1/31/2017

ポンピドーセンター40周年


Centre Pompidou a 40 ans

今日1月31日は、ポンピドーセンターができてちょうど40年めのお誕生日でした。
パリの中心地に、近/現代美術、図書館、デザイン、音楽、シネマなど総合的な芸術を、沢山の人々が身近に見られるようなユニークな美術館を作りたいという、当時の大統領ジョルジュ・ポンピドーの壮大な夢が発端だったそう。設計は、世界中から集まった700近いコンペで、当時まだ無名だったレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースのコンビが選ばれました。このタイプの建築としては当時革新的な設計で、設計者も大したものですけど、駆け出しの若者を抜擢したフランス政府も大したものです。時代を先取りしすぎて(少なくともクラッシックなパリでは)、1977年の完成当時はパリの景観を台無しにする、醜いとだいぶ批判されました。

ポンピドーの大きな特徴は、建物に必要な柱やパイプが外側に出され、中のスペースはモジュールで広い事。上2つの写真は正面で、エスカレーターもチューブ状で外に付いています。下の写真は裏側で、こちら側にパイプ類が全部集まっています。これらのむき出しのパイプや鉄骨が、ヴィヴィッドなカラーに塗られているのが建物のチャームポイントにもなっているのですが、色はでたらめでなく、ブルーはエアコン、イエローは電気、グリーンは水、レッドは人の流れ(エレベーター、エスカレーター)
 

ポンピドーは工事途中で亡くなり、後を継いだジスカールデスタンは、すんでのところで工事を中止するところだったのだそうです。ジスカールって、フランスの保守的アリストの典型なので、設計が気に入らなかったのですね。当時首相だったシラクが、中止したら辞職すると脅して、目出度く完成しました・・・という話が、今日の新聞に出ていました!

観光客に占領されてしまったようなルーブルと違って、ポンピドーはフランス人の美術館という感じで、そのためかテロのせいで観光客が減っているのに、ポンピドーだけはビジターの数が増え続けています。

1/25/2017

クヌート・ホルシャー/ デンマークの日常使いのデザイン


Knud Holscher/ Design au quotidien

いつも素晴らしいデザインの展覧会を企画してくれて楽しみなメゾン・ド・デンマークで、建築家クヌード・ホルシャーのデザインが展示されています。
クヌード・ホルシャーは、王立デザイン学校でアルネ・ヤコブセンに師事し(ヤコブセンの生徒で今生存している建築家の最後の1人)、卒業後60年代にヤコブセンのオフィスで働き始めてから現在まで、今デンマークで使わるほとんどの物が彼のデザインではないかと思ってしまうくらい、彼のデザインはポピュラーでどこでも見られる日常の必需品。大きいので展示はしてないけれど、例えばバス停、メトロの表示、広告塔兼トイレなども彼の作です。この展示で建築の方は、彼の代表作のコペンハーゲン飛行場B、オーデンセ大学、バーレーン国立美術館、彼の自宅の4点の写真と模型が飾られているだけで、主役は日常のオブジェばかり。
メゾン・ド・デンマークの展示はいつものようにとてもおしゃれ。入り口を入ると、ホルシャーのデザインのオブジェがつり下げられてたオーナメント。彼の代表作の1つはトイレの設備なので、デンと中央に2つに割って中が見える状態の便器が!
街路樹の周りのプロテクション
 
ディナーのテーブルに見立てた展示
上はドアの取っ手と、駅のホームや道路際などにある滑り止め。下も北欧(もしくは世界中)のあらゆる場所で使われているフック、そしてパントーン社から販売されているコップ。
面白いのは、ディナーテーブルの周りには、彼のデザインした椅子に混じって、便器やベビーカーなどが椅子代わりに配置されています。テーブルの上も、お皿の代わりに陶器の洗面台、トイレットペーパーケースが置かれるなどユーモアたっぷり。もちろん全てホルシャーのデザイン。
水彩が好きで、スケッチブックがいくつも展示されていました。

Knud Holscher/ Design au quotidien 
Maison de Danemarck 142 Av. des Champs Elysées 8e 2月28日まで

1/20/2017

パリの "土" の行方


Terre de Paris

大きなビルの工事現場で、土台の基礎工事と地下何階か分の大穴が空けられているのを見たことがあるでしょう? そのとき掘り出される土は、どこに行くのでしょうか? パリとその周辺では毎年2千万トン以上の土が掘り出され、これに新しい郊外線パリ・エクスプレスの建設で更に4千万トンの土が加わりました。この郊外線の廃棄土は、完成2030年まで、75台の大型トラックが毎日2000トンを運び続けなければならない量だそうです。運送に使われる膨大なガソリンや排気ガスの問題に加えて、これらの土は処理に困る、大量の粗大ごみなのです。フランスでは埋め立てという言葉を聞いたことがないので、海に捨てることもできません。そこでこの土を輸送せず、その場で再利用しようという研究がずいぶん前から続いているとのこと。

再利用するにはまず廃棄土の材質の研究から始まります。上はパリ・エクスプレス線の工事の前にボーリングして土質を検査した時のサンプル。多様な土が混じっているのがわかります。左下は不純物を取り除き、土を種類別に分けたもの。右下はそれを固める検査。全く固まらないで砂状のままの物、固まっても形が崩れてしまう物・・右端の瓶は、水とのコンタクトでどう変化するかの検査。陶芸用、農業用などの土はもちろん別にされるのですが、それだけでは消化する量が少なすぎるので、一番大きな再利用の目標は、土を建築資材に使おうというもの。エコロジーの観点から、セメントや石灰を混ぜずにあくまで廃棄土だけを使って!



徐々に粗大ごみだった土が、建築に利用できるような素材に生まれ変わります。上記はその特質や強度を細かに解説しています。そして下が、建築素材として使えるレンガ状に完成した例。去年6月にあるパリ近郊の街で掘り出された廃棄土だけを使用し、同じパリ近郊で(輸送距離が短い)8000個のレンガとして生まれ変わりました。従来のレンガと違って焼かずに作られたので、公害の心配もありません。
 
この家は2005-8年に、基礎工事と丘に隠れている地下部分を掘り起こした土だけを素材に使って作られた家。屋根瓦や外装はもとより、内部の壁床からバスルーム内まで、全部時給自足の素材です。

ここまで徹底してやらなくても、廃棄土が素材の一部に使われるだけでも、だいぶ環境問題に貢献できるでしょう。鉄、セメントと違って高い建物は建てられないそうですが、パリ郊外のナンテール市では、今小学校、幼稚園、図書館を合わせた建物がこの方法で建設中で、完成は2018年とのこと。

1/10/2017

ノエ・デュショフール=ローレンスのデスク

 

Carte blanche à Noé Duchaufour-Lawrence

ノエ・デュショフール=ローレンス(NDL)にデザインを白紙委任して出来上がった書斎セットが、ゴブラン美術館に展示されていました。
昔のフランス映画で、お金持ちや貴族などが、夏が終わって別荘にしている館を引き上げる場面で、召使が家具の上にシーツのような白い大きな布をホコリ除けに掛け、鎧戸を閉めて出発の準備をしているのを見たことはありませんか? 逆にご主人様の到着が知らされると、召使たちはこの白い布を取り払って、館を隅々まで磨き立てるのです。NDLはこのリネンの白いカヴァーの布をヒントに、上写真のデスク、椅子、横長のサイドボードをデザインしました。上質のオーク材をベースに、白いカヴァーの部分はリネン・ファイバーとレザーを使った、全く新しいテクニックで作られたそうです。
シャープでモダンだけれど、白のカヴァーの丸みが優しく、あくまでもブランシェ

そして下は、NDLの展示室から出口まで続く、大ホールのゴブラン織りの展示。窓越しの夕日に映える、花火を散らしたようなデザインの巨大ゴブラン・カーペットが床に敷かれ、誰でも靴を脱ぎソックスで、実際にカーペットの上を歩き体験できます。足が沈み込むような、しかし柔らかすぎず緻密でしっかりした感覚の、リッチな歩き心地でした。

1/02/2017

アンプラント

あけましておめでとうございます
Happy New Year
Bonne Année
Empreintes

北マレに新しく話題のショップがオープンしました。工芸家達の作品を広く一般に紹介し販売しようという、フランス工芸協会のお店です。あまりファッショナブルでなさそうなお役所が、おしゃれな北マレの中心に、超ブランシェでデザインなショップを持つとは素晴らしい企画。″大人″ のインテリアで派手さはないので、投資をケチってルーブルとかの平凡なブティックやどこかのコーナーショップを選んでいたら、埋もれてしまってぱっとしなかったかもしれません。3階+地下1階の元アトリエの建物を丸ごと贅沢に使い、工芸家の説明や制作中の写真付きで美しく展示された作品の並ぶ広いスペースは、まるでギャラリーで芸術品の鑑賞をしている気分。丁寧に一つ一つ手作りされた割には適正価格。工芸家にコンタクトして特注もできそうです。

陶器、ガラス器は、おしゃれで欲しくなるデザインが沢山。プレゼントにしたら喜ばれそう。
人気オーガニックカフェ、シーズンが担当するカフェコーナーもあり、ここでは工芸家達の作ったカップでコーヒータイムが楽しめます。
 


Empreintes     5 rue de Picardie 3e