"Anarchitecte" Gordon Matta-Clark
偶然か、それともアート界の目がそちらの方向に向いているためか、パリ(ジュ・ド・ポーム9月23日まで)と東京(国立近代美術館9月17日まで)同時にゴードン・マッタ=クラークの展覧会が開催中です。1942年生まれ、70年代にニューヨークで活躍し、35歳で亡くなってしまったのですが、今のストリートアートやアヴァンギャルド・アート、はてはソーホーで初めての芸術家グループ経営のレストランFoodを立ち上げて有名になるなど、後に続くアーティスト達の先駆者的存在だったのです。
ジュ・ド・ポームは写真美術館なので、彼の残した写真とヴィデオだけの展示。
雑多な壁紙やタイル、漆喰がボロボロになって残っている解体中の建物の壁、落書き、パリの地下などの写真が並び、彼の視線がかなり異色だったことがわかります。父親が有名な建築家でシュールレアリスト画家、父と交際のあったマックス・エルンスト、マルセル・デュシャン、イサム・ノグチなどの影響かもしれません。
彼の名を一番有名にしたのは、不要になり解体を待つ倉庫やビルを切断して作る巨大な彫刻、インスタレーションともいえる作品です。上はブロンクスの古い倉庫の壁をカットした作品 Day's End。放置されガランとした建物の薄暗い内部に、カットされた空間から入る光と影の美。
Conical Intersect円錐の交差と題された、建物の壁、床、天井を円錐形にカットしたシーリーズの作品。パリのポンピドーセンターが建設中で、その周りの取り壊し予定の建物を使って巨大な3Dの円錐形がカットされました。今ではそのプロセス、色々な角度から見た円錐のカットや、そこから覗き見える外の景色と、荒れた建物の壁や床とのコントラストを映した写真やヴィデオが残っているだけで、建物はすぐに壊されてしまいました。元々壊される運命の作品・・今ではもう実体がないのに、残された写真とヴィデオが自体が作品として展示される不思議な作品・・
彼はこのような手法を、自分でアナーキテクチャーと呼んでいました。アナーキーなアーキテクチャー。この造語を初めに使ったのは、ロビン・エヴァンスという建築評論家の書いたTowards Anarchitectureという本のタイトルだったそうです。このタイトル自体もル・コルビュジエの本 " 建築へ " Vers une architectureをもじっているとか。
マッタ=クラークと仲間達の興味は、水害や事故で壊された建物を写真に撮るなど、社会問題や建築と環境、リサイクル、自然食品にも及んでいます。早世しなければどんな作品を展開し続けたのでしょうか?
Gordon Matta-Clark "Anarchitecte" Jeu de Paume, 1 Pl. de la Concorde 8e 9月23日まで