10/28/2015

スープ入れ、スーピエールのお話し


La soupière

昔はフランスの家庭に欠かせなかったのに、今は全くと言ってよいほど使われない食器にスーピエール、スープ入れがあります。下の写真は1家庭用の伝統的な陶器セット。これに肉や魚のメイン用の大皿が2、3枚にコーヒーカップが付いて、10人以上がフルコース食べられる数です。

ふっくりと丸く、熱々のスープが冷めないように蓋つき。蓋の上の持ち手に野菜などの飾りがコロンと付いていてかわいい、親しみのあるいかにも家庭的なフォルム。最近はスープからディナーを始める家庭は少なくなり、健康やダイエットのためにサラダの方が人気で出番が無くなり、しかも狭いアパートのキッチンでは大きいので収納に困ります。でもおばあさんの代から伝わるスーピエールは思い出が一杯なので、蓋を取ってサラダボールに使ったり(フランスでは各自に小分けにせずに、まとめてドレッシングしたものをドンとテーブルの中央に置いてサービスする)、田舎の家などではキッチンの飾りに使われたりしています。一番上の写真のカーネーションのモチーフのスーピエールは、家に伝わる曾祖母のもの。



田舎風、アールデコ、アールヌーボーなどその時代によってファッションがあってとても面白い。上の写真はセーブルの陶器美術館にあったもので、優雅な曲線と華麗な装飾の貴族御用達のスープ入れ。

ところで最近は昔のよい食材が見直されていて、おしゃれなスープ・バーができたりと、スープがカムバックしています。このブログのテーマから外れますが、スープのお話が出たついでに我が家の野菜のポタージュのレシピーを紹介します。欠かせないのは香り用のオニオンとセロリ、そして美しく仕上げるには、赤い野菜と緑の野菜を混ぜるときには、分量を加減してどちらかの色になるようにする事。これさえ守って、後は冷蔵庫の整理のつもりで何でも入れ、野菜が柔らかくなったら、ミキサーでポタージュに。ミキサーをかけないと、味が混じりあわないのでおいしさは激減します。かぼちゃ、人参、カブのポタージュは黄金色、ホウレンソウ、長ネギ、ポテトのポタージュは美しいグリーン、水に対して野菜の量が多いほど濃厚で美味。家では野菜を沢山食べたいので、ぽってりした食べる感覚のスープにしています。野菜のうま味で十分なので、塩(できれば精製されないあら塩使用)以外、間違ってもスープの素など入れないこと。完璧主義の人は、残り物のチキンなどでダシを取るとコクが増します。その場合は、お肉はミキサーにかける前に取り出します。又は食べる前にバターを1かけ落とす。これにパンとチーズがあればヘルシーな夕食に。Bon appétit !

10/23/2015

メゾン・ド・パステル


La Maison du Pastel/ 3 siècles d'histoire

パステルは早く肖像画が仕上げられるので、モデルが長くポーズしなくてすむことや、柔らかい粉が、人物の顔をビロードのように美しく描けることなどが好まれ、ルイ王朝時代に大ブームとなりました。カンタン・ラ・トゥールやシャルダンなど有名ですね。また ″粉″ が素材である為に、パステルの作品はガラスの額に入れないと保存できないのですが、18世紀にガラスの技術が発達した事も、パステル画が発展する要因になったのだそうです。ラ・メゾン・デュ・パステルのルーツはそのブームの頃1720年に生まれ、約3世紀の長い歴史を持ったメーカーです。


しかしこのメゾンが特に名高いのは、1800年代後半にメゾンのパトロンとなった化学者で薬剤師のアンリ・ロシェのお陰で、彼は大変な情熱をもって沢山のカラーを作り出しました。彼と息子アルフレッドの代で、1930年には1650色のストックを誇ったそうです。因みにパステルは色が混ぜられないので、深みのある作品を描くには色数が必要なのです。よくパステルを指でぼかして色を混ぜる人がいるけれど、あれは邪道で、せっかくのパステル粉のビロードの表面を台無しにしてしまいますと、現オーナーのイザベルさんのお話です。

パステルはこの古めかしい棚に、昔のままの木箱に入れてあります。オリエントの土、キプロスの土、オータム・グリーン、アトランティック・グリーン、矢車草ブルー、花菖蒲ヴァイオレット、ヴェネチアン・レッド・・・色名だけでも詩になりそう。



1980年代には後継ぎがないまま、アルフレッドの3人の娘も年を取り生産できなくなり(全部手作りです)閉店の危機に瀕しましたが、現オーナーのイザベル・ロシェさんが殆どゼロから引継ぎ、ストック1021色まで取り戻したとのこと。昔の色数には遠いのですが、それでも世界一。もう一人の共同経営者と2人で、今でも全部手作り。世界中のパステル画家から注文があるそうです。
フランスの ″歴史遺産企業″ のラベルを持っています。

お店はランビュトー通りに面していず、20番地の門を入って中庭の奥にあります。
2人共殆どの時間をパリ郊外で生産に費やしているので、お店は木曜日の午後しか開いていません。
La Maison du Pastel   20 Rue Rambuteau 3e 

10/19/2015

マレの新しいカフェ・キツネ


Nouveau Kafé Kitsune dans le Marais

メゾン・キツネの新しいマレ店のカフェの内装が、とても素敵です。マルモレアルMarmorealという合成された大理石版が使われ、はっとするほど新しく、でもどこかほっとするようなちょっぴりレトロなモチーフが、キツネのスタイルにぴったりマッチ。有名なイタリアのカラール大理石の細かい破片と粉を混ぜて作られたもので、マックス・ラムがキツネの為にエクスクルーシブにデザインしたそうです。色やデザインで無限大のバリエーションが楽しめる、今注目の素材!

椅子はスクビドゥーのビニールヤーンを編んだシンプル+かわいいデザインで、これもとてもキツネらしい。
 
Maison Kitsuné   18 Bd. des Filles de Calvaire 11e

10/16/2015

ロバート・ウィルソンのマダム・バタフライとオペラの舞台裏

by L'Opéra de Paris
Madame Buttefly de Robert Wilson et la coulisse de l'Opéra Bastille

10月も半ばになると、オペラのシーズンたけなわです。今年のオペラ座は、今まで最も人気があり傑作とされた過去の演出の中から、3つのオペラ、ロバート・ウィルソンのマダム・バタフライ、ミヒャエル・ハネケのドン・ジョヴァンニ、ローラン・ペリーのプラテ(ラモー)がシーズン初めを飾って再上演されています。中でもバタフライは特に、音楽、演出、オーケストラ、歌い手、全部の要素が最高に揃った時には、どんな素晴らしいオペラを生み出すかのお手本のようでした。
バタフライの演出というと、変な着物や髪形、おかしなアジア趣味が、日本人の私にとってはなんともうるさく感じられ、黒いシンプルなドレスで歌ってくれたほうがマシなのにと思うことがよくあるのですが、ロバート・ウィルソンの演出は私の願い通り、黒と白のシンプルなドレスだけ。ヨーロッパのメリハリのある体格の歌手達に無理に似合わない着物を着せずに、長い袖とストレートなシルエットだけで着物を表しています。私の見た日はバタフライ役がエルモネラ・ヤーホで、素晴らしい声と演技に加えて、上の写真の人よりずっと小柄で繊細で役柄にぴったり! 最後は思わず涙がこぼれそうに・・・。

 
コスチュームが欧米でよく言ういわゆる ″禅″ 風なら、大道具も禅ガーデンです。白砂と庭石、渡り廊下だけで構成され、歌舞伎、又は文楽の人形の動作に似た登場人物の滑るような独特の動きと、ワンシーンだけが赤い外は、すべてブルーの様々なトーンの照明が、蝶々さんの心の動きや運命を表し、とても美しい。 ″ボブ・ウイルソンほど照明を重視する演出家はいない″ との照明係の談話が、ニュースレターに出ていました。
ちょうど9月にオペラ・バスチーユの舞台裏見学に招待され、この大道具を実際に見るチャンス恵まれました。上の写真は石庭の白砂と、溶岩のようなのは庭石で、鉄枠の上に固定され、解体せずにそのままレールで移動するようになっています。

上はその日上演予定のドン・ジョヴァンニの舞台を、裏から見たところ。近代の高層ビルをイメージしたものです。下はまるで工事現場のような機械類。
          
    
       床のレール          各スペースを完全に独立できるシャッター
舞台裏といっても、飛行機の格納庫のような巨大なスペースが中央、左右、更に後方にあり、3つくらいの異なるオペラの舞台を同時に準備し、それらを組み立てたままで保存し(組み立ては地下でする)、レールを使って舞台に設置できるようになっています。バタフライとドン・ジョヴァンニを交互に上演することがどうして可能か、これでわかりました。
写真がピンボケなのは、四方八方からライトが当たり、それが光沢のある床や金属に反射してとても撮りにくかったためです。
 
上のトタンの倉庫のようなのはリハーサル室。オーケストラが加わる前に、ピアノの伴奏で指揮者と歌い手達が練習する場所で、勿論防音。舞台で外のオペラを上演中の時でも、練習ができます。びっくりするのはこのピアノの反対側に完成した大道具が設置されていて、実際に歌い手がその中で動き、演技し、歌えるようになっていてます。この日は10月後半に上演のモーゼとアロン(シェーンベルグ)の舞台が設置されていましたが、卵の内側のような半球に強い光を当てたただけの真っ白に輝く舞台で、写真は断念。(モーゼとアロンはコスチュームも真っ白なのを縫製室で見ました)
     
上は、さらに後方にある大道具の制作室。これも体育館がすっぽり入るような巨大なもので、まさに工場です。左の半透明の壁は、ドニゼッティ―の愛の妙薬(11月上演)の大道具の一部。
     
これが階上のコスチューム制作部。日曜日だったのでスタッフがいないのですが、ミシンがずらっと並んで、これも縫製工場のようです。中央の茶封筒はマダム・バタフライの資料。このような資料が、3方の壁の天井近くにずらり。使った衣装はどうなるかというと、特別なものは美術館に行くものもあり、またオークションで一般に売ることもあります。
衣装からアクセサリーまで、下写真の織りネームが付けられ、1つのオペラ毎にハンガーラックに下げて、最終チェックをパスしたラックには ″検査済み″ と書かれていました。
これはカツラ室。歌手一人ひとりの頭の型を造り、本物の人毛を一本一本植えてカツラを作るという、気の遠くなるような作業です。自分の毛では演技中に汗をかくなどセットが崩れることが多く、特に女性は殆どがカツラとのこと。コーラスの人達も加えると大変な数になりますが、オペラの常連の歌手のカツラは保存されて再度使うことができるし(ロングヘアが1つあれば、色々なアップに結うことができるし、人毛なのでカツラを染めることもできる)。コーラスの人達はみな、色々な演出家の注文に対応できるように、各自色や形の違うカツラを5つくらい持っているのだそうです。

私たちが普通目にする舞台と客席のある部分は、実は建物のほんの一部で、その後ろは、沢山の工場が集まった一つの町のようです。また地上の部分と殆ど同じ容積の地下があるのだそうですが、そこまで全部見る時間がありませんでした。廊下の長さをトータルすると、なんと33キロメートル! 健脚な人が丸一日かかってやっと歩けるくらいの距離でしょうか。

10/09/2015

ミッドセンチュリーのデザイン蚤の市

Les puces du Design à Bercy

いよいよ本格的な秋!ベルシーのデザイン蚤の市が開催中です。
 カラフルでアシメトリーな本棚!
今シーズンのテーマはピエール・ポーラン、彼の作品が沢山見られました。上はリトル・チューリップ肘掛け椅子545
Les Puces du Design  Place des vins de France, Bercy