L'exposition Simone&Lucien Kroll "Réparer le désastre"
使い捨てが美徳とされた高度成長期の60年代に、リュシアン・クロールはすでに無個性で工場で企画生産された住居に反対を唱え、また人々に先駆けてエコロジーを提唱したパイオニア的建築家。建築と文化財美術館に別の展示を見に行って、ついでに軽い気持ちで入った展示に、すっかり夢中になってしまいました。
ゴージャスでメディアにおもねる建築には興味がなく、ババ・エコロ(ババクール・エコロジスト)、マージナルと思われフランスではあまり知られていない彼は(私も新発見)、この展覧会をするに当たっても、メディアに派手な宣伝をしたり、大掛かりな会場を作らないで ″田舎者の展示” にしてほしいと希望したそうで、学校の展覧会のようなパネルだけのシンプルな会場でした。
″何も壊さず、付け加える″
それらのパネルは数々のテーマ別に説明が進んでゆくのですが、一番感激したのは、醜い郊外住宅を、もっと人間的な住みやすい場所に改築した例。土台の建物をできるだけ残したまま、いかにリフォームするかの説明にはびっくりしました。こんな事が可能だとは思ってもみなかったので、高度成長期に作られた郊外の集団住宅の群れは、取り壊さない限り半永久的に消し去れないと考えていましたから。
クロールの建築の姿勢は ″造園″ 的で、自然とその地域、住む人々のとの関連を重視し、過去と未来も考慮に入れて作るので、フレキシブルで長持ちするのです。そのため住人達との親密なディスカッションの時間を沢山取り、設計に参加してもらう・・・造園師のシモーヌ夫人とずっとコンビを組んで仕事をしています。彼の母国ベルギーでの代表作は、ルーベンの医学部の寮で、ちょうどパリの学生の5月革命の後1969年のことで、学生達が機械で作られて提供される物は真っ平だと言って、リュシアン・クノールに設計を頼んだもの。住み、使う人達との対話から5つの建物が生まれたそうです。
ちょうどこの住民との対話というあたりに来て、一緒に行ったフランス人の友人(小学校の先生です)が、″そうなのよね、ウチの学校で絵や工作、実習の為に大きな机のある広いアトリエを増築したのだけど、設計者は流しに2つしか水道を付けなかった。道具や手を洗うのに、1クラスには30人以上子供がいるって、考えなかったのかしら!″ 教師が設計したら絶対犯さない失敗。それにしてもずいぶん間の抜けた設計者ですが、対話がいかに必要かの最も単純で分かりやすい例でしょう。
クロール夫妻の考え方は素晴らしく共感しますが、写真を見た限りで申し訳ないけれど、平面を嫌い凹凸が多く複雑なのと(説明にはカオスと書いてありましたがその通り)、色使いも、あまり私の好みでなかったのが残念でした。やっぱり本物を見ないとわからないので、何か見てみたいなと思います。
Simone&Lucien Kroll "Réparer le désastre"
Cité de l'architecture & du patrimoine 1 Place du Trocadéro 16e
Cité de l'architecture & du patrimoine 1 Place du Trocadéro 16e