1/01/2015

ホテルオークラ/ 改装の名を借りた破壊について

Happy New Year
Bonne Année
あけましておめでとうございます

Save the Okura  http://savetheokura.com/

先日日本からの帰り、羽田空港の書店で手にした雑誌カーサ・ブルータスに、日本のモダニズム建築についての記事があり興味を持ち、買ってきました。忙しくてそのまま読まずに机の上に置きっぱなしだったのを、クリスマスの休日に読み始めてびっくり・・ホテルオークラが壊されるのですね! オークラの大ファンだというボッテガ・ベネタのアートディレクター、トーマス・マイヤーが、日本のモダニズム建築の最も美しい遺産であるオークラを救おうと力説し、また全国に残る重要なモダニズム建築をも紹介。建築写真家イワン・バーンの写した美しい写真や、ポール・スミスやマーガレット・ハウエルなど、オークラを愛し東京の常宿としている世界の著名人のコメントも・・


カーサ・ブルータス、美術家杉本博司(S)とTトーマス・マイヤー(T)の談話より抜粋:
S あなたはオークラの常連客なのですね?
T 大ファンなんです。
S ロビーのデザインは傑出していますからね。
T まったく。建築家の友人は皆、日本ではオークラにしか泊まりません。
S そのロビーの改装が発表されたのは2005年のことでした。
T とんでもない話です。
S 憤った私は日本の大手新聞に“オークラを守れ”という記事を書いたのですよ。
T 訳してもらって拝見しました。
S しかし今また改装するという。ニューズウイークの日本版で7月、フランス人の記者がコラムで改装反対を訴え、最後に“そこで今度は私から杉本氏にお願いしたい。いまこそ再び戦うべき時だ”とありました。
T それも読ませて頂きました。同じ思いを抱く人は世界中に沢山いるはずです。
S しかしホテルは決定を下した。デザイン的にさほど面白味のない別館は残して、肝心の本館を撤去するというのです。そうではなく、逆に別館を壊して新しいタワーを建て、本館を残すというやり方もあったはずです。
T 本館を引き立てるような、配慮の行き届いた建て物だって作れたでしょうに。
S 今のオークラは投資家の手に渡っていますから、どうしても利潤追求になる。デザインなど眼中にないのでしょう。これがグローバル資本主義です。
T 日本の人には切実な問題として受けとめてほしいのですが。
S 帝国ホテルも美しいホテルでした。
T フランク・ロイド・ライトの設計ですね。
S それすら壊しましたからね。早い段階で歴史的建造物の指定を受けるべきでした。今また同じことがオークラに起きているというわけです。オークラの創業者大倉喜七朗はかつて帝国ホテルの会長だったんです。そしてフランクLライトの帝国ホテルに匹敵するホテルを、晩年興したのです。その際“平家納経”模本を設計者の谷口吉郎に見せ、その雅を建築で表すよう依頼したそうです。12世紀の絵巻物です。華美過ぎない装飾、色彩の微妙なバランス、構成、そして職人技、この感覚をホテルで再現せよと。和のデザインは狭い空間に向いています。ロビーという広い場所で日本的な趣を出すとことは、なかなかできることではありません。
カーサ・ブルータスのトーマス・マイヤーのインタビューより抜粋:
オークラの魅力は? まずは建物そのもの。本館の外観は圧巻の一言に尽きます。そして内装やロビー。全体の色彩に驚嘆させられますし、テーブルの輝きや丸みを帯びた有機的なフォルム・・・また照明器具が美しいですし、障子を通して自然光が柔らかく差し込む様子も素晴らしい。オークラのロビーの雰囲気は、正に唯一無二といえるでしょう。
歴史的建造物の指定を受けていないと知って、日本の新聞や雑誌からインタヴューを受けるたび、最後に何か一言?との質問には、前後の脈絡もおかまいなしに“オークラのロビーを早く歴史的建造物にして下さい”と訴えていたのです。我々の後には次の世代が続くのだから、何とか残さねばならない。一度失えば、消えてしまいます。
NYのモーガンライブラリーの増築では、古い建物を保存しつつ、新しいガラス張りのビルをそこに足しました。同じ様に新旧のアンサンブルは可能だと思います。

以下はネットで見つけたオークラを惜しむ記事です。
ニューズウイーク日本版(仏人記者による東京ステーションホテルの改装についての痛烈なコメントも。改装後を見ていないのですが、これは本当なのでしょうか?)http://www.newsweekjapan.jp/column/tokyoeye/2014/07/post-866.php
ザ・ニューヨークタイムズ http://www.nytimes.com/2014/08/16/opinion/farewell-to-the-old-okura.html
フィナンシャルタイムズ http://www.ft.com/cms/s/2/27daaa30-f868-11e3-815f-00144feabdc0.html

今世界の先進国の都市では、エコロジーの波と共に古いモノをできる限り守ってゆこうとする運動が活発です。単にマーケッティングの面からだけでも、XX年創業や王室御用達といった伝統を売りとする店やブランドの人気は絶大なのですから、外のホテルが真似できない文化遺産の建築を誇るのは、資本家の利益重視の方針に逆行するどころか、大いに有利なはず。それをなぜ自ら捨て、どこにでもあるようなビルに改装するのでしょうか。建物の安全性?旧設備のリニューアル?拡張?現代のテクノロジーをもってすれば、旧建物をそっくり残したままでも全て解決できることでは? 
私はパリがベースな為、日本の世論やどんな反対運動が現在進行中か等、ネットで調べた範囲でしか実情がわかりません。オークラのファンの外国人は多いといっても数に限りがあり、このような問題はやはり自国の人が大勢動かないと達成できることではないと思います。署名運動Save the Okura http://savetheokura.com/ 

*** 記事はCasa Brutusカーサ・ブルータス2015年1月号“ニッポンが誇る名作モダニズム建築全リスト”より、写真はトーマス・マイヤーのブログhttp://tmagazine.blogs.nytimes.com/2014/12/12/tomas-maier-preserve-bottega-veneta-japanese-modernist-landmarks/?_r=0及びボッテガ・ベネタのサイトhttp://www.bottegaveneta.com/gb/collection/japan-s-modernism-architecture_grd16901より拝借しました、ありがとうございます ***

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