6/26/2021

アブストラクションの女性画家達 No.2

Elles font l'abstraction No.2

間が空きすぎてちょっと新鮮味が薄れてしまいましたが、アブストラクションの女性画家達展の続きです。

アブストラクション/抽象画は1910年くらいから、一般的にはカンディンスキーやモンドリアンが元祖とされていますね。けれど突然彼らが出現したのではなく、1800年代中ごろからそういう動きが色々あり、20世紀初頭に開花したのです。印象派の画家セザンヌも、後半は抽象的な画風になり、後のキュービスト達に大きな影響を与えています。さて女性達はというと、1850年ごろに、当時流行った宗教的なスピリチュアリズムをベースとしたシンボル的な絵を描き始め、彼女たちは自覚していなかったけれど、アブストラクション絵画の先駆けになったというのです。

         
Georgiana Houghton(左) Hilma Af Klint ヒルマ・アフ・クリント(右) の作品のタイトルはそれそれ The omnipresence of Lord, The Eye of God, The Chiristian Religion, The Mohammedain standpoint 等宗教色が濃厚。どうやら宗教と見なされたから社会に容認されていたらしく、抽象画家として正当に評価されたのは最近だそうです。

     

何メートルもの大きな薄い布を蝶のように羽ばたき、体でアブストラクション絵画を表現して大流行したベルエポックのダンサーLoïs Fuller、30年代に未来的なアエロダンスを踊ったGiannina Censiなどのパフォーマンスは、当時の画家達に大きな影響を与えました。特に女性画家は舞台衣装、舞台装置からテキスタイル全体の分野での活躍が目立ちます。バウハウスで女性は全員テキスタイル部に配属されたように、『布』は純芸術ではない、女にやらせろというわけ? ともあれ、この分野での女性の活躍は目覚ましかったのです。

              
                 Helen Saunders                             
私の大好きなソニア・ドローネー。コラージュやテキスタイルデザインがとてもステキです。
下はヴァネッサ・ベル(ヴァージニア・ウルフの姉)。彼女は自宅を、当時としてはアヴァンギャルドな、女性の自由な空間を作り出そうと試みたそうです。彼女のインテリアやテキスタイルの写真が展示されていました。彼女はウルフの本の装丁デザインも手掛けています。
                              
 上下は Barbara Stepanova, 自分がデザインしたファブリックのドレスを着ています。 
        
Lioubov Popovaの繊細な水彩の衣装デザイン。見とれてしまった美しさでした。

特に皆が注目して足を止めていたのが、モーリス・ベジャールの振付で、2人のダンサーが、マルタ・パンの彫刻を中心に踊るヴィデオ。マルタ・パンは蝶番のようなものでムーブメントのある、人体の動きを思わせる彫刻のシリーズを作りましたが、それが素晴らしいベジャールの振り付けで、ダンサーと一体になって、目を見張るような視覚的な効果を生み出しています。このヴィデオ、You Tubで Maurice Béjart, Le Teck で探すと見ることができます。ジャズとマッチしてすごいので必見です !! 


後半1/3は現代の画家達で、そちらの方はあまり面白くなかったので省き、私の大好きな2人の女性画家の作品でブログを終わりたいと思います。ヴィエイラ・ダ・シルヴァとジョーン・ミッチェル。ブログトップの絵もミッチェル(ミッチェルの絵は2つとも1部分だけを拡大しました)です。2人とも、独立してブログに取り上げたい人 !!

Elles font l'abstraction   Centre Pompidou 8月23日まで

関連ブログ :
マルタ・パンの浮かぶ彫刻
マルタ・パンとアンドレ・ヴォジャンスキーのアトリエ・ハウス

6/12/2021

アブストラクションの女性画家達 No.1


Elles font l'abstraction No.1

Cette peinture est tellement réussie qu'on ne la croirait pas due à une femme
This painting is so good you'd never know it was done by a woman
この絵はあまりに素晴らしくて、とても女性が描いたとは思えない』1937年にハンス・ホフマンが、生徒の画家リ・クラスナーの作品を評価した言葉が、展覧会場を入るとすぐに目に飛び込んできました。私と前後して入場した2-3人の女性達から、思わずオーというようなどよめきが・・・批難、不快、不満、軽蔑、苦笑 ? なんてバカな !!
Covidで長い間クローズしていたポンピドーセンターの、オープニング最初の展覧会のタイトルは、Elles font l'abstraction  "アブストラクションをする彼女達" 。男中心の美術界で、女性達がどのようにアブストラクション芸術を担い展開したかという - ヒステリックにならない程度の - フェミニズムの視点からアブストラクションを捉えた展覧会です。


これも入り口にあった彼女達の写真。 見たことのある顔がとても少ないのに驚かされます。当時のメディアに、女性画家の写真が載る事は稀だったとかで、後世の私達の目に触れることが男性画家より少ない・・女性など雑誌に取り上げるとレベルが下がるということだったのでしょうか❕

上は世界大戦後、アメリカで表現主義アブストラクションが認められ、ヨーロッパと肩を並べて活躍しだした画家たちのグループ写真で1951年のライフ誌に掲載されたもの。女性はヘッダ・スターンただ一人で、以下の彼女の言葉が写真に加えてありました。
『彼ら(一緒に写真に撮られたメンバー達)はみなマッチョで、女が写真に加わっていると(記事、及び自分たちの活動を)まじめに受け取ってもらえないと苛立っていました』。それで彼女は後方に追いやられたのか・・?しかし負けるものかと椅子に乗って写真にパチリ。かえって目立ってしまい彼女は一躍有名に。『私の仕事の方より、このバカな写真で私はより有名になってしまったことが残念です。


バウハウスの歴史を通じて、女性は全体の3分の1以上を占め、創立直後は男女平等がほどんど完璧に近かったのだそうですが、半年後に予備課程を終わり、専門分野選択の段階で、各部に女性の人数の割り当てが決められてしまいました。これに対して、グンタシュテルツルの希望で、機織りと合併した女性だけのクラスが設置され、結局女性は予備課程後、自動的に全員このテキスタイル部門に配属されるようになったのだそうです。このテキスタイル部門は、アブストラクションのラボとしてとても重要な発展を遂げ、またバウハウスの大きな収入源となって大成功でしたが、外の部門に進めないのですから、男女不平等甚だしい ‼ 上の写真はバウハウスの教師陣。右から2番めのグンタシュテルツルが、ただ一人の女性教師です。
グンタシュテルツルの素晴らしいタピストリー。

デッサウ校の校長宅に飾られたジェルトリュート・アルンデのカーペット。パウル・クレーのセオリーを展開した彼女の代表作の一つだそうです。校長の家に飾られるのは最高の栄誉なのだとか・・
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Elles font l'abstraction   Centre Pompidou 8月23日まで