8/25/2013

グレン・マーカットのインタビュー


Grenn Murcutt, Rencontre avec le plus célèbre et plus puriste des Architectes

“最も有名で、最も純粋主義者な建築家”とのタイトルで、オーストラリアの建築家グレン・マーカットのインタビューが出ていました。建築に限らず広い意味で興味深い内容なので要約を紹介します。

2002年のプリツカー賞受賞者グレン・マーカットは メディアを避けて一般大衆には知られていないが、半世紀のキャリアを通してエコロジーを追求し続け、いまだにエアコンを付けることを拒否し、また建築界の巨人といえる地位を築きながら、テクノロジーに支配されず、ずっと鉛筆で仕事をし続けている珍しい建築家だ。
- コンピューターを使わず、スタッフのいるオフィスも持たず、2013年に仕事ができるのですか?
手紙をタイプするためと仕様書を作るためにコンピューターは持っていますが、それ以外には使いません。私は一人で仕事し、秘書もいないので自分でファックスを送ったり、経理も自分でしますが、マイペースで仕事ができるのでうまくいっています。たしかに私のお客達は半年~2年くらい待たされますが、本当に私と仕事をしたい人は待ってくれます。
- コンピューターを使ったデッサンが嫌いなのですか?
コンピューターを否定するのではなく、単なる道具だと思っているのです。コンピューターを使うと技術面では素晴らしいことができますが、周りを驚かし感心させるようなテクニックを使った建物は、しばしば複雑で無意味です。ロンドンやパリでは、色々なスタイルの建物があっても1つの街としてまとまっていますが、コンピューターを乱用する中国にはこのまとまりがありません。あれは建築の曲芸のようです。
- あなたはデッサンが(建築を)決め、頭脳がそれに従うと言われましたが?
私は、人はその頭脳が気付く前に、手が先にそれを表現すると思っています。コンピューターは目と手のコネクションから生まれる、この思考のプロセスを破壊してしまうのです。私は最終学年の建築課の学生達に、コンピューターを使わずにデザインするように指示しています。彼らには大きなフラストレーションですが、ある卒業生から5年後に“今になって初めて、どれだけあなたの教えが重要だったかわかりました”という手紙をもらったことがあります。

Simpson-Lee House
Boyd Education Centre

- どうしてオーストラリアでしか仕事をしないのですか?
私がいちばんよく理解しているのはオーストラリアだからです。また外国で仕事をするならば、外国にも(自分の)仕事場が必要になり望ましくありません。自分のコントロールを失いたくないのです。私が撒き散らすCO2をミニマムにするために、飛行機をなるべく使わず、乗る時には複数の用事をまとめでできるようにしています。多くの人は、成功するためには高い建物を外国で作らなければならないと思っていますが、私はそのようなトロフィーが欲しいとは思いません。ごく単純なものを自分の国で作り、それに私の最上の物をつぎ込むのが私の一番の喜びです。
- 現代人は家の使い方を忘れているとおっしゃいましたね?
家は固定されて動かないものではなく、船と同じく風や太陽に対してフレキシブルでなければなりません。私の作る建物は沢山の窓や網戸、日除けが、固定または移動式で付いています。風、太陽の動き、その土地の気候、敷地の環境、建物に使う材料を綿密に研究すれば、エアコンがない家も可能なのです。あるお客が、あなたの作った家は月光がちょうど差し込むように作られているので素晴らしいと喜んでくれました。月光の事は考えていなかったのですが、自然の条件を計算して家を作ったらおのずとそうなったのです。ベースさえしっかりしていれば、家は全ての環境に順応するという例です。
(エクスプレス誌より)
 ワイナリー
Grenn Murcutt Hause
The Magney House

オーストラリアはかなり暑いと聞いた記憶がありますが、日本よりずっと土地は広いので、建物のスペースは十分取れますね。蒸し暑い日本の都会の狭い土地で、彼のセオリー通りにクーラー無しの家を作ることができるか、公共の巨大な建物はどうか等の疑問が残るとしても、クーラーの依存度ができるだけ少ない建物を作ることは、地球の未来を考えると重要です。

ここで普通なら彼のサイトを載せたいところですが、もちろんそんなものは作っていないのでしょう。潔い生き方です。

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