7/15/2021

フィガロの結婚/ エクス・アン・プロヴァンス音楽祭 No.1

 

Les Noces de Figaro/ Festival d'Aix-en-Provence

フランスは5-6月ずーっと、北3分の2は気温が上がらず大雨や洪水も度々、それなのに地中海側はカラカラ天気が続いていました。それで雨のパリを脱出して、太陽を求めてプロヴァンスに行こうと思い立ちました。でもどこへ? ちょっと閃いて、エクス・アン・プロヴァンス音楽祭の予約状況をチェックしてみたら、オォ! 安めの切符がまだ少し残っています。宿泊の方もリーズナブル価格のが見つかりました。Covidのせいで国外からのツーリストが少なく、直前にこんな奇跡的な事もあり得るのですね~! エックスの音楽祭は、新しく若々しい演出が多くて、一度見たいと思っていた念願が叶い、フィガロの結婚とファルスタッフ、2晩続けて楽しみました。上演はアルシュヴェシェ劇場(元大司教館の中庭)なので、屋外というのもCovid禍には好都合。

これが入り口前。ここにたどり着くには切符と所持品のセキュリティーチェック、PCR検査の陰性、又はワクチン2回終了、又は感染して完治した、のいずれかのCovid証明を見せてやっと入れるのです。開始は21:30からで、ゆっくり夕食してから来られるようにとの配慮でしょうね、プロヴァンスの夏の贅沢な時間の使い方・・・時計を見なかったのですが、フィガロのカーテンコールが終わったのは、多分夜中の1時くらい。


これが開幕前の舞台。序曲はこの状態で始まり、モーツアルトの時代風のコスチュームとコメディア・デル・アルテがミックスして、無言の俳優達がコミックな動作で、ベッドを中心に超スピードで動き回ります。序曲にぴったりマッチしたパントマイムか踊りのようで、これだけ独立してもとても楽しいパフォーマンス。このオープニングで、すっかり愉快な気分に。 
幕が上がると舞台は左に伯爵夫妻の寝室、右にサロン、その間にあるのが洗濯機やアイロン、汚れ物の袋などがある洗濯室と、3つの部分に区切られています。特にこの平凡な電化製品達が演出のキーポイントで、ケルビーノが中に入ったまま洗濯機が回りだしたりと、とてもコミック。演出は以前このブログで取り上げたアイーダの演出家ロッテ・ド・ベール。歌手達が若く、動きが早く、軽く、皆がはまり役のスタイルな事もあって、ちょっとドタバタが、紙一重でイヤミになりません。

            by Festival d'Aix-en Provence
全員、オペラ歌手はイコール素晴らしい俳優である事を証明する演技。あんなに動きながら、なにげなくモーツァルトのアリアを歌ってしまって、すごい!! 
演出のド・ベール嬢は、セクシーな観点からのフェミニズムをメインテーマに、地位を笠に着て好き放題に好色な伯爵、見捨てられた伯爵夫人、すっぱ抜きのスキャンダル #me too 風で、終始男性性器がやりすぎ気味に登場します。でもロッテ・ド・ベールのさじ加減が適切なのか、歌手の品格と演技力のおかげか、下品にならず、大笑いの場面もあったり・・・私の大好きな若手メゾソプラノ、ケルビーノ役のレア・デサンドル(写真上)は、歌も演技も最高。ちょっと同情してしまうくらい、セックス・ギャグを演じなくてはならないのに、かわいい !! 太った大歌手には不可能なパフォーマンスです。

   by Festival d'Aix-en Provence
   by Festival d'Aix-en Provence
ボーマルシェの原作には副題があってLa Folle Journée, ou le Mariage de Figaro 日本訳『狂おしき一日、又はフィガロの結婚』。この狂おしき、はちょっと古風過ぎて、例えば "狂った一日" くらいが適当な気がしますが、ロッテ・ド・ベールの演出は、文字通り狂った一日です。でも休憩後の後半は、私はいまいち。アイロンや洗濯機と同様、女性を意味するつもりらしい編み物(不満 !! )、ニットが登場し、最後は全員が編み物に専念するのです。これは説得力がないから笑えない、つまらない。写真の巨大な、二ットの木かお化けは、空気で膨らんでパフォーマンスとしては面白いのですが、演出家が何を言いたいか、残念ながら私にはよくわかりませんでした。

上は休憩の時に、舞台側から撮った写真。アルシュヴェシェ劇場に隣接のサンソーヴェール大聖堂の塔がちょっぴり見えました。

尚このフィガロは、嬉しい事にArte.tvで、2022年1月8日まで、好きなだけヴィデオで見ることができます。

関連ブログ : 観客のいないアイーダ

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