10/18/2021

ジャン・デュブュッフェの塔/ イル・サンジェルマン


Tour aux figures de Jean Dubuffet/ L'Ile Saint Germain

シテ島やエッフェル塔を通り過ぎたセーヌ河が、パリの周りを囲む環状線ペリフェリックをちょっと出て蛇行した所に、サンジェルマン島という中州があります。今は広い公園になっていますが、元は自動車ルノーの工場があった島で、その工場跡の土地を90年代に公園にしたもの。その広いグリーンの広場の小高い場所に、一際緑に映えて目立つのがジャン・デュブッフェのこの塔・・・


ただの飾りではなく、実は塔の中に入れるのです。下写真のような、ちょっと悪夢風のデュブッフェらしい迷路になっていて、うねうねと上まで登れます。私の好きなアーティストではないけれど、この迷路はとても面白い!

  Photo by La Tour aux figures

島なのですからもちろん周りは水で、船(高級水上生活者の)が浮かび、川岸に遊歩道もあってなかなか素敵です。パリの中心まですぐなので開発がどんどん進み、またペリフェリックの外は旧市街ほどの建築制限がないため、このようなオフィスやアパート群が沢山建ってしまったのは残念ですが、21ヘクタールの島の中は自然が一杯です。


元工場の建物の一部をわざと利用して花を植えたり、ツタを這わせたり。植物も野草に近い種類を、これも多分わざと野性っぽく生え放題に植えています。
元からあったらしい雑木林をそのまま残しているので、橋を渡ればすぐにビルが並んでいることを忘れてしまえる場所です。

10/10/2021

アンネ・インホフのインスタレーション/ パレ・ド・トーキョー


Carte Blanche à Anne Imhof, Natures Mortes/ Palais de Tokyo    

パレ・ド・トーキョーは常設展示は無く、現代美術、特にアヴァンギャルドな作品の展示が特徴で、私のお気に入りの美術館の1つ。なぜなら超アヴァンギャルドなのでビジターが少なく、予約なしでふらりと行ける事、大きな建物の空間を存分に使っているので、広いスペースを独り占めして、静寂の中で作品と対することができるからです。作品はもうこれは好きか嫌いかで、いくら説明を読んでも何を言いたいかわからないものもありますが、1人のアーティストがエネルギーをつぎ込んで創造した作品に囲まれていると、なにかしら訴えてくるものがある、という感じ・・・


今展示中のアンネ・インホフのインスタレーションもそう。自身の作品と多数のアーティストの作品を、壁や天井をわざとむき出しのままに残して修復された美術館の内装にダイナミックにマッチさせたもので、複タイトルはカルト・ブランシュ、美術館からの白紙委任を受けたインスタレーションです。       

写真ではよく見えませんが、透明不透明、デッサン、印刷、彫刻などで一つひとつ違うパネルを、建物のカーヴに沿って連ねた作品。隣で映写されているヴィデオの光が、故意または偶然に部分的にパネルに反射します。


外のアーティスト達の写真、デッサン、オブジェが、透明、半透明のパネルの、時にはグラフィティーを通して、重なって見えます。

上は私の大好きなジョーン・ミッチェル、下はオスカー・ムリリョ。彼の作品は先日画廊でたまたま見て大ファンになったばかりだったので、嬉しい再会でした。次のブログで取り上げたいと思います。


Carte blanche à Anne Inhof, Natures mortes
Palais de Tokyo, 13 Av. du Président Wilson 16e    10月24日まで

10/02/2021

クリストの凱旋門

 L'arc de Triomphe de Christo

クリストの凱旋門-というか彼が無くなってしまったので、彼のプランに忠実に従って実現した凱旋門のラッピングが、沢山のビジターを集めて大きな反響を呼び、明日終了の予定です。先日 "愛国者" と称する若者2人がよじ登り、祖国の為に死んだ兵士達にと記したフランス国旗を下げることに成功し、兵士を祭る凱旋門がこのようなラッピングに使われるのは侮辱だと抗議するハプニングがありました。また莫大な資金はクリストの自前で賄っているとは本当かウソか、税金が使われていないか? ラッピングの大量の布やロープは、たとえリサイクルだとしても何という無駄ではないかエトセトラ・・・と、予想通りメディアやネットで批評多数!

地球温暖化が待ったなしの大問題の今、こんなにムダしていていいのかな、という気持ちは分かります。また興味のない人にとってはこれほど不必要なモノはありませんし、これは芸術か否か、というのも人それぞれの解釈があり難しいですね。泥沼にはまり込みそうな芸術論は止めて、ただ一つ言えるのは、ノートルダム寺院もヴェルサイユ宮殿も、飢える国民など無視して建てられたという事です。それを是正はしないけれど、あまり色々考えていたら、何も創造できないのも事実・・
ですから硬いことを言わずに、軽い気持ちで見てきました。私のまわりのビジター達も、コロナウィルスが下火になり、良いお天気だったこともあり、布を触ってみたりセルフィーで写真を撮ったりと、みな楽しそうに鑑賞していました。

クリストの凱旋門ラッピング