9/12/2019

ライト・モリスの写真小説


Wright Morris, L'essance du visible/ Fondation Henri Cartier-Bresson

ライト・モリス(1910-1998年)はアメリカの作家/写真家。故郷はネブラスカ。生まれてすぐ母親を亡くし、鉄道員の父親の仕事で西部の町々やシカゴを転々とし、彼の作品とアメリカ西部のイメージを切り離すことはできません。20代のころから本格的に写真と物書きを始め、40年頃から小説を出版する一方、46年に写真と文章が一体となった写真小説 The Inhabitants を発表。彼にとって写真は、一瞬のエッセンスをとらえるのであり、小説はその一瞬をことばで表現するもので、写真はテキストに従属してはいず、どちらも独立して存在できる作品なのです。彼の獲得した数々の賞の初めは、42年と46年のグッゲンハイム奨学金の写真部門でした。作家より先に写真家として認められていたようで、2、3冊の写真小説を残しました。

しかし写真が余計だという読者と、逆に写真が気に入った人は全く小説の方を読まないという現象が起こります。    "いったいこれは小説家が写真を撮っているのか、写真家が小説を書いているのか? 両刀使いは疑問視され、どちらかが本物でないと思われれました。私の出版社がそれらの批評を読み、本の売り上げ額をチェックし、そして私に『本職の作家に集中してみないかね』というアドバイスをしました。私は怒り、傷つき、失望しました・・でも写真付きの本の出版はお金がかかり、スクリブナース出版社はもうだいぶ損をしていたのです"
モリスは50年を境に、個人的には撮っていたかもしれないけれど、公にはぴたりと写真を止め、以後は "本物の" 作家として多数の文学賞を獲得しています。
現代だったらきっと写真小説なんて何も問題なかっただろうと思いますが・・・


彼の写真は身近な西部の農場や町角を、まるで無頓着にストレートに捉え、一見無骨にすら見えます。そのころの農民の生活の厳しさが、そのまま写真ににじみ出ているよう・・全部読む時間はなかったのですが、彼の文章から、素朴なアメリカの田舎の、新約聖書とか清教徒のイメージが伺われるような・・・カトリックがベースにあるフランスやイタリアとは、ちょっと違った感じがしたのは気のせいかしら・・・


展覧会は、モンパルナスからマレに移転したアンリ・カルティエブレッソン財団の新しいギャラリーで開催中です。

Wright Morris, L'essence du Visible
Fondation Henri Cartier-Bresson    79 Rue des Archives 3e  9月29日まで

0 件のコメント:

コメントを投稿