8/29/2017

キオンド/ フィンランドとケニアの融合


Mariage du design finlandais et l'artisanat de Kenya/ panier Kiondo

ある暑い日の午後、友人達とケ・ブランリ美術館の広い庭の中にあるカフェに行った時、立ち寄ったミュージアムショップにあったのがこのバスケット達。デザインも、フェアトレードなのも大いに気に入って、白いバスケットを購入! 
後でよく説明を読んだところ、フィンランドの女性デザイナー2人が立ち上げた会社ミフコMifkoのデザインを、ケニヤのナイロビ近くの農村の女性たちがハンドメイドしているとのこと。干ばつなどで収穫の安定しない農業だけでなく、これで村の女性達が定収入を得ることが可能になり、また消えかけていた伝統の手仕事が、次の世代に受け継がれて行くこともなるのです。いいですね! デザイナーのマリとミンナによると “片足はフィンランド、もう片方はケニヤ“ のバスケット。

サイザル麻(リュウゼツラン科の尖った葉から取れる、ロープなどを作る丈夫な植物繊維)とスーパーのビニール袋級のプラスティックと安価な素材を使い、デザインと手作りのぬくもりがセールスポイント。丈夫で水洗いも折り畳むことも可。カラフルなカラーのストライプもあるようですが、私はモノクロームが好みでした。

因みにケ・ブランリのミュージアムショップは最近改装され、なかなかオシャレな品揃えで、食器やリネン類も素敵。アフリカ、中東、アジア、南米、オセアニアに関する美術館なので、ショップの商品もエスニックのデザインです。

Musée du Quai Branly   37 Quai Branly 7e http://www.quaibranly.fr/en/

8/21/2017

アルプス書店



Librairie des Alpes 

ありとあらゆる海と船に関する本の専門店のお話を書いたことがありますが、今日は山に関する本の専門店です。直訳すると “アルプス書店“ という名のこの本屋さんは、1933年創業というのですから、そろそろ100年近い歴史のお店。ポンデザール橋近くのセーヌ通りにひっそりとある、小さいけれど、有名な登山家達も含めて、山好きの集まる知る人ぞ知るショップなのです。

                               by Librairie des Alpes
一番の特徴は山に関する本なら、1700年代くらいからのアンティーク書から現代の本まで扱っていることと、版画、絵、写真集、古い地図やトレッキングルートなど新旧のものが充実していて、画廊のようでもあることです。だから私のように登山しなくても、絵や写真の美しさに惹かれる人も多いのでしょう。レトロな昔のスキーや登山風景の絵ハガキ、ちょっと変わったプレゼントになる版画などが素敵です。

 Librairie des Alpes     6 Rue de Seine 6e

8/13/2017

オランジナのポスター

Bonnes Vacances à tous !
暑中お見舞い申し上げます!

L'affiche Orangina

オレンジ色のずんぐりした可愛いボトルと、飲む前に振って、下に沈んでいるオレンジの濃縮された部分を混ぜる、その何気ない動作など、フランス人の子供の頃のバカンスの記憶の底に、きっとあるに違いないオランジナ・・・フランスの国民的な飲み物の一つでしょう。このボトル、本格的に販売を始めた50年代に、冷蔵庫に入れるのに丸い胴が場所を取るとカフェのオーナーに不評だったようですが、それが今ではトレードマークに。因みにボトルを振るのも、オランジナのトレードマークというかセールスポイントなのです。
同じくオランジナと切っても切れない、30年近くも大ヒットのポスターを描き続けたベルナール・ヴィルモのレトロなデザインには適わないけれど、今夏のポスターもカラーが爽やか!

8/03/2017

パリの日本建築1867-2017


ARCHITECTURES JAPONAISES À PARIS 1867- 2017

この春、セーヌの中州セガン島に板茂の大コンサートホール、ラ・セーヌ・ミュジカルがオープンして話題を呼び、日本人写真家の展覧会が開催中でこのブログでも取り上げたばかり、そしてまた日本! 今度は日本建築家とパリとの関りをテーマとした展覧会が、パビヨン・ド・ラルセナルPvillon de l'Arsenalのお話しです。外国に住んでいると、ナショナリズム(いい意味での)に目覚めがちで、日本がクローズアップされ、高く評価されるのはとても喜ばしいこと。しかも説明全部が、いつもの仏/英でなく仏/日なのも嬉しい!


日仏の文化交流は明治に始まり、パリ万博に日本館が作られ、日本建築が初めて欧州に紹介されたそうです。その交流が一段と発展したのは、1920年代に前川國男、坂倉順三らが来仏しル・コルビュジエに師事してからで、彼らの共感は両方向だったようです。モダニズム建築は、スライドする障子や襖、居間にも寝室にもなるモジュールな伝統日本家屋と共通の感覚がありますよね。上野の国立西洋美術館建設の依頼を受けて、55年にル・コルビュジエ、シャルロット・ペリノーらが日本に滞在。その時坂倉順三とル・コルビュジエが一緒にサインして、アミチエ(友情)と書かれた貝合わせが展示されていましたが、そのころフランスに日本通の芸術家たちが沢山現れます。80-90年代は当時のパリ市長ジャック・シラクが日本贔屓だったこともあり、黒川紀章(パシフィック・タワー)、丹下健三(グラン・テクラン)、安藤忠雄(ユネスコの瞑想の空間)等重要なパリの建築を手がけ、後の伊東豊雄(コニャック・ジェイ病院)、妹島和世と西沢立衛(サマリテーヌ、パリ以外ではルーブル・ランス)、坂茂(ラ・セーヌ・ミュジカル、リュクサンブール美術館の拡張、パリ以外でポンピド・メッス)、隈研吾(マクドナルド倉庫、サンドニ・プレイエル駅)達の大活躍に受け継がれたのです。欧米の建築家達との共同作業や技術提携も、もう珍しい事ではなく、今後何年もの間、今建築中の大プロジェクトが次々に完成してゆくのが楽しみです。
安藤忠雄の瞑想の空間のデッサン

丹下健三のグラン・テクラン、大映画館の入ったショッピングセンター

ポンピドー・メッス建設の調査検討の段階に、板茂の設計チームの事務所用と、ポンピドー・メッスのプロジェクトの一般向けの紹介の為に、板の提案で2003年、ポンピドー・パリのテラスに、半円アーチと紙管の枠に防水幕を被せた、経済的な仮設事務所が作られた時の写真とマケット。

音響設計家の豊田泰久が、ジャン・ヌーベルのフィルハーモニー・ド・パリの音響パフォーマンスを最適化したのだそうです。あの素晴らしい音響は、日本人の功績なのですね。写真は縮尺1/10の模型を作って考案中のシーン。

これは1861-63年の間に作られた木曽の民家のマケット。建てた年代は、棟木の下から発見された小銭が文久(3年のみ)の年号だった為に限定できたそうです。まず1998年に家とその家具一式が解体され、99年フランス着、2006年に人類博物館に展示されました。そして博物館が改装される事になり、日本の建築家と大工の棟梁の協力で再度解体され、今ではブローニュの森の公園ジャルダン・ダクリマタシオンに移り、予約の上見学することができるようです。

以下は今建築中のプロジェクト:
パリの外れの元倉庫を改良した、マクドナルド大通り公共複合施設の、幼稚園、学校、スポーツ施設部分を隈健吾が担当

妹島和世と西沢立衛改造中の旧サマリテーヌデパート。透明で繊細なSANAA独特の建物が、交通の激しいリヴォ理通りに登場する予定。
同じくSANAAの、ブローニュの森近くの公共住宅。住民からの大反対運動が進行中。確かに市内では珍しく、目立つ建築・・
これに限らずパリ市内は、新しい建築には必ずと言っていいくらい、住民の反対運動が起こっているようです。反対されない、老朽化した工場や倉庫、操車場などが集まっていた環状線周辺は急速に新しくなり、フィルハーモニー・ド・パリやラ・セーヌ・ミュジカルのような巨大な新建築は、市内に空いた場所がない事もあって、やはり環状線の周辺です。
オーステルリッツ駅後方の新開発地区に、2つのエコホテル、バーラウンジ、コワーキング・カフェ、スポーツ施設が入る予定の、隈健吾の複合施設ビル。
郊外都市計画グラン・パリのプロジェクトの一貫、隈健吾のサンドニ・プレイエル駅の完成図とマケット

隈健吾が改装中のアルベール・カーン美術館は、フランス、イギリス、日本式庭園のある広い4ヘクタールの庭で有名。建物と庭の繋がりを重視するべく、縁側風な通路のあるデザインだそうです。日本風のサロンドテができるそうで、それも楽しみ!

安藤忠雄による、旧証券取引所を改装したピノー・コレクションは、ヴェニスの美術館に続く安藤xフランソワ・ピノーのコラボ。高いドームを持つこの歴史的な建築を美術館の展示スペースとするため、安藤はコンクリートの円筒を挿入することを提案。

本のように分厚い、パリの日本建築展のカタログ。これも日仏語のバイリンガル

Architectures Jponaises à Paris, Pavillon de l'Arsenal, 21 Bd Morland 4e 9月24日まで
http://www.pavillon-arsenal.com/

追加: 実は外にもう一つ日本関係の展覧会が! オランジュリー美術館で、東京の改装工事の期間を利用したブリジストン美術館展を4月からやっています。石橋財団所蔵のルノワールやセザンヌにとっては久しぶりのお里帰り、パリの日本人には、東京で見た懐かしい作品に再会するチャンスです。8月21日まで