11/12/2019

コンク、サント・フォア聖堂のステンドグラス/ スーラージュ


Conques, Abbatiale Sainte-Foy/ Les vitraux de Pierre Soulages

前回スーラージュについて書きましたが、アヴェイロン県には、もう一つスーラージュゆかりの場所があります。それはロデスから4-50㎞のコンク、フランスの最も美しい街のラベル中でも特に美しいと讃えられ、ユネスコの世界遺産のサンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼ルートの要地。その最も重要なサント・フォア聖堂のステンドグラスはスーラージュの作品です。



スーラージュのステンドグラスがある、とだけの予備知識しかなかった聖堂の内部に一歩入って、実は少々戸惑いました。殆ど真っ白なステンドグラスだったからです。何種かの違うガラスを使用して微妙な白-灰色のニュアンスがあり、各ガラス片を固定する鉛線(ですか?)の黒が波のように見えます。カラフルなステンドグランスに慣れた目には、なんとなく物足りないような・・・
聖堂はロマネスクの代表建築ですから、ゴシック以後のような装飾が無いシンプルの極み。元は多彩な色の壁画に覆われていたようですが、今は所々にその名残が微かな灰色の影のように見えるだけ。残っているのは石の壁とアーチ・・・しかし何と素晴らしい!  余分な物もごまかしも無い本物の、ノーブルでピュアな美しさです。じっと見ている内に、なんとなくスーラージュの求めた美が、わかるような気がしてきました。
翌日スーラージュ美術館で彼の作品を沢山見て、彼は素晴らしく趣味のいい上品な人だと思いました。コンクの美しい石の壁に、極彩色の宗教色の濃いステンドグラスを作る気にはならなかったのですね・・


とっくの昔にオリジナルは壊れ、1952年に新しくされていたステンドグラスが、時の文化相ジャック・ラングのイニシアティブで1994年、スーラージュのこのステンドグランスに替えられました。しかしあまりにも " モダン " なデザインなので、村人、美術愛好家、巡礼達の猛反対に会い、署名運動まであったそうです。20年以上たった今、まだ賛否両論あるようですが、大勢は賛の方だとか。村人達も、スーラージュとガラス師が何年もかかって作り出した、不透明な特殊ガラスから溢れる美しい光は、聖堂の美しさをより引き立てると納得しているそうです。
ヨーロッパでは丘の上に美しい旧市街があっても、下に醜い新市街が広がる都市が沢山あります。残念でもそれは現代では避けられない事、ところがコンクは、どこを見ても新建築は見えない中世の街です。それだけ村人たちが団結して、近代化と戦っているのでしょうね。

注: Abbatiale Sainte-Foy は、本当はサント・フォア修道院聖堂とした方がいいのですが、長くなるのでサント・フォア聖堂にしました。

Abbatiale Sainte-Foy    Place de L'Abbaye, 12320 Conques

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