7/12/2017

鳥取砂丘の写真家植田正治/ ヨーロッパ写真館


Shoji Ueda/ Maison Européenne de La Photographie

″記憶と光″ というタイトルで、日本の写真家達の作品展が開催中です。これは日本の大日本印刷社(DNP)が、1994-2006年の間に11回に分けてパリのメゾン・ヨーロピエンヌ・ド・ラ・フォトグラフィー(日本ではヨーロッパ写真館と呼ばれているのですね、以後MEP)に寄贈した写真家21名の約540点の中から、350点を選んで展示しているもの。こちらではなかなか見られない写真家の作品を鑑賞することができます。
この中で一番ハッとさせられ、魅了されたのが植田正治さん(1913-2000)の作品。評には日本を代表する有名な写真家と出ていましたが、不勉強の私にはこれが初めての出会い。アマゾン・フランスで日本語板の本がいくつも販売され、フランスで出版された写真集まであるというのに!

                                                                                   Amazone.fr
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植田氏は生涯故郷の鳥取をベースに活動し、砂丘シリーズが有名。MEPにあったのも砂丘のシーンでした。白い砂をバックに、まるで劇のように人を配置し、きっちり計算された、でも単純な構図、モノクロームのポエム、影、そしてそこはかと漂うユーモアも・・モデルは家族や、ご近所の人達もいるのかなと思ってしまう、暖かみのあるアプローチ。傘、山高帽などの小道具が登場し、帽子シリーズはマグリット風。



ポスターになったこの写真も砂丘シリーズ。この男性ともう一人の女性をモデルにした3,4点の1つで、男性が手に持っているのは写真ではなく、四角な枠。この枠を通して、バックの砂丘のうねりの後ろにいる女性を撮ったもの。わざとスカートを枠からはみ出させて、トリックだとわかるようにしてある。ポスターはズームで、本物は広い砂丘の中に、ぽつんとこの人が立っている構図です。
因みにこの男性のファッションがすごく素敵でした。きっと植田氏はおしゃれな人だったのでしょう。



日本の写真は、などとろくに知りもしないで僭越、それに一般論は絶対良くない・・けれど敢えて言うと、日本の芸術全般、2つの両極端の特徴があるように思われます。中性的、軽く透明繊細クリーン、究極のシンプルと、その反対に、恐ろしく怖く醜く、不安を掻き立てられ、ゾッとするほどセクシーだったりのウェットで陰の性格。豊かな才能と相まってこれが存分に発揮されると、欧米人には真似のできない作品が生まれる。だからこちらの人は日本の芸術に惹かれるのではないかしら・・と、パリに住んでいてよく思う事があります。植田さんの作品は前者の部類、ほかの方の作品に後者のタイプがありました。でもこの両極端は紙一重でもあるのです。植田氏がもし怖い写真を撮ろうとしたら、ポエジー溢れる真に恐ろしい写真を撮ったかもしれない・・そんな微妙さを感じさせるのも日本の芸術家の凄いところでしょうか。

ところでDNP社の寄贈は、ヨーロッパで最も重要な日本の写真家のコレクションで、最近益々注目される日本の写真の紹介に大きく貢献し、DNP社長はパリの名誉市民の称号を与えられているそうです。けれどこういう写真展は、まず日本で大々的にやって、それがパリ、ニューヨークと世界に広まるのが理想では・・それとも日本で過去にやっているのかしら、日本のニュースに疎くなっているのでわかりません。



調べていたら、鳥取に植田正治写真美術館というのがありました。ご当人から寄贈された1万5千点の写真を所蔵していて魅力満点の上、器の建物も著名な建築家の作で、伯耆富士と呼ばれる大山と、水面に写る「逆さ大山」を望むことができるそうです。今度ぜひ行ってみたい美術館!

Mémoire et Lumière, Maison Européenne de La Photographie 5-7 Rue de Fourcy 4e  8月27日まで https://www.mep-fr.org/
植田正治写真美術館 鳥取県西柏郡伯耆町洲村353-3 http://www.japro.com/ueda/

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