10/14/2020

太陽王のバレー・オペラ≪ル・バレー・ロワイヤル・ドゥ・ラ・ニュイ≫

       photos by Théatre des Champs Elysées
Le Ballet royal de la nuit au Théatre des Champs Elysées

ル・バレー・ロワイヤル・ドゥ・ラ・ニュイは、1653年に上演されて以来ずっとお蔵入りしていたものを、2017年にバロックでは定評のあるノルマンディーのカーン劇場と、ヴェルサイユ宮殿のロイヤルオペラ劇場で再現され、大好評で現代に蘇りました。今秋はパリのシャンゼリゼ劇場での公演です。
1653年の Le ballet de la nuit 直訳すると≪夜のバレ―≫は、フロンドの乱の直後、15才の若いルイ14世の地位を確実にするために、宰相マザランが作らせたオペラで、政治的な意味合いがとても大きいイベントだったそうです。現代の私たちにとっては、バレーを政治の手段に使うなんて、なんと優雅な!!  まあテレビもツイッターも無かった時代なので、そういう事になるのでしょうね。


ではなぜ夜のバレーかというと、延々3時間以上続く夜/黒がベースのシーンが前座の役割を果たして、最後に太陽に扮したルイが登場し、闇を一掃して踊るシーンを際立たせるためなのです。このプロパガンダは大成功でしたね。それ以後太陽王と言えばルイ、が定着したのですから。因みにルイ14世は子供のころからダンスが好きで、宮廷人達のお世辞を割り引いても、事実上手だったようです。

   photos by Théatre des Champs Elysées
音楽はIssac de Bensarade、Antoine de Boësset、Jean de Cambefort、Louis Lambert の4人が担当し、加えてルイジ・ロッシのオルフェオと、フランセスコ・カヴァリの恋するヘラクレス2つのオペラの歌の一部、計45の長短とりまぜたシーンが展開します。初演はプロの歌手、ダンサーに加えて、登場人物は王家のメンバーが演じました。


350年以上隔たりのある現代版は、きっとバラバラになったり欠けていたのでしょう、セバスチャン・ドゥーセが丸4年情熱を注ぎこんでアレンジし直し、彼自身が指揮を担当。また出演者は歌手の外、数人のジャグラーと大勢のアクロバット達がダンサーとして登場しています。ですからダンスはアクロバット・ダンス。
 

男性がドレスを着るシーンがいくつもありました。高い櫓に乗って歌った "夜" の裾から文楽風の人形が出てきて、不思議な手の動きだけのダンスを、夜と全く同じくダブルで演じます(トップの写真参照)。夜のドレスの上半身は、かみしも(裃)からのインスピレーションに違いない‼ ルイ14世役のキモノ風の衣装など、日本文化の影響があちこちに・・黒子風のトリックで後ろから手を出し、まるで手が4本あるような、手だけのダンス場面も何度かありました。


お互いの肩に乗って垂直に3人立ち、その一番上の人が、あちらからこちらへと飛び移ったり、頂点から落ちるのを下で受け止めたり等々のアクロバットが特に後半激しくなり、高い所の嫌いな私はハラハラして、音楽に集中できず少々不満。実際にミスが1回あり、トップの人が落ちましたが、ミスした場合の訓練もしているのでしょう、仲間の助けもあり、優雅に落ちて優雅なポーズで着地し、舞台は少しも乱れず。しかしなぜオペラにアクロバットまで持ち込み、変わった演出にしなくてはならないのか、演出のエスカレートは限りがなく、私としては少々疑問なのですが・・・そう思ったのは私だけなのか、メディアは全部絶賛していまし。確かにバロックの時代、オペラは高尚なものでなく、楽しむ余興だったので、魔女が空を飛んだり、怪物が飛び出したりと奇抜な仕掛けを好んだので、アクロバットもけっして突飛な発想ではないのです。


関連ブログ : 恋するヘラクレス、エルコーレ・アマンテ 

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