7/21/2017

パリの田舎散歩/ ラ・カンパーニュ・ア・パリ


La Campagne à Paris, une promenade dans le 20e arrondissement

今年は6月初めから暑い日が続いて、パリに珍しい猛暑も断続的にあり、7月14日祭(パリ祭)を過ぎて、街はいつもながら急速に空っぽになりつつあります。でも夏時間で夜は10時過ぎまで明るく、どこのカフェもテラスを一杯に広げ、車も少ないパリの夏も捨てがたい魅力。“田舎“ とはちょっと大げさだけれど、パリにまだヴィレッジが残っていた頃の名残の地区を散歩してみましょう。


場所はパリの東の端、メトロのPorte de Bagnoretポルト・ド・バニョレとPelleportペルポーの間くらい出発点はどこでもいいのですが、一番分かりやすいのがポルト・ド・バニョレ駅を出て、大通りから写真のような階段を上がった丘の上がこのヴィレッジ。サークルになって一回りできる通りRue Irénée BlancとRue Jules Siegfriedを中心に、狭いながら花と緑が一杯の小さな家が並んでいます。前庭よりもう少し大きい庭が家の後ろにあるようですが、通りからは残念ながらほとんど見えません。
このあたり一帯は1908年から、11年、28年と分けて、低所得労働者用の住宅街として建設されました。この建設会社の名前が面白くてラ・カンパーニュ・ア・パリ社、文字通り “パリの田舎“ 社です。急いで歩くと、何だこれだけ!と思うかもしれない小さな田舎・・
    
    
    
    
    

 ネコものんびり散歩・・

古めかしい街灯のある階段の一つを降りてきたら、ステキな雑貨を扱うブティックがありました。その名もぴったり、Le Villageル・ヴィラージュ(=ヴィレッジ)
Le Village   2 rue Etienne Marey 20e

La campagne à Paris:
rue du Capitaine-Ferber,rue Pierre-Mouillard,boulvard Mortier, rue Géo-Chavezに囲まれた小高い地区、rue Paul-Strass, rue Irénée-Blanc, rue Jules-Siegfried,これに階段のあるrue Mondonville, rue Georges-Perec,rue du Père-Posper-Enfantin, rue Camille-Bombois. 歴史的保存地区に指定されています。
ここからメトロPelleportに向かって、小さな建物が並んだ静かな通りが昔風、何か発見がありそう・・

7/12/2017

鳥取砂丘の写真家植田正治/ ヨーロッパ写真館


Shoji Ueda/ Maison Européenne de La Photographie

″記憶と光″ というタイトルで、日本の写真家達の作品展が開催中です。これは日本の大日本印刷社(DNP)が、1994-2006年の間に11回に分けてパリのメゾン・ヨーロピエンヌ・ド・ラ・フォトグラフィー(日本ではヨーロッパ写真館と呼ばれているのですね、以後MEP)に寄贈した写真家21名の約540点の中から、350点を選んで展示しているもの。こちらではなかなか見られない写真家の作品を鑑賞することができます。
この中で一番ハッとさせられ、魅了されたのが植田正治さん(1913-2000)の作品。評には日本を代表する有名な写真家と出ていましたが、不勉強の私にはこれが初めての出会い。アマゾン・フランスで日本語板の本がいくつも販売され、フランスで出版された写真集まであるというのに!

                                                                                   Amazone.fr
                                                                                        Amazone.fr
                                                                                     Amazone.fr
植田氏は生涯故郷の鳥取をベースに活動し、砂丘シリーズが有名。MEPにあったのも砂丘のシーンでした。白い砂をバックに、まるで劇のように人を配置し、きっちり計算された、でも単純な構図、モノクロームのポエム、影、そしてそこはかと漂うユーモアも・・モデルは家族や、ご近所の人達もいるのかなと思ってしまう、暖かみのあるアプローチ。傘、山高帽などの小道具が登場し、帽子シリーズはマグリット風。



ポスターになったこの写真も砂丘シリーズ。この男性ともう一人の女性をモデルにした3,4点の1つで、男性が手に持っているのは写真ではなく、四角な枠。この枠を通して、バックの砂丘のうねりの後ろにいる女性を撮ったもの。わざとスカートを枠からはみ出させて、トリックだとわかるようにしてある。ポスターはズームで、本物は広い砂丘の中に、ぽつんとこの人が立っている構図です。
因みにこの男性のファッションがすごく素敵でした。きっと植田氏はおしゃれな人だったのでしょう。



日本の写真は、などとろくに知りもしないで僭越、それに一般論は絶対良くない・・けれど敢えて言うと、日本の芸術全般、2つの両極端の特徴があるように思われます。中性的、軽く透明繊細クリーン、究極のシンプルと、その反対に、恐ろしく怖く醜く、不安を掻き立てられ、ゾッとするほどセクシーだったりのウェットで陰の性格。豊かな才能と相まってこれが存分に発揮されると、欧米人には真似のできない作品が生まれる。だからこちらの人は日本の芸術に惹かれるのではないかしら・・と、パリに住んでいてよく思う事があります。植田さんの作品は前者の部類、ほかの方の作品に後者のタイプがありました。でもこの両極端は紙一重でもあるのです。植田氏がもし怖い写真を撮ろうとしたら、ポエジー溢れる真に恐ろしい写真を撮ったかもしれない・・そんな微妙さを感じさせるのも日本の芸術家の凄いところでしょうか。

ところでDNP社の寄贈は、ヨーロッパで最も重要な日本の写真家のコレクションで、最近益々注目される日本の写真の紹介に大きく貢献し、DNP社長はパリの名誉市民の称号を与えられているそうです。けれどこういう写真展は、まず日本で大々的にやって、それがパリ、ニューヨークと世界に広まるのが理想では・・それとも日本で過去にやっているのかしら、日本のニュースに疎くなっているのでわかりません。



調べていたら、鳥取に植田正治写真美術館というのがありました。ご当人から寄贈された1万5千点の写真を所蔵していて魅力満点の上、器の建物も著名な建築家の作で、伯耆富士と呼ばれる大山と、水面に写る「逆さ大山」を望むことができるそうです。今度ぜひ行ってみたい美術館!

Mémoire et Lumière, Maison Européenne de La Photographie 5-7 Rue de Fourcy 4e  8月27日まで https://www.mep-fr.org/
植田正治写真美術館 鳥取県西柏郡伯耆町洲村353-3 http://www.japro.com/ueda/

7/04/2017

ヨハンナ・グリクセンのスカンジナヴィアテキスタイル


 Johanna Gullichsen/ Textile designer finlandaise

古い肘掛け椅子の修理中です。もう少しで土台が出来上がるので、修理で一番楽しい仕事、表用の布を探し始めました。座り心地の良し悪しや型崩れ等、内部の土台が椅子の命だけれど、椅子の性格を決めるのはこの表布です。材質、色、デザインで、華麗にも、ロックンロールにも。アンティック辞典の絵と比べたところ、背以外はルイ15世風、でもオーナメント無しのどっしりした田舎風、1800末/1900年初めのものかな?というクラッシックな椅子なので、ちょっぴり崩してモダンにと、フィンランドのテキスタイル・デザイナー、ヨハンナ・グリクセンの生地をただ今考慮中。


プリントでなくて織りで、例えばホワイトでも、裏糸のブラックが見えて微妙なグレイに。表裏とも使えるリバーシブル、でも表と裏は色が逆になります。全部フィンランドで織られているのでお値段も上等ですが、安い工場で作ったのと格段に違う品の良さが素晴らしい。


デザインは99%決まっていて、上のソファーの柄。色も多分これ・・・でも下のブラックの裏側(ホワイトがベースになる)もモダンで捨てがたい・・それともモダンすぎて強すぎる? 悩みに悩んでいるところです。パリにヨハンナ・グリクセンのブティックが無いので、ちょっぴりでもサンプルがもらえず、想像してみるだけなのが苦しい。日本にも彼女のファンが沢山いるようですね。


Johanna Gullichsen   http://www.johannagullichsen.com/