7/31/2013

ロルナ・シンプソンのモノクロームの世界/ジュ・ド・ポーム


Lorna Simpson au Jeu de Paume

ジュ・ド・ポームで開催中のロルナ・シンプソンの作品展を見て来ました。
60年代にアフロ・アメリカンの女性として生まれたコンディションからくる歴史、社会、階級、セックス、記憶、フィクションなどの沢山のテーマが絡み合い、作品の意味するものはなかなか複雑で理解が難しいのですが、殆どがモノクロームの作品自体は、ストレートでシンプルな美しいものでした。作品とは切り離せないポエムのようなコメントが付けられ、またビデオ作品のサウンド(ピアノの音と口笛)が会場内に流れ、それも彼女の写真と切り離して考えられません。50年代のアフロ・アメリカンのカップルの写真をネットで買い、それと同じポーズで撮った自分の写真(女装と男装)を混ぜた作品、鏡を使って5つのイメージが重なったチェスをする自分と男性(彼女の男装)のビデオ、古いインスタント写真を集めたものなど興味深く、もう少し沢山の作品を見て作者の事をもっと知りたいと思う展覧会でした。
91日まで。8月中も展示している数少ない特別展です。

ポスターにもなっている一番美しい写真

Lorna Simpson    Jeu de Paume  1place de la Concorde 8e

7/29/2013

デュラフォア通り/20世紀初の労働者住宅の街


Autour de la Rue Dieulafoy

13区のビュット・オ・カイユについて以前買きましたが(626日参照)、今日はその丘を下り、今は地下を流れているビエーブル川の谷に当たる地区について書きたいと思います。オスマンのパリ大改造で川は地下に埋められ、その乾いた土地に、1900年始めから労働者用の安価な一戸建ての家が建てられ、幾つもの通りがそっくり現在も残されているのです。当時の庶民住宅用の建築のサンプルが集まっていて興味深く、また通りの名前にpeupliersポプラやmoulin水車などが付いているように、昔は田園だったこの地区が、高いビルも(後ろには見えても)大通りもなく、現代人の目にはパリの中で田舎を感じられる地区です。
Rue Dieulafoy デュラフォワ通り
この通りは1921年に作られ、建築家のアンリ・トレガルによって、当時としては大いに文化的だった浴室、洗濯室、ガレージ付きの富裕階級向けの家が両側に建てられました。


Rue Henri- Pape アンリ・パプ通り
建築家のアンリ・ルベルサが、1909年から、道の偶数側だけに建てた協同組合員用の家。道全体の写真を取り忘れたのですが、下写真と同じ家がずらっと並んでいるのは壮観です。
タイルの装飾や壁の色、窓のフェンスなどが微妙にが少しずつ違っているだけ。


一戸建てとイギリスのセミ・デタッチのような住宅の通りは、その外Rue Moulin des Près ムーラン・デ・プレ通り、Rue Ernest et Henri Rousselle エルネスト・エ・アンリ・ルーセル通り、Rue des Peupliersプープリエ通り、Square des Peupliersプープリエ・スクエアなどにも。


最寄りのメトロはTolbiacかMaison Blanche。その外にかわいいミニバスが、デュラフォワ通りの角とAlésiaアレジアを繋いでいます。小回りが利くので小さな道ばかり選んで通り、ちょっとよけいに時間がかかるけれどもおもしろく、メトロのチケットと共通。

7/25/2013

ペリエのポスター

プシュッとする水、サヴィニャック

Perrier, c’est fou

ペリエという会社名は1906年からですが、天然ミネラルウォーターとしてナポレンオン3世の認可を受け商品化されたのは1863年なので、今年は150周年になります。年間約10億本を生産し、その50%を世界の140カ国に輸出し、ミネラルォーターとしては世界1だそうです。アメリカといえばコカコーラ、フランスでそれに匹敵するのはペリエでしょうか。どちらの会社もパブリシティーが上手で、デザインの歴史に残るポスターを作っているのが共通しています。
1870年に初めてのキャッチフレーズ « Princesse des eaux de table »、テーブルワインならぬ“テーブルウォーターのプリンセス”(ちょっとフェミニンすぎるけれど、ベルエポックらしい)が登場。1936年にイラストレーターのジャンガブリエル・ドメルグが“ペリエ・ガール”を使ったポスターを発表。キャッチフレーズは« Perrier, c’est fou »“ペリエはクレージー” や、音がかわいい« l’eau qui fait pschitt »(フタを開けると)プシュッとする水”などが大ヒット。レイモン・サヴィニャック、エルベ・モルヴァン、ベルナール・ヴィルモを始めとして、最近はポップなレイ・リヒテンシュタイン、ギャラリー・ラファイエットのパブリシティーをずっと担当しているジャンポール・グードなど、有名イラストレーターのポスターが素敵です。

サヴィニャック
ベルナール・ヴィルモ
エルベ・モルヴァン
レイ・リヒテンシュタイン
ジャンポール・グード
この夏のメトロのポスター、アンディー・ウォーホール

      ポスターを集めた150周年記念の本 « Perrier, c’est fou »が出版され、販売中。

7/23/2013

ル・モンサンミッシェルの新ブティックが左岸に


La nouvelle boutique Le Mont Saint Michel 

ル・モンサンミッシェルがサンジェルマンのマビヨン通りに、左岸で初めてのブティックをオープンしました。内装は3人の女性のデザイン・オフィス、ハンセン・フェートリー・ビエール社が担当。



ル・モンサンミッシェルはちょうど今年で創立100年の歴史を持つ、ニットのスペシャリストです。1913年に有名なモンサンミッシェルの島近くに、カロリーヌ・ルサッフルがLes Tricotages de Aaレ・トリコタージュ・ドゥ・アァというニット工場と、父親や夫を戦争で亡くし一人になった女性のための学校を作ったのがルーツとなり、1964年にはカロリーヌの孫のパトリス・ミランが、最新式の織り機を設置し、モントラン城を買い取り工場のベースを移しました。1998年に父の跡を継いだアレクサンドル・ミランは、伝統的な高品質の仕事着を作っていたル・モンサンミッシェル社を買収し、歴史あるブルターニュの2つの工場の貴重なノウハウをミックスし、ネオ・クラッシックなコレクションのブランドを展開しているのが現在のブランドです。昔からの織りのテクニックを使っているので、デザインはヴィンテージ・ニットのよう。その特殊なデザインは根強いファンを獲得しています。



Le Mont Saint Michel  
Hansen Feutry Bihr       http://www.hansenfeutry.com/

7/21/2013

ラ・クロワ・エ・ラ・マニエール、昔ながらの布とクロスステッチの専門店


La Croix et la Manière

フランス人がこの店の名前を聞くと、すぐに思い浮かべるのはLa croix et la banière 、とても難しい事を意味し“クロワ・エ・ラ・ニエールでやっと実現した”などと言います。語源はキリストの十字と騎士達のバナーを掲げて戦った十字軍の困難な戦いだそうですが、十字はクロスステッチの意味もあり、続くバニエール()は代わりにマニエール(方法、作風)にもじって言葉遊びをしています。全体的には一生懸命手作りするという含みもあるのでしょう。
“ラ・クロワ”即ちクロスステッチが専門ですが、“ラ・マニエール”が示すように、材料となる布地や紐、テープ類、ボタンなどの品揃えが素晴らしく、どれも伝統的に昔から作られているものだけを集めているので、まるでヴィンテージショップのよう。ショップというよりは、アルチザンのアトリエの雰囲気です。


どの材料も刺繍以外の手芸や、インテリアのデコレーションにぴったりですし、昔風ナプキンや、オーナーのモ二―ク・リヨネがヨーロッパ各地から集めた伝統的な小物は、プレゼントとしても最適。充実したクロスステッチ関連の本は、インテリアの参考としても欲しくなります。

La Croix et la Manière   36 rue Faidherbe 11e  http://www.lacroixetlamaniere.com/accueil/

7/19/2013

カフェ・ロミ


Café Lomi

パリの伝統的なカフェと違ったカフェが増えていると以前書きましたが(528日のカフェ・クラフト参照)カフェ・ロミもその一つ。コーヒーのロースト専門店で、ホテルやレストランのプロを対象とした、こだわりのコーヒーの講習会を催しています。第一に重要なコーヒー豆が、どこでどのように作られ、乾燥され、どのようにローストするか、全てのステップをコントロールし、最高の豆を、最適な機械を使って入れるコーヒーが、ここのコンセプトです。日本の専門店ならば、ずっと前からやっていたことのようですが、パリではこんなにカフェ文化があるのに、案外荒っぽいコーヒーの入れかたをしているみたい・・・。時にはアマチュア向けの講習会もあり、ブレンドコーヒーの量り売りもしています。
いただいたコーヒーはとてもよい香りと、コクのあるまろやかな味、ホームメードのお菓子は、普通の家庭で作ったような素朴な味で満足でした。

ラボのようなアトリエ


場所はこんな所にと思うような18区の外れ。(私も含めて)このカフェのためにだけ、ここまで来る人が多いかもしれません。お隣に特注インテリアを扱うとてもブランシェなお店があり、この2軒だけが別世界のようです。水-日の10 :00-19 :00とオープニング時間が短いので要注意。

Café Lomi   3ter rue Marcadet 18e  http://www.cafelomi.com/

7/17/2013

船首像について


Figure de proue/Musée National de la Marine

先日マチュラン・メウの展覧会のブログ(6月26日)で書ききれなかった海洋博物館について、書き足したいと思います。
この博物館は、余程の船好きか、船だったら子供も興味を示すのではという希望を持つ、教育熱心な家族連れ、学校のグループなどがパラパラいるだけで、ツリーストが押し寄せることもなく、落ち着いた博物館です。私自身、おもしろい特別展がある時についでに見るだけで、真面目にじっくり鑑賞したことがないのですが、そんな見方ではもったいないような展示品があります。特に私が好きなのは、船の舳先に付けられていた船首像のコレクションで、船の実物大模型と一緒に、天井が吹き抜けになった大きな部屋にあります。


今にもピストルを抜いて戦おうとする構えの像 ラ・バイヨネーズ号1846年
写真では大きさが分かりにくいのですが、壁際にある監視員用の椅子は、一番奥なので小さく見えることを考慮しても、比べてみると像の巨大さがわかります。手前はシャルルマーニュ、ル・シャルルマーニュ号1851年、後ろは皆に慕われていたアンリ4世、ル・アンリ・キャトル号1848年
アブラハム・デュケーヌ像 ル・デュケーヌ号1822年

船首像は、船の名前を表す人物や神話の人物が多いのです。嵐や海賊の被害も多く、特に戦闘用の船は沈没覚悟の航海。それだからこそ勇者や海の神様の像を舳先に飾り、航海の無事を祈りたかったのでしょう。見ていると、塩野ななみさんなどの海洋歴史小説(時代は違うけれど)や宝島の場面が蘇ったような気がします。特に誰もいないほの暗い静寂が、よけい想像力を掻き立てます。美術館や博物館は、本来はこうあるべきなのでしょう。

Musée national de la Marine  17 Place du Trocadéro 16e
http://www.musee-marine.fr/

7/15/2013

”お座り下さい!” デンマークのデザイン家具フィン・ユール展

45 Chair, 57Sofa, FJ Bench(ここではテーブルとして使用)

L'exposition Finn Juhl ″Asseyez-vous〝

シャンゼリゼのメゾン・ド・ダネマーク(デンマーク)が、“お座り下さい!”という面白いタイトルで、自国の最も重要なデザイナーの一人、フィン・ユール(19121989)の展覧会をやっています。これはコペンハーゲンのデザイン美術館が去年やった、生誕100周年記念展をパリにもってきたもので、スペースの関係かこじんまりした展示は、内容の濃いものでした。
スカンジナビアのデザインの父と呼ばれるフィン・ユールのデザインは、アグレッシブで突飛なトリックが無く、そのシンプルで流れるようなラインは、人間の体に優しいフォルムを考えて作られています。今ではエルゴノミー流行りですが、それが取りざたされるずっと前に、ごく自然にデザインに取り入れていたのです。当然ながら当時としてはかなりアヴァンギャルドなデザインでした。お座り下さいのタイトルどおり、展示品はどれも実際座ってみることができます。順に試してみて思ったことは、自分がいかに毎日、座り心地の悪い椅子に囲まれて生活しているかということ。それくらい、フィン・ユールの椅子は快適でした。

Pelican Chair ペリカンと名のついた椅子、座り心地満点で、とてもかわいい
Chieftain Chair
46 Chair,  Nyhaven Drawer Cabinet (自分用にデザインしたもの)

FJ Buffet

これらの椅子は現在One Collectionから復刻版が出ていて、フランスではTriode社から販売されているそうです。
マルセル・ブロイヤー(76日)など椅子のお話が続いていますが、それだけ椅子がトレンドで、話題が一杯なのです。

Asseyez-vous  Mobilier et dessins de Finn Juhl   728日まで

Maison du Danemark  142 Av. Des Champs-Elysées 8e  www.maisondudanemark.dk