10/25/2020

隈健吾氏のギャラリー/ アンジェのカテドラルの修復

                                   by ministry of curture
Une galeire de Kengo Kuma pour la protection du portail de la cathédrale d'Angers

アンジェのカテドラルの正面を保護するギャラリーの建設に、日本の建築家隈健吾氏が選ばれました。ここまで到達するまでには、千年の長い長いお話があります。

2009年、このカテドラル・サン・モーリスの正面を飾る旧約聖書の彫刻群を、簡単な言葉で言えば≪大掃除≫中に、昔々保存の為に塗られた塗料と、長年積もった排気ガスや埃の下から、ポリクロームの彩色が現われ、文化省や歴史建造物保護機関、美術関係者が騒然となりました。

       by ministry of curture
フランスで教会に入ると、ステンドグラス以外、中は灰色やベージュの石の色一色で、暗く荘重な雰囲気ですね。でもそれは壁や柱に塗られ描かれた絵の具の色が落ちてしまったためで、元は柱が赤、青、緑、金色に塗られ、王や諸侯の紋章や、聖書の場面が壁にポリクロームで描かれていたのです。よく見ると壁や柱に、微かな色の跡を見ることができます。教会内部に残っていたり、美術館で見られる石や木の聖人像やマリアも、色が褪せているとはいえ、かなり極彩色の色付きが沢山ありますね。教会の外側の彩色が残っている例はとても少ないので、皆が色めき立ったのです。

      by ministry of curture   
全部で7層の色があり、一番古い層はカテドラル建設の12世紀の層-これは10%くらい、例えば1617年に雷が落ちて壊れ、沢山の彫刻が作りなおされ、色も塗り替えられています・・そんな記録まで残っているのですね。
なぜ外壁の彩色が珍しく残っているかというと、カテドラルの正面に、13世紀に付け足されたギャラリー(僧院の回廊のような)が雨風を防ぎ、1807年まで色を保存していたからなのです。1807年にこのカバーの役目を果たしたギャラリーが壊されました。この時、彫刻を守るために保存塗料がベタベタと塗られ、その下にポリクロームが隠れているとは、2009年の大掃除まで気が付かなかったのです。

        by ministry of curture
2009年の発見から10年間、お役所間のすったもんだの末(1000年も前の建物ですもの、10年くらいはたいしたことない?)去年でしたか1年間かけて、残っている色を保存し彫刻の修理を完了。風雨にさらしておけないので、仮のカバーが掛けられ、修理中はアンジェの市民は櫓に上って、彫刻群を目の前に見る事ができました。上写真が現在の仮カバー。
このポリクロームを保存するためには絶対にカバーが必要で、中世と同じものを作り直すには、十分な資料が残っていないとか・・多分コツコツ石を積み重ねる資金、時間,、根気、職人なども足りないのでしょう。美しく現代的なギャラリーを建築するべく、世界の建築家の中から隈研吾氏が選ばれたという次第。


焼け落ちたノートルダムの尖塔を、全く新しい物にしようというマクロン大統領の意見は、ごうごうたる非難で≪昔と全く同じ塔にする≫に落ち着きました。新しい建物ができるたびに、世論とメディアの大批判が起きるフランスです、隈氏も大変ですね!でも多分フランス文化省のチョイスは妥当、彼ならば、アグレッシブな宇宙船のような醜い建物を付けないだろう・・と期待しましょう。
つい2日前のニュースで、まだデザインは発表されていないのか、見つかりませんでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿