5/16/2018

アバトワールのエドゥアルド・チリーダ展/ ツールーズ No.2


Eduard Chillida aux Abattoirs/ Toulouse No.2

ツールーズの近代美術館レ・アバトワールAbattoire(屠殺場)は、文字通り元屠殺場。それまではバラバラだったこの業種を一か所に集めるべく、市が19世紀初頭に建てたレンガの建物を美術館に改装したもの。ツールーズの中心である美しいキャピトル広場から、タルン川を渡った対岸にあります。



たまたまエドゥアルド・チリーダ展をやっていて、楽しい驚き。
チリーダは1924年スペインのサン・セバスチャンで生まれ、マドリッドで建築の勉強を始めましたが、途中で彫刻に転向。1948年から10年ほどフランスで過ごし、ブランクーシやのホアン・ミロ、アントニ・タピエス等と交流しています。
上の写真やデッサンのような、丸い鍵型のダイナミックなシリーズが私は大好き。容赦なく人を縛り付けるチェーンのようにも見えるし、何かと何かを必死で繋ごうとするチェーンのようでもあります。サン・セバスチャンの海岸にある彼の代表作の一つ "風の櫛" は、潮風と荒波を受けながら天に向かって断固と伸ばされた鍵の手。いつか本物を見たい作品です。
                        by San Sebastián Turismo

今回の展示は殆どが小品なのがちょっと残念だった分、デッサンが沢山あリ、グラフィック・デザインとして見ても最高!

 


紙の質から墨のようなブラックの色合い、紐を使った下げ方まで、うっとりしてしまった作品。作品に一貫したメッセージは自由、友愛、平和、協調など、人種も宗教も超越した人間(ヒュ-マニティー)への賛歌。彼は全く政治や政党とのコンタクトはなかったそうですが、国政人権連盟やアムネスティーインターナショナルなどのポスターを多数手がけています。
高い天井から下げられたチリーダの作品 

広い敷地はタルン川岸まで続く公園。私の行った日は熱いぐらいの素晴らしい天気で、タルン河岸のはピクニックや日光浴をする人で一杯でした。

Les Abattoires 76 allée Charles de Fittes, 31300 Toulouse    http://www.lesabattoirs.org

5/07/2018

パステルと煉瓦の街ツールーズ散歩


Toulouse, la ville rose, et son histoire du bleu pastel 

パステルカラーで馴染みのあるパステルは、元はブルーの染料となる植物パステルを意味し、古代ギリシャの頃から薬用と染色用に、中央アジアやヨーロッパ南東部で栽培されていたそうです。どういうニュアンスのブルーかというと、トップの写真の鎧戸の色! 
中世ヨーロッパでは薬用は勿論の事、富裕階級の衣服に欠かせない染料として高い需要があり、その流通の要となったのがフランス南西部のオクシタンと呼ばれた地方、特にツールーズです。そのためかどうか、ツールーズでは沢山の鎧戸、窓枠などが爽やかなこのブルーでした。
カフェの椅子もパステルブルー
 
ツールーズはla ville rose、roseローズの街と呼ばれています。旧市街全体がレンガで作られ、赤みがかったトーンにまとまり、夕日に映えるとローズ色に輝くから。それに中世からルネッサンスを通じてパステルの商売で街が裕福になり、大商人が沢山の豪邸を建てた美しい街なので、薔薇ローズの名がぴったりでもあります。このレンガの建て物に、ブルーの鎧戸はとても美しいコントラスト! 
塔のある旧商人宅があちこちにあるので、上を向いて散歩しましょう。旧市街の道路は昔のままで狭く、しかもみな半円形に湾曲し、向こうの端まで見渡せないのは、中世の防衛手段の名残でしょう。全く近代の都市計画の影響を受けていないのです。
狭くて自動車に不向きなこと、又坂が無いので、自転車の愛用者が多い。
上は煉瓦の窓枠を残して漆喰を新しく塗り替えた建物、下は漆喰が落ちてしまった状態の建物。
 
藤が満開でした

5/02/2018

アルヴァ・アアルトの椅子


Les fauteuils de Alvar Aalto

タピスリー(椅子直し)をやっているからか、私は大の椅子好きです。
今開催中のアルヴァ・アアルト展は、建築は勿論だけれど、アアルト・デザインの椅子のオリジナルがたっぷり見られたのが印象的でした。


                                                                  Tank chair 400
このように本物のヴィンテージを見ていつも思うのは、やっぱり本物は、現代の復刻版とは違うという事です。何が違うのでしょう? 専門家でないので確信はないのですが、ニスや塗料が昔と違って、本物は使い古されて塗料が磨滅していても美しく、また木材の部分(このタンク・チェアーではひじ掛けと足に当たる部分)が、ぽってりとした暖かい感触で、多分やや厚手(又は太め)の感じがします。トップの写真はアルテック社の復刻版のタンクで、美しいのですが、どこか冷たいような、本物と比べると風格に欠けるというか・・と思うのは気のせいかしら・・
復刻坂の cantièvre chair。これとトップの写真は、素敵なファーニチャーばかりだったヘルシンキのホテルで撮ったもの。
黄色ががかったグリーンのペンキが美しい、ひじ掛けの淵の塗装がはげかけているのがまたいいのです!

これが小さいながら大ロングセラーのヒット商品、1930年代から売れ続けているスツール60。展覧会会場に、展示品としてでなく、休憩用の椅子として置いてあったもの。やっぱり長く愛用されるものは、シンプルなのです。
     木材を湾曲させる際のテクニック

Alvar Aalto. Architecte et designer     
Cité de Architecture et du Patrimoine, 1 Pl. du Trocadéro 16e