11/22/2021

ピカシエットの家 / シャルトル


La Maison de Picassiette/ Chartres


シャルトルの、とてもとても貧しい家に1900年に生まれたレイモン・イジドールは、カントニエ(道路の整備や掃除草刈係)、墓守、粗大ゴミ捨て場の管理人などを務めながら、自分で作った粗末な家を、拾い集めた陶器やガラスの破片を使って、生涯をかけてモザイクで埋め尽くしました。それがピッカシエットの家と呼ばれ、ゴシック建築最高の美しい大聖堂と並んで、今ではシャルトルの町の観光名所になっています。
ピッカシエットはピック(拾う)とアシエット(お皿)を繋げた言葉で、イジドール氏の場合は、文字通りお皿を拾う変人と思われていたからで、一般的には俗語で、人の家でうまくご馳走になってばかりいる人の事。ピカソとアシエットを繋げたという説もあります。
                                       by Chartres city イジドール氏と奥さん
1929-30年に自分で建てた家は、はじめは水も電気も無かったのだそうです。人と折り合えない性格で、色々な職を転々としたり失業したりを繰り返し、1935年くらいから、モザイクに没頭し始めます。畑を歩いていて、美しい色のキラリと光る陶器の破片を見つけて拾ったのが始まりだとか・・・
家の内部から始め、キッチン、居間、寝室は壁画とモザイクのミックス(写真ではわからないかもしれませんが、どれもほんとに小さな部屋)。よくバルセロナのガウディのグエル公園と一緒に紹介されますが、規模はずっと小さく、また芸術とは縁の全くない、一人の労働者のイマジネーションだけから生まれた事が驚異的です。
ピカシエットのモザイクは、素朴な、ある意味では幼稚なナイーブ・アートと評されていますでもこの礼拝堂(上と下2つの写真参照)など、ナイーブアートと簡単にかたずけられない美しさで、私はラヴェンナのビザンチンのモザイクを思い出しました。この素晴らしい色あいは、大聖堂のバラ窓のシャルトル・ブルーをイメージした色使いかしら? 信心深い彼が、礼拝堂だから特別丁寧にデザインしたのか、それとも彼のクリエーションの絶頂期だったのかもしれません。
大きな人は頭がつかえそうな低い天井。

家の横を裏庭に抜ける小路も、美しいモザイクで一杯です。シャルトルの街並みや大聖堂が繰り返しでモチーフに使われます。フランスの外の聖堂も沢山登場、キッチンの壁にはモンサンミッシェルの壁画がありましたね。
繰り返し現れる女性のモチーフは、どうも奥さんのようです。男性は彼自身?




始めは1930年代ですから、お皿の模様も当時のデザイン。庭を進んで奧に行くほど、お皿の絵が現代的に。そしてイジドールさんも年を重ねてだんだんモザイクが荒くなってきます。元々精神的に不安定だったようで、晩年はモザイクのインスピレーションが湧かなくなり正気と狂気を繰り返し、ついには嵐の夜に外に出たまま、翌日遺体が発見されるという悲劇で亡くなってしまいます。

シャルトルと言ったら、やはり欠かせないのは大聖堂。東側のファサードは修理中で、同時に有名な正面ファサードでは、彫刻群の掃除中でした。塔の上から吊るしたロープでまるでサーカスのよう!! 有名な最後の審判の、全能のキリスト像に接近しようとしています・・・


やっとキリストの頭の後光の裏に手をかけて、なにやらごそごそとやっていたと思ったら・・・

バサリと何かが落ちてきたのは、なんと鳥の巣。巨大で彫刻一杯の聖堂ですもの、こうやって一つ一つ巣を取っていくなんて、ご苦労な事です・・
赤いリュックは、このレンジャー部隊(?)の道具入れ。

La Maison Picassiette   22 Rue du Repos 28000 Chartres
シャルトルはパリのモンパルナス駅から約1時間。ピカシエットの家は旧市街の外で、聖堂から歩いて約30分。バスもありますが、私は聖堂裏のユール川に沿って歩いて行きました。

11/05/2021

オスカー・ムリーリョ

 

Oscar Mullio

今日は、先日のアンネ・インホフのインスタレーションに出ていたオスカー・ムリーリョについてです。雑誌に出ていた写真だけで強い印象を受けて、David Zwirner ギャラリーの展示を見に行ったのは去年の年末でした。インスタレーションで再会したので、遅ればせながらブログに取り上げてみました。


写真で絵画の本当の価値を再現するのは不可能で、本物の前に立った時のエモーションは伝えられないといつも残念なのですが、ムリーリョの絵は特にそう。強烈で躍動しパワフルなのに、深みがあってどこか "静" も感じさせます。特に赤がとても鮮烈(この写真とは似て非なる美しいレッド)。下地に布が貼ってあったり、沢山のシャープなラインが埋めていたり・・・トップと下の写真はそのほんの一部を拡大したものです。

コラージュやグラフィティー風の以前の作品をネットで見ましたが、彼の若さも含めて、何となくバスキアを感じさせます。個人的にはグラフィティーっぽいものより、このシリーズが好みです。これから彼はどこに向かってゆくのか、若いので何でもありそう、楽しみなアーティストです。

コロンビア生まれ、イギリスに移住しロンドンで絵を学び、30代半ばで既に世界的に活躍中。日本でも展示しているので、彼の詳細はサイトに沢山紹介されていますね。

関連ブログ : アンネ・インホフのインスタレーション/ パレ・ド・トーキョー

10/18/2021

ジャン・デュブュッフェの塔/ イル・サンジェルマン


Tour aux figures de Jean Dubuffet/ L'Ile Saint Germain

シテ島やエッフェル塔を通り過ぎたセーヌ河が、パリの周りを囲む環状線ペリフェリックをちょっと出て蛇行した所に、サンジェルマン島という中州があります。今は広い公園になっていますが、元は自動車ルノーの工場があった島で、その工場跡の土地を90年代に公園にしたもの。その広いグリーンの広場の小高い場所に、一際緑に映えて目立つのがジャン・デュブッフェのこの塔・・・


ただの飾りではなく、実は塔の中に入れるのです。下写真のような、ちょっと悪夢風のデュブッフェらしい迷路になっていて、うねうねと上まで登れます。私の好きなアーティストではないけれど、この迷路はとても面白い!

  Photo by La Tour aux figures

島なのですからもちろん周りは水で、船(高級水上生活者の)が浮かび、川岸に遊歩道もあってなかなか素敵です。パリの中心まですぐなので開発がどんどん進み、またペリフェリックの外は旧市街ほどの建築制限がないため、このようなオフィスやアパート群が沢山建ってしまったのは残念ですが、21ヘクタールの島の中は自然が一杯です。


元工場の建物の一部をわざと利用して花を植えたり、ツタを這わせたり。植物も野草に近い種類を、これも多分わざと野性っぽく生え放題に植えています。
元からあったらしい雑木林をそのまま残しているので、橋を渡ればすぐにビルが並んでいることを忘れてしまえる場所です。

10/10/2021

アンネ・インホフのインスタレーション/ パレ・ド・トーキョー


Carte Blanche à Anne Imhof, Natures Mortes/ Palais de Tokyo    

パレ・ド・トーキョーは常設展示は無く、現代美術、特にアヴァンギャルドな作品の展示が特徴で、私のお気に入りの美術館の1つ。なぜなら超アヴァンギャルドなのでビジターが少なく、予約なしでふらりと行ける事、大きな建物の空間を存分に使っているので、広いスペースを独り占めして、静寂の中で作品と対することができるからです。作品はもうこれは好きか嫌いかで、いくら説明を読んでも何を言いたいかわからないものもありますが、1人のアーティストがエネルギーをつぎ込んで創造した作品に囲まれていると、なにかしら訴えてくるものがある、という感じ・・・


今展示中のアンネ・インホフのインスタレーションもそう。自身の作品と多数のアーティストの作品を、壁や天井をわざとむき出しのままに残して修復された美術館の内装にダイナミックにマッチさせたもので、複タイトルはカルト・ブランシュ、美術館からの白紙委任を受けたインスタレーションです。       

写真ではよく見えませんが、透明不透明、デッサン、印刷、彫刻などで一つひとつ違うパネルを、建物のカーヴに沿って連ねた作品。隣で映写されているヴィデオの光が、故意または偶然に部分的にパネルに反射します。


外のアーティスト達の写真、デッサン、オブジェが、透明、半透明のパネルの、時にはグラフィティーを通して、重なって見えます。

上は私の大好きなジョーン・ミッチェル、下はオスカー・ムリリョ。彼の作品は先日画廊でたまたま見て大ファンになったばかりだったので、嬉しい再会でした。次のブログで取り上げたいと思います。


Carte blanche à Anne Inhof, Natures mortes
Palais de Tokyo, 13 Av. du Président Wilson 16e    10月24日まで

10/02/2021

クリストの凱旋門

 L'arc de Triomphe de Christo

クリストの凱旋門-というか彼が無くなってしまったので、彼のプランに忠実に従って実現した凱旋門のラッピングが、沢山のビジターを集めて大きな反響を呼び、明日終了の予定です。先日 "愛国者" と称する若者2人がよじ登り、祖国の為に死んだ兵士達にと記したフランス国旗を下げることに成功し、兵士を祭る凱旋門がこのようなラッピングに使われるのは侮辱だと抗議するハプニングがありました。また莫大な資金はクリストの自前で賄っているとは本当かウソか、税金が使われていないか? ラッピングの大量の布やロープは、たとえリサイクルだとしても何という無駄ではないかエトセトラ・・・と、予想通りメディアやネットで批評多数!

地球温暖化が待ったなしの大問題の今、こんなにムダしていていいのかな、という気持ちは分かります。また興味のない人にとってはこれほど不必要なモノはありませんし、これは芸術か否か、というのも人それぞれの解釈があり難しいですね。泥沼にはまり込みそうな芸術論は止めて、ただ一つ言えるのは、ノートルダム寺院もヴェルサイユ宮殿も、飢える国民など無視して建てられたという事です。それを是正はしないけれど、あまり色々考えていたら、何も創造できないのも事実・・
ですから硬いことを言わずに、軽い気持ちで見てきました。私のまわりのビジター達も、コロナウィルスが下火になり、良いお天気だったこともあり、布を触ってみたりセルフィーで写真を撮ったりと、みな楽しそうに鑑賞していました。

クリストの凱旋門ラッピング