L'Ile verte, l'atelier de Jean Fautrier / La vallée aux Loups
8月初めに書いたパリ郊外 "オオカミの谷" の続きです。
オオカミ谷はシャトーブリアンの館と森、そして3百年前から今日に続く植物の栽培で名高いクルー家の土地を利用した広大な樹木園Arboretumが見どころですが、そのほかにもう一つ、生い茂る木々に隠されたとっておきの場所があるのです。リル・ヴェルトL'Ile verte "緑の島" 、雑多な外の世界と切り離されたような、文字通りの美しい緑の島です。
オオカミ谷はシャトーブリアンの館と森、そして3百年前から今日に続く植物の栽培で名高いクルー家の土地を利用した広大な樹木園Arboretumが見どころですが、そのほかにもう一つ、生い茂る木々に隠されたとっておきの場所があるのです。リル・ヴェルトL'Ile verte "緑の島" 、雑多な外の世界と切り離されたような、文字通りの美しい緑の島です。
上の写真は池から入り口の門番小屋方向を撮ったもの。
故意なのか、半野生の草木が一見勝手気ままに生い茂るこの池は、いつ行っても心が洗われるようです。この池越しにフォートリエの家が、緑の島の中に建つように見えます・・実は地続きで島ではありませんが。ブログトップの写真参照!
この家を寄贈されたオードセーヌ県に、徹底的な修復をする予算がないためか、それとも整備を託された庭師が素晴らしいセンスの持ち主だったのか、植物はまるで自然のままの様に乱れ咲き誇っています。こんなに美しい庭にアトリエアがありながら、しかしフォートリエは草木の絵を一枚も描いていません・・・
写真下、バラ園はやはり少し造園されていますが、完全に除草したり刈り込んでいないのが素敵です。
これがアトリエ
こちらが家。家もアトリエもまだ手入れされずに、ツタが絡み放題。窓から覗くと薄暗い中に、椅子や机が放りだされているようで、将来修理されるのでしょうか? しかし新しく綺麗にすると、どうしてもウソ物臭くなるし、修理費や管理費を捻出するため宣伝し、入場料を取るようになり・・・黒山の人だかりで騒々しいジヴェルニーの村やモネの庭を思うと、少々荒れたままにそっとしておいてもらいたいと思います。
この橋を渡ると、池の中に小さな本物の島があります。家の名はこの島から来たのかもしれません。
ジャン・フォートリエ(1898-1964)はとても特殊な画家です。画家としての成功は遅く、生活のために一時絵から離れていたこともあり、1945年Otage "捕虜" のシリーズで一躍名声を得ました。彼は第一次大戦で戦い、第二次はレジスタンスでゲシュタポに捕まり、森の中で行われたレジスタンスの処刑なども隠れて見てしまったらしい。一時期精神科の病院で過ごした事も。ゲシュタポに追われて隠れ住んだのがこの オオカミ谷 だったのです。以後亡くなるまでここで過ごしました。
有名になってもパリの華やかな社交界には背を向けた、ちょっと変わった人だったらしく、彼の絵も、その当時のどんなジャンルにも当てはまらず、後に Informel (フォーマルでない、つまり規格外ということですね)と呼ばれ、新しいジャンルの出発点に。
去年フォートリエの大きな回顧展がパリの近代美術館であったので、珍しい彼の作品を見ることができました。暗いイメージのものばかりで、特に捕虜シリーズは、とても小さい作品なのですが見る者に不安感を与えます。長い間正視できない。紙の上に厚く盛り上がった絵の具、苦しみで歪み、捩じれたような顔・・・個人的にはもっと軽い、上記の静物画シリーズの方が好みでした。
L'Ile Verte 34 rue Eugène-Sinet, Châtenay-Malabry 92019
行き方は8月2日のシャトーブリアンの庭のブログを参照下さい。シャトーブリアン館正門と樹木園の入り口は向かい合っていて、そこから歩いて10分くらい。ちょっとわかりずらいですが、道の角に最近は表示が出ています。
P.S. この家は緑の島と呼ばれる前はVilla Barbierヴィラ・バルビエと呼ばれ、グノーの殆どのオペラや、アンブローズ・トマのハムレットなどの台本で有名な作家、ジュール・バルビエの家で、第二次大戦まで彼の家族が住んでいました。きっと芸術家の間で有名だった家なのですね。
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