワン・ミロの作品に接してショックを受け、以後アブストラクションに専心します。早くも49年にはパリの絵画コンクールの一位を獲得し、初めての展覧会を開催。以後インターナショナルに活躍、1964年にはフランスに帰化、2013年死去。

最もヨーロピアンなアジア出身の画家の一人であって、しかしどの作品も、西欧の画家の表現と違った無限、静寂・・樹木、湖沼、空、雲等の自然を感じる詩情・・墨絵? それとも彼の出身地の先入観があるためかしら? 意識して墨絵風のブラックの墨だけを使った大作のシリーズも、会場の一室で鑑賞することができます。
パリで15年ぶりの展覧会だそうで、必見です。

Zao Wou-Ki, L'espace est silence  http://www.mam.paris.fr/fr/expositions/exposition-zao-wou-ki
Musée d'Art moderne de la Ville de Paris. 2019年1月6日まで
今工事中なので仮の入り口、セーヌ岸の12-14  av. de New York から入ります。

7/26/2018

パブリシティーについて


Les publicités à Paris

パリで広告というと、メトロの駅の壁を覆う大きなポスターと、緑の屋根付きの古風な丸い広告塔。どちらも昔からある、絵葉書にも登場するほどのパリの顔。それを別にすれば、パリは広告やネオンの比較的少ない街のはずだったのに、最近はあちこちに広告が見られるようになりました。
特に目立つのは、工事中の建物を覆うスクリーンを利用した巨大なポスター。上の写真は学士院、下はルーブルと、どちらも改修工事のスクリーンを使った広告です。パリのモニュメントはセーヌ岸や市内の主要な広場や大通りに面していたりと、広告には絶好の場所。しかも建物が古いのでいつもどこかで修復工事があって、巨額の広告料はきっと修復に欠かせない資金源なのでしょうが、醜悪! こんなことを許可するパリ市長の美意識の欠如には驚かせられます。

こんな醜い物を被せられたルーブルがかわいそう・・

7/18/2018

サラ・ラヴォワンヌのカフェ・プレヴェール


Café des frères Prévert de Sarha Lavoine

プレヴェールって、あの詩人のジャックプレヴェールです。正式な名前はカフェ・デ・フレール・プレヴェール(″プレヴェール兄弟"カフェ) 。ジャックの弟の映画監督ピエールがアートディレクターを務め、ジャックが出し物を創作していたCabaretキャバレー、¥La Fontaine des quatre-saisonsラ・フォンテーヌ・デ・キャトルセゾンのあった場所にオープンしました。フランス語の(カバレと発音する)キャバレーは、夜+お酒とくればもちろん娼婦もいたでしょうが、いかがわしい場所ではなく、劇、音楽、ダンス、パントマイムなどの芸を披露する小舞台のあるナイトクラブの事で、プレヴェール兄弟の所には、後に有名になったアーティストの卵達が出演していたそうです。例えば無名の頃のモーリス・ベジャールとか・・
現在その建物は彫刻家マイヨールの美術館になっているので、当時芸人達の控室と料理場のあった地下をカフェに改装したもの。

内装は今売れっ子のサラ・ラヴォワンヌが担当しました。昔のままの石の円天井が生かされていますが、レトロさは全くないコンテンポラリー・シックなインテリア。カフェ・プレヴェールとは名前ばかりなのがちょっと残念ですが、いまさら懐古的なカフェを作っても所詮ニセモノですものね。
サラ特有の微妙なトーンのグリーンとペールブルーに、ブラック&ホワイトの千鳥格子がアクセントの、インテリアのお手本のようなカラーコーディネーションが素敵。

美術館の入場料を払わなくても、カフェだけ利用することができます。
Café des frères Prévert, Musée Maillol 61 Rue de Grenelle 7e

7/11/2018

マリカ・ファーブル/ パリ・プラージュのポスター


Malika Favre/ l'affiche Paris Plage 2018

パリ・プラージュが始まりました。
毎年パリ・プラージュに欠かせなくなったポスターの、今年のイラスとレーターはマリカ・ファーブル。


マリカ・ファーブルのイラストは、グラフィカルでシャープな線や円を大胆なアクセントにした、無駄のないシンプルなラインと、ハッとするようなカラフルな色使いがステキです。
by Malika Favre
by Malika Favre

7/03/2018

石上純也さんの自由な建築


Junya Ishigami, Freeing Architecture

一昨年ニューヨークMoMAの "A Japanese Constellation"、去年はポンピドー・メッスのJapan-nessジャパン-ネス展とパリ、パビヨン・ド・ラルセナルのパリの日本建築展など、日本の建築は世界中の注目を浴びてひっぱりだこ。今春はカルティエ財団で開催中の石上純也さんのFreeing Architecture(自由な建築)展が話題です。
恐らく大多数のパリジャンと同じく、素人の私には石上純也の名を聞いたのはこれが初めて。見終わった感想の第一は、メガロマニアックなものと、日本人らしい微に入り細を穿つマイクロスコピックなものとが混じりあったショッキングなアンバランス。それが岩や木、空気、雨などの自然と呼応し、石上さんの "子供の絵本" 風のファンタジーが加わって、フランス人が考えもしないような "作品" が展開されます。建築やデザイン関係の人かなという若者達に、一般のオジサン、オバサンからお年寄りまで、みんなウームと唸りながら食い入るように鑑賞していました。
これは一番最初に目に入り、心底びっくりさせられる、中国の谷間に建設予定のチャペル。詳しいデータは忘れましたが、入り口は人が2人すれ違える幅、高さ45m、周りを囲む壁は下から上に約2mから20cmくらいの厚さという、刀の鞘のようなフォルム!
深い谷間に天を切るように建てられるチャペル。右の3つの写真は、薄暗い入り口、ずっと進んで行くと前方に光が見え、奧のチャペルは眩しいほどの光に満ちています。なんという演出! 無信心者もおのずと敬虔な気持ちになりそうですが、閉所恐怖症でなくてもちょっと怖いかも。
このチャペルを水平と垂直に切った図
上はシドニーに予定されるCloud Arch雲のアーチ。彼の夢のような想像の世界で生み出されたものが、賛否両論で色々騒がれた末実体化します。下はその模型。
光はもとより、雨も入ってくる自然と一体になった建物。天井の穴から入る雨を、屋根のある場所で仕事をしながら眺める・・誌的で美しくユートピア的ですが、降った雨はどのように排水し、乾いた空間を残すのか? 雨は垂直に降るばかりでなく、風によって四方から降りこむ場合は? 風は? 暖房は?
彼の手にかかると、動物や恐竜まで "建築" になってしまいます。
これは中国に予定される幼稚園の模型。完成すれば世界で最もファンタジー溢れる幼稚園になることでしょう。しかしビジターの目が釘付けになるのはこの模型自体。色鉛筆の手描きで花や木を描き、グリーンやグレイの床の部分も、色々なトーンにわざわざ手で色を書き込んだ紙を手で千切り、一つ一つコラージュしています。顕微鏡的な細かい仕事! 模型は本当に美しく、写真を撮ればそのまま子供の絵本に使えます。しかし建築の模型は芸術作品ではないし(それとも最近はアートとみなされるの?)ここまでする必要があるのか? そのあたりのボーダーレスが魅力、でもちょっと気になる。この外にも随所にマニアックな配慮があり、アシスタントさん達はさぞかし大変だったのではと思ってしまいました。
石上さんのイメージする "建物" は、建築というよりも巨大な立体アートかインスタレーション、時にはジャイアントサイズのおもちゃ、と呼んでもいいくらい。彼の2007年の "四角い風船" というインスタレーションの写真をネットで見ました。総重量1トンもあるアルミの箱をヘリウムガスで宙に浮かせたもので、まさに巨大でファンタジックなおもちゃ。
上は石上さん直筆の作品のコンセプト。子供の詩のような文体で、字も不ぞろいの小学生のよう。見るからに拘りの人ですね。実際に出来上がった建物はまだ少ないようで、いつか本物を見るのがとても楽しみです。
石上さんの椅子。面白くて子供が喜びそうなフォルム。

Junya Ishigami, Freeing Architecture  9月9日まで
Fondiation Cartir pour l'art contempolain     261 Bd.Raspail 14e  


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6/23/2018

ゴードン・マッタ=クラークのアナーキテクチャー


"Anarchitecte" Gordon Matta-Clark 

偶然か、それともアート界の目がそちらの方向に向いているためか、パリ(ジュ・ド・ポーム9月23日まで)と東京(国立近代美術館9月17日まで)同時にゴードン・マッタ=クラークの展覧会が開催中です。1942年生まれ、70年代にニューヨークで活躍し、35歳で亡くなってしまったのですが、今のストリートアートやアヴァンギャルド・アート、はてはソーホーで初めての芸術家グループ経営のレストランFoodを立ち上げて有名になるなど、後に続くアーティスト達の先駆者的存在だったのです。
ジュ・ド・ポームは写真美術館なので、彼の残した写真とヴィデオだけの展示。
雑多な壁紙やタイル、漆喰がボロボロになって残っている解体中の建物の壁、落書き、パリの地下などの写真が並び、彼の視線がかなり異色だったことがわかります。父親が有名な建築家でシュールレアリスト画家、父と交際のあったマックス・エルンスト、マルセル・デュシャン、イサム・ノグチなどの影響かもしれません。
                                 

彼の名を一番有名にしたのは、不要になり解体を待つ倉庫やビルを切断して作る巨大な彫刻、インスタレーションともいえる作品です。上はブロンクスの古い倉庫の壁をカットした作品 Day's End。放置されガランとした建物の薄暗い内部に、カットされた空間から入る光と影の美。


Conical Intersect円錐の交差と題された、建物の壁、床、天井を円錐形にカットしたシーリーズの作品。パリのポンピドーセンターが建設中で、その周りの取り壊し予定の建物を使って巨大な3Dの円錐形がカットされました。今ではそのプロセス、色々な角度から見た円錐のカットや、そこから覗き見える外の景色と、荒れた建物の壁や床とのコントラストを映した写真やヴィデオが残っているだけで、建物はすぐに壊されてしまいました。元々壊される運命の作品・・今ではもう実体がないのに、残された写真とヴィデオが自体が作品として展示される不思議な作品・・
 

彼はこのような手法を、自分でアナーキテクチャーと呼んでいました。アナーキーなアーキテクチャー。この造語を初めに使ったのは、ロビン・エヴァンスという建築評論家の書いたTowards Anarchitectureという本のタイトルだったそうです。このタイトル自体もル・コルビュジエの本 " 建築へ "  Vers une architectureをもじっているとか。
マッタ=クラークと仲間達の興味は、水害や事故で壊された建物を写真に撮るなど、社会問題や建築と環境、リサイクル、自然食品にも及んでいます。早世しなければどんな作品を展開し続けたのでしょうか?

Gordon Matta-Clark "Anarchitecte"  Jeu de Paume, 1 Pl. de la Concorde 8e    9月23日まで