L'Eglise Notre-Dame du Raincy d'August Perret
フランスは13-19世紀の古い建造物が溢れているので、ツーリストはそれらの歴史遺産の見学に忙しく、近代の物まで見る時間がなかなかありませんが、実は素晴らしい近代建築が色々な場所に隠れているのです。パリの郊外北東約20キロのル・ランシーの聖母教会(1922-23年)もその一つ。オーギュスト・ペレの最高傑作と呼ばれる鉄筋コンクリートの教会です。最近はモダニズムブームでもあるのに、多分パリジャンでも知らない人が多い歴史的建造物。
第1次世界大戦の直後、労働者の町ル・ランシーに新しく就任した神父さんが、マルヌ戦に倒れた兵士を祭る教会を建てようと奔走します。戦争直後の国庫は空っぽで援助は望めず、あちこちの寄進だけが頼みだったそうです。ミニマムの資金をなんとか調達した神父さんは、アルジェリア、オランのカトリック教会の建設に参加して、画期的な技術を披露したばかりのオーギュストとギュスターヴ・ペレ兄弟に建設を依頼しました。恐らく破格に安い費用で建ててもらえるという評判に惹かれて・・事実旧来の教会の1/6(この数字は未確認)とかの金額で、しかも最短期間で完成したのだそうです。
資金不足で買った土地は狭く、丘の傾斜がある事も難問でした。通常あるはずの教会前の広場もロータリーも、ちょっとした庭すらなく普通の建物に囲まれているので、高い鐘楼が無かったら、うっかり見過ごしそう。
さて資金不足で建てられたこの教会の出来上がりはというと・・モオダニズムの教会の傑作と言われるだけある、素晴らしく美しいものになりました。鉄筋コンクリートの技術で、重い屋根やそれを支える太い柱、壁が必要なくなり、教会内は光の洪水です。
かの有名なシテ島のサント・シャペルのステンドグラスと並んで称されるステンドグラスは、、経費を抑えるために円、三角、クロス等の単純なモチーフの、コンクリート型の多数の正方形だけで作られています。窓によって赤、青、緑、オレンジの確か4色のトーンでした。
資金が無かったので下絵だけモーリス・ドニに頼んで作られたマリアの生涯のモチーフ。
以前に私はペレ兄弟がこのル・ランシーの後に創った小さなチャペルのブログを書きました。ずっと小さく超質素で、もっと資金難だったらしいひっそりしたチャペルなのですが、それにあまりに感激していたので、こちらの大きなル・ランシーの方には、実はちょっぴりがっかりしてしまいました。コンクリートの正方形の中にカラフルなモチーフが沢山入り、上記モーリス・ドニ下絵のステンドグラスなども所々はめ込まれ、時間もお金もかけて複雑になった分、クラッシクなステンドグラス風になってしまたような感じ。私はArcueilの小さなチャペルのシンプルさの方が好きでした。もちろん規模が全く違うので、入った時のインパクトも格段にル・ランシーの方が大きいのですが・・
同じ幾何学模様が天井にも
パイプオルガン
Le Raincyはパリ北東にある郊外の町です。パリのMagentaマジャンタ駅(北駅と通路で繋がっています)から郊外行きRERのE線に乗り25-30分。1時間に2本。Le Raincy - Villemomble下車。駅前左手のAv. de la Résistanceレジスタンス大道りの緩い上り坂を、歩いて10-15分の左手にあります。
北駅、マジャンタ駅、そしてE線は、派手な服装や高級品を持たずに、身軽に行きましょう。
L'église Notre-Dame du Raincy 83 Av. de la Résistance, 93340 Le Raincy
P.S. つい最近鐘楼の修復工事が始まったので、当分は櫓に囲まれてしまいました。
オーギュスト・ペレのチャペル
オーギュスト・ペレ・のパレ・ディエナ
オーギュスト・ペレのヴィラ・スーラ
オーギュスト・ペレとフランクリン通り25番地のアパート
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