9/04/2019

ザハ・ハディッドのアイスベルグ/ 女性建築家No.2

 

Iceberg de Zaha Hadid/ Femmes Architctes No.2

建築文化財博物館 "建築家のファーニチャー展" の女性建築家No.2はザハ・ハディッドです。
この展覧会はいつもと違って、博物館に併設の建築専門の図書館の入り口から、中世の天井画の再現された閲覧室を通って博物館に入るコースになっていました。そのおかげで図書館の一部をちょっぴり覗くことができました。
 
        図書館入り口付近
サン・サヴァン教会(ヴィエンヌ)の壁画を忠実に再現した天井に、ウルトラモダンな閲覧室の椅子、テーブル、ランプ。素晴らしい環境の勉強室。

この閲覧室を通り過ぎると展示が始まり、ここからが本題です。
一番最初の、中世の壁画に覆われたドームのある荘重な展示室に入って、すぐに目に飛び込むのがZaha Hadidの名前。ドームの真下に、まるで玉座のように設置されたサークルの舞台の上に、ザハ・ハディッドの作品が飾られていました。タイトルは氷山アイスバーグ。


入り口から見るとこの形で、こちらが正面なのでしょうか? 私はブログトップに載せた写真のアングルの方が、まるでヴァイキングのドラッカーかヴェニスのゴンドラのように、力強く、また優雅で流動性があって美しいと思うのですが・・・散文的に言うとこれはベンチ又は長椅子、でもまるで彫刻ですね。誰かがゆったりと座るならば、現代のクレオパトラとか・・・
展示品全部の中で、これがダントツに広いスペース、華麗でドラマティックな演出だったのが印象的でした。プライベートな事は全く知らないのですが、亡きハディッド氏の好みや人柄にマッチした演出だったのでは・・?


驚くほどの曲線の美しさ、不可能そうな建築を可能にするパワーは本当にすごと思いますが、私は彼女のファンではありません。沢山の資源を使って、敢えて奇抜な形の建築物を作る事に疑問を持ち、巨大建造物拒否症でもあるからです(これは彼女に限らず、多くの建築家にいえる事)。アイスバーグも、豪華ホテルのロビーやパレス用の椅子ですね。要するに私は貧乏性、好みは数日前女性建築家No.1で書いたリナ・ボ=バルディの椅子の方なのです。

ザハ・ハディッドと言えば東京の新国立競技場。好き嫌いは別として、最初のハディッド案は宇宙船や未知の国の生き物を思わせるスゴイもので、シャープな曲線がとても印象的。高すぎると値切られて出された修正案は、初めのデザインの一番素晴らしい部分が切り取られ、何の美しさも無い似て非なるもの。最初の案は素人目にも、最新のテクノロジーが必要で、いかにもコストが高そうに見えます。それを日本政府が選んだのですよね。世界をあっと言わせる競技場を作れと要求し、お金は出せないとは幼稚。初めから資金優先を表明し、世界に向かってコンペなどしなければよかったのです。なぜならランドマーク的な建造物の世界コンペとは、世界でトップの技術とデザインを募集するためであって、経済的で無難な建物を建てるためではないのですから。
世界でたった一人、女性単独でプリツカー賞を受けた建築家ザハ・ハディッドは,その後惜しくも急逝されてしまいました。そのため幸か不幸か、日本は彼女の驚くべき建築を国内に実現させる機会を永遠に失ってしまいました。

Le Mobilier d'architects 1960-2020    9月30日まで
Cité de L'architecture & du Patrimoine,  1 pl.du Trocadéro 16e

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