4/17/2019

タダエスロパック・ギャラリー/ パンタン散歩


Galerie Thaddaeus Ropac/ Promenade à Pantin

パリ市内が飽和状態で地価が高い事、加えて郊外には旧工場や倉庫など、現代のテイストにマッチしたスケールの大きいロフト的なスペースが沢山残っている事などから、郊外にブランシェ地域がサテライトのように広がっています。パリを囲む環状道路のすぐ外側に位置するパンタンもその一つ。セーヌから遡るサンマルタン運河沿いに遊歩道ができ、ビレット公園、科学博物館、フィルハーモニー・ド・パリも近いので、ボボやヒップスターの住人が増えています。
そのパンタンの発展に大いに貢献したのがタダエス・ロパック・ギャラリー。近代アートの一人者であるタダエス・ロパックが、2012年、国道や線路が交差する殺風景なパンタンに、北マレに次ぐ彼の3店舗目の画廊をオープンし大成功させたのですから。
元工場を改装したこのギャラリーは、総面積4,700㎡ 、展示面積2,000㎡と、ただの画廊と言うよりアートセンター。益々巨大化しているコンテンポラリーアートの作品の展示にぴったり。
今展示しているのは "Monumental Minimal" モニュマンタル・ミニマル展。ミニマルアートは60年代にアメリカで始まった運動で、余計な物を一切取り去り、作品は究極の骨組みだけ。四角、三角などのジオメトリックでシンプルなフォルムと、単純なカラー使いが特徴です。そのモニュマンタル巨大版。
展示は大きく単純過ぎてあまり私の好みではなかったのですが、この2色使いの台形シリーズ(特にオレンジXグレーの組み合わせ)はなかなか良かった。よく見ると、上から鉛筆で2つの楕円が画かれています。

工場の外観をそのまま残したギャラリー。広い庭の中の別棟には、カフェ・ブルーが・・
  • Galerie Thaddaeus Ropac     69 Avenue du Général Leclerc  93500 Pantin

4/06/2019

ブルレック兄弟のクリスタルの噴水がシャンゼリゼに!


Les fontaines de frère Bouroullec au Rond Point des Champs Elyssées

先日ブルレック兄弟の個展について書いたばかりですが、もう一つニュースです。ロンポワン・デ・シャンゼリゼに、彼らのデザインした噴水が設置されました。
ロンポワンはシャンゼリゼ通りの中ほどある放射状の広場。19世紀初頭、この広場の真ん中に噴水が作られたそうですが、交通の邪魔になったので早々に取り壊され、広場を囲む6つの噴水が誕生しました。それ以後3、4回噴水のモデルが変わり、30-50年代末にはルネ・ラリックがデザインしたイルミネーション付きガラスの美しい噴水もあったそう(モノクロ写真を見ましたが、ホントにエレガントな美しさ!)。しかし最期のMax Ingrandの噴水が壊れてから、ずっと噴水は止まったままでした。

新しいブルレック兄弟の噴水は、中心の13mのブロンズの帆柱を軸として、クリスタルの3本の腕がごくゆっくり回りながら、水は下から吹き上げるのでなく、上から下に流すもの。このクリスタルは3200個の輪。ブルレック兄弟によると、モニュマンタルでありながら軽くデリケートなデザインにしたかったとのこと。
しかし問題は、噴水としてはかなりユニークなフォルム。またしても "なんて醜い"  "いや斬新でモダンだ"  と賛否両論で新聞を賑わせました。

広いスペースの広場ではあるけれど、細い直線の組み合わせから成るこの噴水は、あまりインパクトがあるとは言えないし、普通の噴き上げるタイプの噴水の派手さもありません。特に昼間は周りの建物や並木、人や自動車の往来の中で、ちょっぴり存在感が薄いかも・・・しかし夜は、この通り、クリスタルの美しさが存分に発揮されます。
 

エッフェル塔も、建設当時は醜悪だ壊してしまえと非難を浴びました。ポンピドーセンター、ルーブルのピラミッド、バスチーユのオペラ座などもみな同じ運命だったけれど、今ではパリに欠かせないランドマーク。ブルレック兄弟の噴水も、10年すればシャンゼリゼに欠かせないイルミネーションになるのではないかしら?

3/29/2019

"STILL" デンマークの静寂


"STILL" l'exposition photo de Trine Søndergaard

便宜上 still は静寂と書きましたが、静止して動かないという意味もありますね。正に静寂と、時間が止まってしまったように静止したシーンばかりを集めたデンマークの写真家 Trine Søndergaard トリヌ・ソンダガッド(正しい発音ではないかもしれません)の作品は、騒がしい日常を一時忘れさせる力があります。以前 "ある後姿" というタイトルで、デンマーク絵画に見られる女性の後姿について2度書きましたが、ソンダガッドの作品も、やはり女性の後姿・・

展示はGuldnakka と Interior の2つのシリーズで構成されます。Guldnakka は18世紀に富裕農家の女性が被った繊細でゴージャスな金糸の手刺繍のヘッドアクセサリー。Guldnakka を被った女性を大きく後ろから捉えたシリーズ(大きさは下の写真参照)と、家具も何もない、多分誰も住んでいない荒れた大きな館の内部。異質な2テーマでも、そこにあるのは心の休まる、しかしミステリアスでもある静けさ、微かな空気の動きも無い凍結した静寂。現実に背を向ける後姿?空っぽの館は非現実な夢の世界?



デンマークでは19世紀に女性の後姿を描くのが流行ったのだそうです。ちょうどその主流となったウィルヘルム・ハンマースホイ展がパリのジャクマール・アンドレ美術館で開催中なので、二本立てで鑑賞できる素晴らしいチャンスです。トリヌ・ソンダガッド自身が、ハンマースホイの "Interieur, Strandgade" に影響を受けたと言っていますから。ハマースホイを見たらまたブログに書くつもりです。後姿に魅せられてしまいました・・・

by Vilhelm Hammershoi

"STILL" Trine Søndergaard    Maison de Danemark  142 Av. des Champs Elysees 8e 5月26日まで

過去の関連ブログ:
*   https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2017/04/no2.html
** https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2016/10/blog-post_8.html

3/19/2019

ブルレック兄弟の個展


Les dessins de Ronan et Erwan Bouroullec 

フランスの誇る兄弟デザイナー、ロナン&エルワン・ブルレックの個展が、ギャラリー・クレオで開催中です。個展と書いたのは、彼らの専門のファーニチャーや内装デザインではなく、フランス語でintimeと表現したいような、彼らのもっと個人的なアート作品を見ることができるからです。ギャラリーとブルレック兄弟のコラボは2000年以来と歴史があり、個展もこれが11回目。


1999年からずっとデュオで活躍する2人ですが、この個展は各自独立した作品の展示です。面白い事に全く違うアプローチ、全く違うエステティック。



ロナンは光沢のある紙の上に、全手描きの殆どがモノカラーの作品。日本のカラー筆ペンを使っていると解説に書いてありました。拡大しないと写真ではわかりずらいのですが、一筆書き的な "線" の集合で構成されたフォルム。これらの作品は毎日少しずつ描き足されたものだそうで、エルゴノミックでオーガニックな、まるで子供の絵のようにリュディック、植物的、宇宙的な不思議の国。

一方エルワンは全てコンピューターを使ったディジタルアート。しかもこのために特殊に開発されたソフトウエアを使用し、写真がベースになっているそうで、彼が目で見た物とディジタルのミックスです。コンピューター使いと聞くと非人間的な先入観がありますが、森、野原、輝く太陽などを感じさせる暖かさと、繊細なカラーが踊り、引き込まれるような奥行きのある、家に飾りたいなと思うようなアブストラクション絵画です。確か全部売り切れでした。

私は建築家やデザイナーが構想を練る時に描くエスキース、手描きのデッサンが大好きです。絵は筆跡と同じようにとても個人的でユニークなので、デザイナーの本質が出るし、そこから彼らの作品への理解も深まります。ブルレック兄弟の絵を見ていると、彼らのデザインの形、素材、触感、質感など、デザインのエッセンスを見ているような気がしました。

3/09/2019

シエナ・ドゥオモの大理石細工の床


Marqueterie en marbre de Duomo de Siena

このブログで取り上げるテーマは、多少の例外を除いて、アバウト1900年以後のアートとデザインに絞ろうと思っています。今日はその例外、イタリア・ルネッサンス14~16世紀の芸術の事、それが時にはすごくモダンだというお話です。

春休み(フランスでは冬休みと呼ぶ)に、トスカーナ地方の古都巡りに行ってきました。まだシーズンオフでお店やレストランも半分以上閉まっていて、心配したシエナのドゥオモも、並ばずスッと入れてラッキー。内部の素晴らしさに圧倒されました。

特に感激したのは広い内部を覆う大理石の寄せ木細工の床。聖書の物語を表した大きな物は特に圧巻、素晴らしくダイナミックで美しい線、現代に通じるモダンさ。これって500年前のマンガじゃない ?!

 

下は運命の歯車にしがみつく人、それを囲む4人のギリシャ哲学者が手にする紙には、運命についての教えが(ラテン語で)書いてあります。つまりマンガの吹き出し‼
  
ジオメトリーとデザイン化されたデッサン、円柱のストライプの洪水。

スペイン、フランス、ドイツ等の同時代の教会建築と比べると、派手というかとても斬新。どんなに装飾があっても、全体的にとても軽く、明るく、圧迫感がない。フィレンツェのドゥオモ等ブルネレスキの建てた教会内部も、無駄のない計算されつくしたジオメトリーで、クールという表現がぴったり。ジオ・ポンティなどイタリアのデザイナーがどこから来たのか、わかるような気がしました。


聖堂のファサードは(写真撮り忘れ)、白、緑、ピンクの大理石で彫刻や捩じれた円柱が一杯の過剰装飾なのに、まるで太陽を浴びて輝くホイップクリームのように軽く見えます・・

注 : 大理石細工の写真は、床に広がる絵を撮ったので、手前の足の部分が拡大され、遠いほど小さくデフォルメされて見えます。

2/18/2019

ロイヤルコペンハーゲンのイヤーマグカップ


Royal Copenhagen annuel mug

以前デンマークのフリーマーケットで買った小ぶりのマグカップ。白というよりグレイに近い、日常使い風の厚手でしっかりした陶器のベースに、おやっと思うくらい斬新でモダンなモチーフ、渋いダークグリーンとダークブルーに、オレンジのアクセントが素晴らしい、小さいアブストラクト絵画。ファイアンス焼きなのでモチーフのカラーがややぼってりと表面に立体的なのも油絵のよう。1982と書いてあって、いかにも80年代のデザインがとても気に入っていました。底には会社名ロイヤルコペンハーゲンと、何やら手描きの印もあるけれど、ブランドに惹かれて買ったのではないため、その事はすっかり忘れていました。


ところが偶然にもある日の蚤の市で、1984と書かれた同じタイプのマグカップを見つけたのです。明らかに私の持っている物と同じシリーズのカップで、こちらも素敵なモチーフ。早速 "ブランド名+年代付のマグ" でしらべたら、ロイヤルコペンハーゲン・イヤーマグカップというシリーズがある事を発見。1967年に始まり、毎年違うデザイナーに絵を依頼して作られるコレクションアイテムで、デンマークではビジネスのプレゼント用や、イヴェントや記念日のギフトとして人気があるようです。ヨ―ロッパでも日本でも、コレクターが沢山いるのですね。
因みに1982年のデザイナーはInge-Lise Koefoed。なんでも80年代までは全部手描きだそうで、確かにどちらのカップも微妙に違う絵柄でした。

2/07/2019

バンジャマン・ミルピエ/ L.A. ダンス・プロジェクト


Benjamin Millepied/ L.A.Danse Poject au TCE

ダンスはめったに見ない(というかそこまで見ている時間がない)、けれど一度は見たいものだと思っていた、かの有名なバンジャマン・ミルピエのL.A.Danse Pojectの公演に行ってきました。世界で注目される人というのは、やっぱり何かすごいマグネチックな物を持っているのですね、色々考えさせられました。
プログラムは
1)Homeward ヴァイオリン2、アルト1、チェロ1の電子音楽ライブ
2)Orpheus Highway  スティーブ・リーチの録音と、上記4人の電子音楽ライブ
3)Bach Studies part 2 バッハのオルガン録音とディヴィッド・ラングを電子ヴァイオリン1名でライブ
By L.A.Danse Poject

私はビデオを使う演出がキライです。安易に奇をてらい演出の貧しさをカバーするようで、オペラに関してはビデオ使いでいいと思った演出は記憶にありません。それで最初のHomewardが、チカチカと眩しい大画面のヴィデオの早送りで始まった時は一瞬ゾッとさせられましたが、ダンサーが登場すると画面は静止。ホッ! そしてこのダンサーが、ちょっぴり太めのかわいい人・・ダンサーなので普通の意味の太めではないけれど、クラッシックバレーのあの針金のように痩せたステレオタイプではないのです。で、このびっくりの2点は、結果的にとても気に入りました。ビデオは白黒の、6-70年代のピエール・スーラージュを、直線でなく幻覚的な曲線で描いたようなアブストラクト絵画が、とてもゆっくりと変わり、ダンサーのコスチュームも同じ黒白パターンのミニドレス。視覚に美しく、またこの最初のダンサーが素晴らし-くて、激しいダンスなのに、丸みのある体と相まってダイナミック且つセクシーでした。

Orpheus Highway はガラッと変わり、ジーンズやTシャツ(写真上)に、バックのビデオは荒れた砂漠、倉庫、工場、ハイウエー。同じダンサーたちのダンスが、同時又はズレて画面と舞台に展開され、オルフェウスとエウリディーチェの神話がウエストサイドストーリーなどの映画のイメージと交錯。私の好みではなかったけれど、ミルピエが全く新しいバレーに挑戦しているのがよくわかりますし、ダンサーの質の高さが光ります。



ラストBach Studiesは文句なく最高。荘重なパイプオルガンの録音と、ソロの電子ヴァイオリンで演奏される近代音楽を交互に、最後はバッハのパッサカリアで最高に盛り上がりフィナーレ。舞台は写真上のように装飾無しで、ライトやレールがむき出し。そして特に素晴らしかったのはアレッサンドロ・サルトリ・コレクションのブラック&ホワイトのコスチューム。男性のスカートがバッハと素晴らしくマッチして、特に写真下のオルフェウス役だったダンサーの、長い腕やスカートを翻して舞う動きは、白いコスチュームで強調され目を見張る美しさでした。

彼らが激しく動くと、長い金髪、チュニックやスカートのスリットが舞い上がり、全部がミックスすると白い嵐のように美しい。
ミルピエのダンスは新しく、しかし同時にクラッシックを否定していません。それが大きな魅力ではないかしら。彼自身クラッシックバレーのエトワールでしたし、どのダンサーもしっかりとクラッシックを勉強し習得した人ばかりと見受けました。それはまるでピカソが、その気になれば素晴らしいクラッシックな具象を描けるのに共通しているかもしれません。