1/06/2016

女カメラマンなんてこわくない1839-1919


Qui a peur des femmes photographes 1839 à 1919 au Musée de l'Orangerie

お正月のお休みに、オランジェリー美術館の ″女カメラマンなんかこわくないパート1″ 展に行ってきました。これはカメラの発明された初期から第一次大戦までの1839-1919年の女性カメラマンの作品を集めたのもので、第一次から第二次大戦まで1918-1945年のオルセー美術館でのパート2が後に続く2本立ての展覧会です。

まずなぜ女性なのか? 彫刻、絵画などの芸術が、一部例外を除いてずっと男性の専売特許だったのに反して、メカニックなので男っぽい印象を受けるカメラは、実は発明当時、優雅なレディーに相応しい新しい趣味としてイギリスでブームになったのだそうです。ヴィクトリア女王、アレクサンドラ王女が熱心なカメラファンだったのもブームに拍車をかけました。女性のたしなみとして水彩画がイギリスで発展したのと同じ理由で、花、風景、家族や家庭のひとコマを写真に撮り、自分で現像し、美しいアルバムを作ることが流行ったのです。

ごく最初の写真は、サロンに座る家族の写真などクラッシックなものや、手描きの水彩やデッサンに写真をコラージュするなど、ハンカチに美しい刺繍をするのと同じ感覚で、美しいアルバムを作るセンスの良さが競われたようです。このコラージュ、沢山ありませんでしたが、とても美しいので必見。撮影禁止だったのが残念です。ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館所蔵が多いようなので、ぜひ見に行かなければ!
しかし1850-60年頃、彼女たちの中から、色々なテクニックや被写体を演出して、個性的な写真を撮る女性が沢山現れます。上の写真はLady Clementina Hawardenの作品。彼女はヴィクトリアの夫プリンス・アルバート が開いたロンドン写真協会The photographic society of Londonの女性会員に選ばれ、展覧会を開いたり賞をもらったりしています。壁やドレスに映る光と影が素晴らしく(本物は比べ物にならないくらいもっとステキ)、また写真の淵をジグザグに切ったり、手で千切ったりがとても斬新でハッとさせられました。
          
上2点はJulia Margaret Cameronの作品。彼女はぼかしのテクニックと、アレゴリックなコスチュームやポーズで演出し、神話や聖書の場面を思わせる写真を好みました。ヴェージニア・ウルフは何度も被写体になった彼女のお気に入りの姪の娘にあたります。ウルフの写真(上左)はこの展覧会のポスターにも使われ、プロフィールと影が楕円に切られて、カメオのブローチのよう。また展覧会のタイトルも ″ヴァージニアウルフなんてこわくない″ をもじって ″女カメラマンなんてこわくない″ なのです。

演出されたシーンの撮影は、お堅いヴィクトリア時代に、ちょっぴり危ういヌードっぽいシーンを撮る口実にもなったようです。でも完全なヌードはまだほとんどありません。また女性カメラマンは沢山のポートレートをプロ並みに撮り、中には有名人の写真も沢山あるのに、本当のプロとして自分のアトリエを持って仕事をしたのは、展示の中ではフランスのGeneviève Elisabeth Disdériだけで例外。

20世紀に入ると、女性の選挙権を求める運動などが始まり、デモなど記念すべきイベントの撮影には女性カメラマンが活躍し、また第一次世界大戦が始まると、従軍看護婦達が戦線の写真を撮るなど、女性フォトジャーナリズムの幕開けでパート1は終わります。
久しぶりにオランジュリー美術館に行ったので、売店をのぞいてみました。本のコーナーは広くないのに、芸術一般、音楽、映画関係に加えて、展覧会の内容とマッチした女性カメラマンについての本はもとより、女権運動に関する面白そうな本までセレクションされていました。
Qui a peur des femmes photographes 1839-1919 Musée de l'Orangerie  1月24日まで

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