1/20/2017

パリの "土" の行方


Terre de Paris

大きなビルの工事現場で、土台の基礎工事と地下何階か分の大穴が空けられているのを見たことがあるでしょう? そのとき掘り出される土は、どこに行くのでしょうか? パリとその周辺では毎年2千万トン以上の土が掘り出され、これに新しい郊外線パリ・エクスプレスの建設で更に4千万トンの土が加わりました。この郊外線の廃棄土は、完成2030年まで、75台の大型トラックが毎日2000トンを運び続けなければならない量だそうです。運送に使われる膨大なガソリンや排気ガスの問題に加えて、これらの土は処理に困る、大量の粗大ごみなのです。フランスでは埋め立てという言葉を聞いたことがないので、海に捨てることもできません。そこでこの土を輸送せず、その場で再利用しようという研究がずいぶん前から続いているとのこと。

再利用するにはまず廃棄土の材質の研究から始まります。上はパリ・エクスプレス線の工事の前にボーリングして土質を検査した時のサンプル。多様な土が混じっているのがわかります。左下は不純物を取り除き、土を種類別に分けたもの。右下はそれを固める検査。全く固まらないで砂状のままの物、固まっても形が崩れてしまう物・・右端の瓶は、水とのコンタクトでどう変化するかの検査。陶芸用、農業用などの土はもちろん別にされるのですが、それだけでは消化する量が少なすぎるので、一番大きな再利用の目標は、土を建築資材に使おうというもの。エコロジーの観点から、セメントや石灰を混ぜずにあくまで廃棄土だけを使って!



徐々に粗大ごみだった土が、建築に利用できるような素材に生まれ変わります。上記はその特質や強度を細かに解説しています。そして下が、建築素材として使えるレンガ状に完成した例。去年6月にあるパリ近郊の街で掘り出された廃棄土だけを使用し、同じパリ近郊で(輸送距離が短い)8000個のレンガとして生まれ変わりました。従来のレンガと違って焼かずに作られたので、公害の心配もありません。
 
この家は2005-8年に、基礎工事と丘に隠れている地下部分を掘り起こした土だけを素材に使って作られた家。屋根瓦や外装はもとより、内部の壁床からバスルーム内まで、全部時給自足の素材です。

ここまで徹底してやらなくても、廃棄土が素材の一部に使われるだけでも、だいぶ環境問題に貢献できるでしょう。鉄、セメントと違って高い建物は建てられないそうですが、パリ郊外のナンテール市では、今小学校、幼稚園、図書館を合わせた建物がこの方法で建設中で、完成は2018年とのこと。

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