10/30/2020
10/25/2020
隈健吾氏のギャラリー/ アンジェのカテドラルの修復
by ministry of curture
Une galeire de Kengo Kuma pour la protection du portail de la cathédrale d'Angers
アンジェのカテドラルの正面を保護するギャラリーの建設に、日本の建築家隈健吾氏が選ばれました。ここまで到達するまでには、千年の長い長いお話があります。
2009年、このカテドラル・サン・モーリスの正面を飾る旧約聖書の彫刻群を、簡単な言葉で言えば≪大掃除≫中に、昔々保存の為に塗られた塗料と、長年積もった排気ガスや埃の下から、ポリクロームの彩色が現われ、文化省や歴史建造物保護機関、美術関係者が騒然となりました。
フランスで教会に入ると、ステンドグラス以外、中は灰色やベージュの石の色一色で、暗く荘重な雰囲気ですね。でもそれは壁や柱に塗られ描かれた絵の具の色が落ちてしまったためで、元は柱が赤、青、緑、金色に塗られ、王や諸侯の紋章や、聖書の場面が壁にポリクロームで描かれていたのです。よく見ると壁や柱に、微かな色の跡を見ることができます。教会内部に残っていたり、美術館で見られる石や木の聖人像やマリアも、色が褪せているとはいえ、かなり極彩色の色付きが沢山ありますね。教会の外側の彩色が残っている例はとても少ないので、皆が色めき立ったのです。
全部で7層の色があり、一番古い層はカテドラル建設の12世紀の層-これは10%くらい、例えば1617年に雷が落ちて壊れ、沢山の彫刻が作りなおされ、色も塗り替えられています・・そんな記録まで残っているのですね。
なぜ外壁の彩色が珍しく残っているかというと、カテドラルの正面に、13世紀に付け足されたギャラリー(僧院の回廊のような)が雨風を防ぎ、1807年まで色を保存していたからなのです。1807年にこのカバーの役目を果たしたギャラリーが壊されました。この時、彫刻を守るために保存塗料がベタベタと塗られ、その下にポリクロームが隠れているとは、2009年の大掃除まで気が付かなかったのです。
by ministry of curture
2009年の発見から10年間、お役所間のすったもんだの末(1000年も前の建物ですもの、10年くらいはたいしたことない?)去年でしたか1年間かけて、残っている色を保存し彫刻の修理を完了。風雨にさらしておけないので、仮のカバーが掛けられ、修理中はアンジェの市民は櫓に上って、彫刻群を目の前に見る事ができました。上写真が現在の仮カバー。
このポリクロームを保存するためには絶対にカバーが必要で、中世と同じものを作り直すには、十分な資料が残っていないとか・・多分コツコツ石を積み重ねる資金、時間,、根気、職人なども足りないのでしょう。美しく現代的なギャラリーを建築するべく、世界の建築家の中から隈研吾氏が選ばれたという次第。
焼け落ちたノートルダムの尖塔を、全く新しい物にしようというマクロン大統領の意見は、ごうごうたる非難で≪昔と全く同じ塔にする≫に落ち着きました。新しい建物ができるたびに、世論とメディアの大批判が起きるフランスです、隈氏も大変ですね!でも多分フランス文化省のチョイスは妥当、彼ならば、アグレッシブな宇宙船のような醜い建物を付けないだろう・・と期待しましょう。
つい2日前のニュースで、まだデザインは発表されていないのか、見つかりませんでした。
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10/14/2020
太陽王のバレー・オペラ≪ル・バレー・ロワイヤル・ドゥ・ラ・ニュイ≫
photos by Théatre des Champs Elysées
Le Ballet royal de la nuit au Théatre des Champs Elysées
ル・バレー・ロワイヤル・ドゥ・ラ・ニュイは、1653年に上演されて以来ずっとお蔵入りしていたものを、2017年にバロックでは定評のあるノルマンディーのカーン劇場と、ヴェルサイユ宮殿のロイヤルオペラ劇場で再現され、大好評で現代に蘇りました。今秋はパリのシャンゼリゼ劇場での公演です。
1653年の Le ballet de la nuit 直訳すると≪夜のバレ―≫は、フロンドの乱の直後、15才の若いルイ14世の地位を確実にするために、宰相マザランが作らせたオペラで、政治的な意味合いがとても大きいイベントだったそうです。現代の私たちにとっては、バレーを政治の手段に使うなんて、なんと優雅な!! まあテレビもツイッターも無かった時代なので、そういう事になるのでしょうね。
ではなぜ夜のバレーかというと、延々3時間以上続く夜/黒がベースのシーンが前座の役割を果たして、最後に太陽に扮したルイが登場し、闇を一掃して踊るシーンを際立たせるためなのです。このプロパガンダは大成功でしたね。それ以後太陽王と言えばルイ、が定着したのですから。因みにルイ14世は子供のころからダンスが好きで、宮廷人達のお世辞を割り引いても、事実上手だったようです。
photos by Théatre des Champs Elysées
音楽はIssac de Bensarade、Antoine de Boësset、Jean de Cambefort、Louis Lambert の4人が担当し、加えてルイジ・ロッシのオルフェオと、フランセスコ・カヴァリの恋するヘラクレス2つのオペラの歌の一部、計45の長短とりまぜたシーンが展開します。初演はプロの歌手、ダンサーに加えて、登場人物は王家のメンバーが演じました。
350年以上隔たりのある現代版は、きっとバラバラになったり欠けていたのでしょう、セバスチャン・ドゥーセが丸4年情熱を注ぎこんでアレンジし直し、彼自身が指揮を担当。また出演者は歌手の外、数人のジャグラーと大勢のアクロバット達がダンサーとして登場しています。ですからダンスはアクロバット・ダンス。
男性がドレスを着るシーンがいくつもありました。高い櫓に乗って歌った "夜" の裾から文楽風の人形が出てきて、不思議な手の動きだけのダンスを、夜と全く同じくダブルで演じます(トップの写真参照)。夜のドレスの上半身は、かみしも(裃)からのインスピレーションに違いない‼ ルイ14世役のキモノ風の衣装など、日本文化の影響があちこちに・・黒子風のトリックで後ろから手を出し、まるで手が4本あるような、手だけのダンス場面も何度かありました。
お互いの肩に乗って垂直に3人立ち、その一番上の人が、あちらからこちらへと飛び移ったり、頂点から落ちるのを下で受け止めたり等々のアクロバットが特に後半激しくなり、高い所の嫌いな私はハラハラして、音楽に集中できず少々不満。実際にミスが1回あり、トップの人が落ちましたが、ミスした場合の訓練もしているのでしょう、仲間の助けもあり、優雅に落ちて優雅なポーズで着地し、舞台は少しも乱れず。しかしなぜオペラにアクロバットまで持ち込み、変わった演出にしなくてはならないのか、演出のエスカレートは限りがなく、私としては少々疑問なのですが・・・そう思ったのは私だけなのか、メディアは全部絶賛していました。確かにバロックの時代、オペラは高尚なものでなく、楽しむ余興だったので、魔女が空を飛んだり、怪物が飛び出したりと奇抜な仕掛けを好んだので、アクロバットもけっして突飛な発想ではないのです。
関連ブログ : 恋するヘラクレス、エルコーレ・アマンテ
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10/09/2020
ハーパースバザー展とアンドレ・ブロックの彫刻建築
L'exposition Harper's Bazaar et le sculpture habitacle d'André Bloc
ブログのタイトルはハーパースバザー展ですが、内容は前回のアンドレ・ブロックの彫刻建築の続きです。
装飾美術館MADのデッサン展に行き、同じ館内、共通チケットなのでついでにハーパースバザー展を覗きました。ハーパースバザー誌は1867年創刊の、世界で最初のファッション雑誌なのですね。その150年の歴史をまとめ、ちょうどMADのファッション/テキスタイル部の建物のリノベーション後のお披露目を兼ねた展覧会です。
60年代風の宇宙的なスチールのファッション・・・なんだか最近見たばかりのような・・・と足を止めたらやっぱり!
ウイリアム・クライン監督の映画、おまえは誰だポリーマグー Qui êtes-vous Polly Maggooに使われたドレスで、ヴィデオ付きの展示です。ついこの間このブログで、アンドレ・ブロックの彫刻ハウスと、それが舞台になった映画を取り上げたばかり。当時この映画がとても話題になり、アンドレ・ブロックの彫刻建築も注目されたそうですが、本当だったのですね。
別々の場所で偶然に遭遇したので、ブログに書いてみました。
リノベーションは、ジャン・ヌーベルが担当したプリント/グラフィック部の内装とマッチするようにでしょうか、真っ白にしてしまわず地肌をそのまま生かした壁、空調かヒーターかのパイプがそのまま見える天井。特にこの螺旋階段のある広いスペースがステキでした。
アンドレ・ブロックの彫刻建築 http://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2020/09/blog-post_29.html
Harper's Bazaar MAD 107 Rue de Rivoili 1e 2021年1月3日まで
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